生駒 忍

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『探偵の探偵』とループするスーマリの音

きょう、産経ニュースに、『探偵の探偵』松岡圭祐著という記事が出ました。先月に出た探偵の探偵(松岡圭祐作、講談社)の、書評ということになっていますが、単なる紹介だと思ったほうがよいと思います。

「調査会社を経営する須磨が、資金&人材集めのために運営する探偵スクールに入校してきた少女、紗崎玲奈(ささき・れな)。」が、主人公のようです。なお、「玲奈」の漢字まで同じでも、元子役とは無関係だと思います。

「そもそもミステリー小説における「探偵」は万能に近い存在。それを相手にする「探偵の探偵」なのだから頭脳戦は壮絶。」とあります。このメタなつくりは、クロサギ(夏原武原案、小学館)を連想させます。

最後に、「書き下ろしシリーズ第1弾。」とあります。第2弾、探偵の探偵Ⅱ(松岡圭祐作、講談社)は、まもなくの発売です。年明けには、第3弾も予定されています。人気作家だけに、次々と売れることが、容易に想像できます。そして、私の頭の中には、じわじわ来る○○(片岡K著、アスペクト)の146ページの下にある譜面が、ループして聞こえてきます。

Facebookのうそと日展の情報関連作品

きょう、Googirlに、みんなやっているけど……Facebookでの投稿を鵜呑みにしてはいけないこれだけの理由!!という記事が出ました。

タイトルには、「これだけ」とありますが、理由がこれだけたくさんありますというよりは、これだけしかありませんという読み方をしたほうがよいように思います。根本的には、「FBでは自分のための記録というより、誰かに見てもらうために投稿するのが大きな動機となっています。」、ここにつきるようです。What an ARTの記事、Comical Satirical Illustrations Mock Society's Unhealthy Obsession with Facebookにも、そういうパロディがあります。もちろん、自分を必死に大きく見せようとはせず、ありのままの人間性をさらけ出す日記やポエムをつづる人もたくさんいますが、大きく見せようとしていながら等身大のように見えるようにと必死に演じている人も、たくさんいます。より恥ずかしいのは、どちらでしょうか。そういえば、週刊文春 9月25日号(週刊文春)で中村静香は、小池栄子について、「恥じらいを捨てて人間性をさらけ出す演技がすごくて、観ていて気持ちがいいですね。」と評しました。

「本当の人生は毎日そんなにバラ色じゃないし、何をやってもうまくいかない日やイライラして何もできない日が続いたりするものです。でもそんなネガティブな面ばかりを、世界に発信したいと考える人はほとんどいません。」とあります。Facebookは、ときどきの、ポジティブなときに使う使い方を、すすめているようです。Facebook自身がFacebookに投稿した写真、So birthday cake is a lot like Facebook.をご覧ください。

「みんながみんな明るく、楽しく、充実したシーンばかり投稿」、「だから、その投稿内容だけで「○○ちゃんは毎日楽しそうで、羨ましい、それに比べて私の生活なんて……」と思うのはナンセンス。」、りくつはそのとおりですが、Slateの記事、The Anti-Social Network: By helping other people look happy, Facebook is making us sad.にあるように、つい振りまわされて、ネガティブになってしまうものです。GIGAMENの記事、あなたが不健康な7つの理由には、「チリの研究者が、Facebookをチェックしすぎている人間は嫉妬などから体調を崩すとの見解を発表している。」とあり、からだをこわすほどの重い嫉妬にまでつながるのです。子供部屋に入れない親たち 精神障害者の移送現場から(押川剛著、幻冬舎)には、「平凡な人間のほうが実は多数派であり、むしろもてる人間のほうが少数派」、「ところが、心に問題を抱えてしまう人たちは、「みんなそうなんだ」とは考えずに、「自分だけが駄目なんだ」と思い込んでしまうのです。」とあります。Facebookで、この不安をうち消すには、いい年なのに「多少の誇張や小さなウソ」に手をそめるのが、手っとりばやいのでしょう。ですが、その子供部屋に入れない親たちの時代には、Facebookなどなく、ネットで自分をアピールするのは一部のすすんだ若者くらいだったので、よりストレートで、理解しにくい手段がとられていました。「彼らのセックスという言葉は、行為そのものを表しているのではない」、「他人から認められたい、自分の存在を確認したい、そんな願いがセックスという言葉や行為に込められていると思うのです。」「性器の露出に関しても、十代の移送対象者はまったく行いません。むしろ三十代の特徴とも言えます。」「そんな人たちにとって、性器こそが自分自身」、「性器を露出することは、相手に不快感を与えることが目的ではなく、自分の存在に目を向けてほしいからだと考えるのが正しいのではないでしょうか。」と指摘しています。

「写真はたしかに便利ですが、ビジュアル的に誤魔化しやすい部分もあります。今の時代フォトショップで修正するなんて当たり前のこと。」とあります。先ほどのSlateの記事には、「Jordan, who is now a postdoctoral fellow studying social psychology at Dartmouth's Tuck School of Business, suggests we might do well to consider Facebook profiles as something akin to the airbrushed photos on the covers of women's magazine.」とあり、自分自身を写真のように加工してみせる世界で、写真を加工するのは、抵抗のないことなのでしょう。

「それにFBではウソをついていようが、誰も修正してくれる人はいません。」、これは見方によっては、うそでもあります。ほかの人がアカウントを乗っとって、勝手に修正してくれることはまずありませんし、うそをつく人間性を修正してくれる人もなかなかいませんが、虚偽の「いい話」を使って「いい人」アピールに出た人に、それはうそ、うそを使うなとたしなめる人は、たくさんいます。

「直感的に信じられないと思うものは割り引いて考えたり、真に受けたりしないようにするのが一番でしょう。」、リア充アピールにはそれでよいでしょう。ですが、情報への一般的な態度としては、直観的にはよさそうに見えますが、好ましくないところもあります。大阪ガス版の記事で取りあげたモンティ・ホール・ジレンマのように、計算はかんたんにできても、直観にはなお反する問題もあります。また、財務省が、ユダヤ人が、製薬会社がといった陰謀論や、マルチまがい商法の勧誘に、直観は魅力を見いだしがちで、むしろ反論のほうが、直観にはなじみにくいことがあります。

それにしても、今さらな内容で、がっかりした人もいるかもしれません。ライターとしては、「みんなやっているけど」くらいのことかもしれませんが、これは最後に示されているように、MagForWomenの記事、7 Reasons Why You Must Not Believe What Everyone Posts On Facebookによるものです。それ自体が、SNSにはほぼ無視された記事で、内容が今さらなものだったことが、大きいように思います。あるいは、Facebookの話題自体が、もう古いのかもしれません。

それで思い出したのが、きょう行ってきた、改組 新 第1回日展です。あすまでの開催で、もうすいているかと思っていたら、そうでもありませんでした。コンサートの招待券ならよい席をいただけても、こちらはそうはいきませんので、読みをはずした自分の責任です。それでも、よい作品も多く、しあわせなひとときとなりました。今回はこのような、いかにも新しそうな名前になりましたが、日展ですので、古きよき作風に満ちた最新作がそろう、ふしぎな時空でした。やきもの検定テキストの記事で触れた大樋年朗の息子、大樋年雄の「新世器「New Century Vessel」尊崇2014」は、作品自体はすばらしいのですが、名前とそのセンスが、新しいのか古いのかわからず困惑しました。実は戦後に加わった分野で、日展を「新」にさせる問題をつくった第5科は当然としても、第4科も基本的に後衛で、男女の裸像が森のように立ちならぶ間に、順路を決めずにお客を歩かせる展示室は、前衛的なインスタレーションと見ることもできないこともないような状態でした。その中で、表面的に新しい趣向として、杉田春の「Call」は、スマートフォンを彫刻に登場させました。また、情報技術関係では、第3科の河崎晴生の、「information」もあります。冷たいハードの情報処理を、あたたかくソフトな素材に乗せました。情報とは本来、シリコンチップではなく、人間の側のものなのです。ふと、爆笑テストの珍解答500連発!! vol.5(鉄人社)にある、informationの意味を、「きれいなお姉さん」と答えたものを思い出しました。

スパイ容疑とリベラル派の「報道しない自由」

きょう、日本経済新聞のウェブサイトに、ケニアで中国人77人拘束 スパイ活動への関与捜査という記事が出ました。

「ナイロビの高級住宅地で不法に無線通信拠点を設置していた」容疑のようです。電波利用ホームページの不法無線局の特徴は、不法三悪の特徴の2番目に「不法開設者がグループ化するなど手口が悪質化・巧妙化」を挙げていて、わが国でもグループ化は起きていますが、こちらは「男女77人を拘束」、「一戸建ての拠点7カ所」と、ずいぶんな規模です。案の定、「スパイ活動をしていた可能性があるとみて捜査」されているそうです。

さらには、「キャッシュカードのマイクロチップを偽造」、「ネット詐欺」、「マネーロンダリング(資金洗浄)」、「ケニア政府のサイトをハッキング」ということになると、悪の先端技術がそろって、まるで疑惑のデパートです。ケニア関連の、有名な「疑惑の総合商社」発言を思い出しました。一方、発言でお茶の間の話題を集めた「疑惑の人民公社」は、7年後に発言を反省する国会答弁をしましたが、そちらは小さく報道されたのみでしたので、あの疑惑をまるごと信じたままの人も多いと思います。ふと、AUT DISCE AUT DISCEDEにきょう出た記事、報道しない自由を行使するのは世界中のリベラルメディアの特徴らしいを思い出しました。

「11月30日に拠点の一つでネットサーバーが原因とみられる火災があり、発覚した。」そうで、火が火を呼ぶ展開です。先端技術の世界のサイバー犯罪が、文明のあけぼのをもたらした火でこげつくとは、皮肉なものです。本の雑誌 2014年8月号(本の雑誌社)で松岡秀治が書いていた、デジタルにアナログが勝つ勝利感を連想しました。

速水もこみちと日本の弁論大会の不自然さ

きょう、毎日新聞のウェブサイトに、速水もこみち:カフェメニューを初プロデュース「気合入ってます」という記事が出ました。

「「(番組で)料理コーナーを担当していて、自分で食べることはありますが、お客様に食べていただく機会はないので、正直、不安な部分と楽しみな部分があって気合が入っています」とコメントした。」そうです。「魚類心理学」の記事で触れた新海誠のおどろきもそうですが、つくるほうには、受けとるほうの感じ方が意外にわからないともいわれます。YOMIURI ONLINEに、あす付になっていますが、実際にはきょう出た記事、おとなの煙談 第8回 自分の中の「観客の目」をずっと大切に。で、映画監督の中村義洋は、「撮影が終わったら次は編集作業に入るわけですが、全編を通して流すときはできるだけボーッと見るように心がけています。5、6回見ると、そのうち1回ぐらいは観客の目線になれることがある。」と明かしていました。

「速水さんがプロデュースしたのは、クリスマスシーズンに合わせて、チキンをメインに、ライスと野菜を添えた「パリパリチキンのワンプレート〜2種のこだわりソースを添えて〜」(1500円、税込み)。」です。メニューの名前と、地の文とで、添えるものとして示したものが異なります。料理で、添えるという表現をとる場合、どんな状態を指すのが典型的なのかは、考えがわかれるところかもしれません。TrainShop2014年・2015年12・1月号に載ったおせちで、いくらとなますとの位置関係が、写真ではどれも大差ないところを、1ページでは「紅白なます(いくら入)」、5ページでは「なます(イクラ添え)」と書いていました。

「ナレーターらしいもの、感情を入れたものの2パターンの収録を行い、後者が採用されました。」と明かしています。この人が、淡々と枯れたナレーションを入れたら、それはそれで興味を引きます。そういえば、パブリックスピーキング 人を動かすコミュニケーション術(蔭山洋介著、NTT出版)には、「いちいち意識して感情を込める必要があるような話は,そもそもするべきではありません。不自然になるだけです。」「日本の弁論大会が不自然なのは,感情を込めるからです。」とあります。

谷麻衣の名前にこめた意味とぱいぱいでか美

きょう、GirlsNewsに、新・美人すぎるビールの売り子の谷麻衣 初グラビアなので水着は恥ずかしかったという記事が出ました。

「ソフトボールを7年間やっていた」、「ポジションはピッチャーでした。」とあります。「新・美人すぎるビールの売り子」という売り文句は、ピッチャーつながりで、ビールにかけたようにも見えますが、つなげてほしくはないのかもしれません。「ずっとソフトボールをしていましたので、違うことをやりたかった。それで○○ドームでビールの売り子のバイトを始めました。」と、切りはなしています。

「初グラビアなので全部の水着のシーン。」という発言がありますが、どこかの雑誌のグラビアに一部掲載されることはあっても、作品本体は「グラビア」ではありません。Be マイ Baby(嶋公浩監督)というDVDです。露出を撮影させるこういうお仕事を、「グラビア」と呼んでいるようです。

「チャームポイントはEカップの胸。名前の『谷麻衣』は『谷間いい』にかけています。」とのことです。芸名らしくなく、キラキラネームでもなく、ふつうの名前と思わせて、くふうがあるのはおもしろいと思います。好対照なのが、ぱいぱいでか美です。浜田翔子の「水増し」の記事でも触れた有吉反省会に出て、名前が売れましたが、この芸名は、テレビで放送はできても、大きな声では言いにくいですし、笑えません。そういえば、B.L.T.関東版 2015年1月号(東京ニュース通信社)でぱいぱいでか美は、テレビを見て大声で笑うことで、「れでストレス解消になる」と言っていました。

「趣味:野球観戦、料理」「特技:ソフトボール、剛速球、バッティング」とあって、ソフト関連で固めたため、硬派な印象です。その中で、趣味に入っている「料理」が、ギャップを見せる変化球となっています。ですが、ふつうの感覚では、趣味は料理ですというのは、直球のはずなのです。