生駒 忍

記事一覧

満員電車内での音楽聴取と『電車でコラ』

きょう、マイナビウーマンに、朝のストレスから開放~! 満員電車で快適に過ごす裏ワザ・4選という記事が出ました。「「満員電車」で、少しでも快適に過ごせる裏ワザ」についての調査結果ですが、量的な集計はなく、4カテゴリにわけて例を示した、質的なものです。

まずは、「空想や瞑想(めいそう)で自分だけの世界に」です。内容によっては、充実したひとときになりそうです。もちろん、「コツをつかまないとそのまま寝てしまいそう」、ここは要注意です。女子の居眠りエピソードの記事で取りあげたような、恥ずかしいできごとにもつながります。

「大好きな音楽で不快感をシャットアウト」、技術的な容易さでは、これが一番でしょう。The Oxford Handbook of Music Psychology(S. Hallam, I. Cross, & M. Thaut編、Oxford University Press)は、40章で、公共交通機関での移動中に音楽を聴くことの、退屈や、他者との距離が近いことによる不安感をごまかす効果について紹介しています。一方で、松本人志の自虐コメントの記事で触れた、勉強ができない子どもに多いというお話とも関連しそうです。

「満員電車でダイエット」、この考え方は合理的でしょうか。それとも、合理化でしょうか。

「熟練のワザ」は、「もはや芸の域」という評価に、私も同感です。ですが、鼻歌作戦は、まわりを不快にさせますので、すすめられません。

ほかにも、さまざまなくふうがあるでしょう。たとえば、電車でコラ(辛酸なめ子著、ブックマン)もおもしろいのですが、満員の車内で使っている人はいますでしょうか。

生活保護ただ乗りへの怒りと紅白での長渕剛

きょう、東洋経済ONLINEに、なぜ「英国独立党」が支持を伸ばしているのかという記事が出ました。週刊東洋経済 12月20日号(東洋経済新報社)に載ったもので、キャメロン首相のスピーチから、イギリスの今後を考えています。

スピーチの主旨は、「英国の有権者は外国人が嫌いなわけではない。怒りの矛先は「ただ乗りする人」に向かっている。」「英国の有権者は、同国で働くポーランド人やリトアニア人には悪感情を抱いていない。快く思っていないのは、生活保護を目当てに渡英する移民だ。」というものだとします。これは、イギリスにかぎったことではないでしょう。ただ乗りへの嫌悪感には、進化心理学的な基盤があります。移民不要論批判の記事で触れたように、となりの国では、日本の生活保護を使わせるねらいの本が売れているそうですので、わが国でも、これからさらに、問題になってくる心配があります。悪質なただ乗りへの反発を排外主義と混同させての、かみ合わない議論がされる間に、取りかえしがつかなくなっているかもしれません。

「多くの人々が生活保護受給者を疎ましく思い、求人の倍率が上がることを恐れている」、ここは矛盾して見えます。求人倍率は、求人数を求職者数で割って求めますので、高いほうが多くの求人があることになり、生活者にとっては有利です。それとも、割り算を逆に考えているのでしょうか。それでも、生活保護のままくらしていける人は、求人倍率には関与しません。むしろ、生活保護をやめさせれば、不当に貯金をつむなどしていないかぎりは、はたらきに出ることになりますので、求人の取りあいになります。

「また、ポーランドやイタリア、フランスからの移住者は、ソマリアやシリア、インドからの移住者よりも、最終的に母国に戻る可能性がかなり高い。」と指摘します。はっきりは書かれていませんが、居すわって生活保護の「ただ乗り」を続けられる害は、EU外からのほうが可能性が高いのに、離脱をふくめたEUでの地位変更の問題を巻きこみかねないということでしょうか。

「停滞するユーロ導入国よりもずっと速い経済成長」はよいことだとしても、福祉と、国際協調とがからむ問題となると、むずかしいところです。和訳の第三の道 効率と公正の新たな同盟(日本経済新聞社)が出てすでに15年、ブレア政権の「第三の道」の評価はさまざまですが、キャメロン政権のとる道は、明るい未来へと続きますでしょうか。

それで思い出したのが、nikkansports.comにきょう出た記事、長渕、紅白で新曲披露「明日へ続く道」です。HOUND DOGのときとは異なり、すでに発売はされているので、NHK側もよしとしたのでしょう。なお、11年前の紅白出場時について、「長渕が提供した「狼たちの遠吠え」を歌った森進一がギターとコーラスでも登場した。」とあるのは、逆です。長渕の歌唱時に森が参加したのではなく、自分が書いた曲を歌う森のバックに長渕が入ったかたちでした。桑田佳祐との、もう30年以上前の因縁がいまでも話題になるように、長渕は主従を気にする人のようですが、まちがいとはいっても、森が格下にされるのであれば、むしろ笑うかもしれません。舌を出して笑うか、くすりとするか、草が生えるほどかは、わかりません。

平凡な顔への信頼性と美女の顔の記憶困難

きょう、バズプラスニュースに、プリンストン大学研究者「平凡な顔は魅力度では劣るが信頼度は高い」という記事が出ました。

「92人の女性の顔を合成して作った「平凡な顔」」と「12人の美女だけの顔を合成して作った「美人顔」」との比較だけの、単純な実験計画のように読めますが、そこまで単純ではありません。後で、「顔の作りが平均に近くなるほど美人顔より信頼度が高くなる傾向があったんだそう」とあって、おかしいと気づけるようにはなっていますが、省略しすぎだと思います。ややこしいところを捨てること、おもしろいところをシンプルに見せることの意義も理解できますが、誤解や混乱をまねくのは困ります。画像も、今回の実験刺激ではないどころか、一般的な平均顔でもなく、おそらくは顔の加齢変化を予測するソフトウェアの出力だと思います。女性の顔写真を使ったことは、文中でわかりますので、無関係な画像だったと気づけるようにはなっていますが、好ましい使い方ではないでしょう。なお、性差の要因をさけるために、実験参加者も女性でそろえた研究です。

「よく「サギ師には平凡な顔が多い」などと言われますが、この話を見ると思わず納得であります。」、おもしろい視点だと思います。いかにもなあやしい顔では、警戒されてだましにくいでしょうから、「サギ師」という肩書きで見られるほどに、悪行で成功していけるには、平凡な外見が役だつのかもしれません。すると、外見以外でも、同じような効果はありそうです。たとえば、名前です。フィクション作品ですが、ある日、アヒルバス(山本幸久作、実業之日本社)では、偽伯爵と命名されていた常連は、逮捕されてみたら、平凡な名前だったとわかったのでした。また、ここに死体を捨てないでください!(東川篤哉作、光文社)では、朱美が、平凡すぎる名前は記憶に残りにくいと指摘し、砂川は志木の、鵜飼と朱美は砂川の、下の名前が出てこないことに気づく展開がありました。

一方で、顔の記憶実験で、平凡な顔がおぼえられにくいことは、そのメカニズムにはなお議論がありますが、確実です。これも、だましては逃げをくり返すには、好都合ともいえます。最近ではたとえば、JEP:G第142巻のThe intrinsic memorability of face photographsが、平凡さも、感じられる責任感も、その顔の記憶されにくさと対応することを示しました。ですが、信頼度については、不明確でした。なお、顔の魅力は、低いほうが忘れられない傾向がある一方で、高いと見ていないのに見たと思われてしまうという結果でした。そういえば、アルゼンチンババア(よしもとばなな作、ロッキングオン)では、父が、ほんとうにきれない女性は、見ても見ても顔をおぼえられないと言っていました。

流行語のトリクルダウンとダッチワイフかくし

きょう、東洋経済ONLINEに、2014年、世相を映す「職場流行語」はこれ! 流行のあの言葉、職場ではネガティブワードという記事が出ました。

「「営業部女子課」メンバー協力のもと、「職場で流行った言葉」を調査し、ランキング」した結果の発表です。ですが、途中で「番外編」がはさまれることをのぞけば、トップ3をならべただけの、簡素なものになっています。

3位は、「アベノミクス」です。「皆さんの職場でも、今年1年で聞くことが多くなったであろう「アベノミクス」という言葉。」とありますが、このことばは、本家のほうでは昨年のトップ10に入っていました。遅れて「職場流行語」となる、トリクルダウン的な展開が、いかにもアベノミクスらしいところです。

2位は、「ありのままで」です。「ありのままの自分でいるということを勘違いして、今までの自分のまま、楽な状態でいようと思うこと、これは間違いですよね。」「そうではなく、「ありのままの自分」とは過去の失敗にとらわれない、「成長していこうと前を向く状態」と、映画では表現されているはずです。」、何も映画のこのような解釈にこだわる必要はないと思いますが、「今までの自分のまま、楽な状態」の正当化に使えるフレーズが、金子みすゞ以上に流行してしまい、しかもよりによって、ありのままではいけない人にばかり好まれているように思われるところが、残念に思われます。「ありのまま」の恋愛心理の記事で触れた、「駄目な俺を受け容れてくれ症候群」とも関連するでしょう。

1位は、「ダメよ~ダメダメ」です。YouTubeにきょう出た動画、【全国の女子に聞いてみた】結婚不適合者だと思う男性の特徴は?の最後も、これでした。「サイバーエージェントが実施した「2014年の女子中高生流行語」調査でも、流行語トップは「ダメよ~ダメダメ」だったようで、世代を問わず浸透していたことがうかがえます。」とありますが、公式発表の「Ameba」が2014年「JCJK流行語ランキング」発表 流行語1位は「ダメよ~ダメダメ」、「かまちょ」「KS」など新しいJCJK語も上位に 流行っていたモノ・コト1位は「壁ドン」によれば、調査を実施したのはサイバーエージェントのウェブサービスであるAmebaということになっています。6位の「KS」の上と下とに大きな落差がある、ジフ構造に見えないことばのデータが得られた調査です。また、あのキャラクターは、「「ダメよ~ダメダメ!」と断る未亡人朱美ちゃん」と表現されて、ダッチワイフとも、ラブドールとも書かれませんでした。「営業女子を応援するためのコミュニティ」、「女性営業職の活躍を拡げることで、結果男女ともに輝きながら働ける社会創造を目指しています。」という立場では、さわりたくないことばだったのでしょうか。あだ名が「日本人形」だった筆者には、かんにさわることばだったのでしょうか。

「来年こそは職場内外を問わず、ポジティブな流行語、たとえば「イイよ~イイ!イイ!」などが使われ、明るく活気のある1年になるように願います。」、たとえは1位よりも品がない印象ですが、明るい流行、明るい新年へのねがいは、同じ思いです。産経ニュースにきょう出た記事、「面白・アホらし話題」はあの“号泣県議会見” 関西プレスクラブ10大ニュース、1位は集団的自衛権の閣議決定で、番外編の「面白・アホらし話題」なのに記事タイトルにされた「元兵庫県議の号泣会見」は、ことしのお茶の間を笑わせた事件でしたが、日本を世界中で笑いものにされ、号泣自体も、常習的な不正のうたがいも、本来は明るい話題ではないはずです。週刊ポスト 12月26日号(小学館)によれば、年内に立件されて、ことしの汚れはことしのうちに、となりそうですが、FRIDAY 1月2日号(講談社)には、「奈良県の宗教法人」が味方についたという説があり、気になるところです。

紅白のイセエビと岩に接着された仏像の頭

きょう、伊勢新聞のウェブサイトに、「紅白」のイセエビ 鳥羽水族館で展示 白いナマコもという記事が出ました。

イセエビのほうは、「体の腹節と呼ばれる部分の中央から右半分が白色になっている。」、これはめずらしいです。左右色ちがいの顔の絵をかく心理の記事で取りあげたように、生き物の左右の色が分かれることは、さまざまな種で、まれに起こることです。ですが、そのうち腹節だけというパターンは、さらにめずらしいと思います。正月を前に、その前には紅白歌合戦もありますが、縁起がよいととりたいところです。左右ぴったり分かれるかたちには、本来はないことなのに、正しさを感じます。そういえば、子どもの発達とテレビ(村野井均著、かもがわ出版)は、戦隊ものの悪役は「左右アンバランスな姿」だと指摘していました。

アンバランスで思い出したのが、奈良新聞のウェブサイトにきょう出た記事、仏頭岩 住民も困惑 - 明日香村稲渕です。「川原の石」という表現もありますが、「川原にあるこけむした大きな岩の頂点に、石仏の頭部がコンクリートで接着されている。」、このおかしなバランスに、頭をひねってしまいます。見たところ、観音菩薩像のような頭ですが、観音経に「十方諸国土 無刹不現身」とはあっても、こんなところに現れては、誰もがおどろくはずです。