生駒 忍

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自己防衛から抜けだす方法とサードプレイス論

きょう、ANGIEに、脱・厚化粧!すっぴんに自信を持つための心理学的コツって?という記事が出ました。

「キレイになりたいという気持ちを越えた“厚化粧”は、一種の自己防衛です。悪いところばかり気になり『まぁいっか』と受け入れることができないため、『隠さなければ』と自分をどんどん追い詰めています。」とあります。ここは、失敗を「まあ、いいか」にする心の訓練(海保博之著、小学館)も役に立ちそうでしょうか。

「自分が思っているほど、周りは気にしていないと気づくことも、完璧主義的な考え方を脱するひとつの方法です」、これもよいでしょう。マイナスの気持ちを乗りこえる表現の記事で取りあげた、六角精児の考え方もそうですし、Amazon.co.jpのカスタマーレビューが事故になっている自己暗示術(多湖輝著)の、34のアドバイスも同様です。

「できなかったことができるようになるというシンプルな成長実感を得ることが、自分を好きになる近道です。」とあります。ここはもっと広くとらえて、「できるようになる」だけでなく、「できる」ことでも、よい成長の実感が得られることはあると思いますが、あわせてもよさそうでしょうか。どこが違うのかわからないという人は、たとえば過去形ですが、毎日かあさん10(西原理恵子作、毎日新聞社)の「日々のつぶやき⑨」を考えれば、これは「できた」であって、「できるようになった」とは言いにくいとわかると思います。

サードプレイス論を紹介し、「たとえばスターバックス・コーヒーは、店内をサード・プレイスとして「お客様に自由な空間を提供する」ことをミッションとしています。」と例示します。セカンドウェーブでサードという、ことばのずれが気にはなりますが、R&B馬鹿リリック大行進 〜本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界〜(スモール出版)の266ページでの、高橋芳朗の指摘ほどではありません。

最後は、「ありのままの自分を好きになってあげる時間を」すすめます。「ありのままの私」の恋愛心理の記事で取りあげた口ぐせでもあった、「ありのまま」がいいということです。もちろん、これはこころのことで、「化粧をばっちり完璧にしたい人も、簡単メイクで満足な人も、自分の心にウソがなければ問題ありません。」ともあります。

それで思い出したのが、BLOGOSにきょう出た記事、AO義塾論争は意識高い系以前の問題だ 誠意のある説明をです。「いや、失礼、寒い。」「これは明確に斎木陽平氏に問題があるのではないか。」と、私も思いますが、斎木の考えは、「「わかっていない大人」的にレッテル貼り」で逃げて完璧だというものでしょうか。あの背伸びした数字に、自分のこころにうそが、などと思うことはないのでしょうか。そういえば、発達障害啓発週間なので持ちだすというわけではありませんが、私の心 嘘だらけ(堀川ひとみ)のタイトル曲は、「やっぱり私は背伸びはできない 大人のみなさんごめんなさい」と歌います。

女性にみるカラーバス効果と原因を欲する心理

きょう、マイナビウーマンに、え、また一緒!? 他人の生理がうつったと感じたエピソード3選という記事が出ました。

「病気ではないのでうつるということはないかもしれませんが」とありますが、科学的には、長期的にみた同期は生じます。匂いコミュニケーション(市川眞澄・守屋敬子著、共立出版)などをご覧ください。「実際にはうつったというよりも生理になった人が側にいることで「そろそろ生理になるかも」という精神状態になるために、生理になるのかも」とある、間の心理的変数のところを無視すれば、科学的知見と整合しそうです。

「今回は女性たちに「他人の生理がうつったと感じた経験」について聞いてみました。」というものですので、聞き方が影響したのか、ぴったりの同期ではないものは、自分が先よりも、自分が後になるパターンのほうが、多くみられます。前後どちらも収集して比較ができると、うつること自体ではなく、「うつったと感じた」ことの検討として、さらに興味深いでしょう。ここで、自分が先では、カラーバス効果が入ると言いたい人もいると思いますが、その用語がどこから入ってきたのか、英語のようですが海外の論文が初出なのかも、調べてみてください。やさしくわかる高次脳機能障害(和田義明著、秀和システム)が、「カクテルパーティーとラッキーカラーとゴリラ」というコラムで取りあげた際には、タイトルにある3本の話題のうち、カラーバス効果にだけは、研究者名を登場させませんでした。

こんなものは、誰かから誰かへうつる証拠にはならないと言いたい人も出てきそうですが、あくまでも「うつったと感じた」ことを見るものだと考えましょう。教頭ノート2015(北岡隆行著、小学館)に、「「○○のせいにする」ほうが納得しやすく、気分が楽だから」とあるように、人間は因果なもので、実際以上に因果関係を見たがってしまうものです。80年代しりとりコラム(泉麻人著、ファミマ・ドット・コム)に登場する、松田聖子を批判する聖子カットの女性たちや、こちらはフィクションですが、可愛い世の中(山崎ナオコーラ作、講談社)で遥が、「私はママのお人形さんじゃねえんだ」と出ていって、「秋葉原のメイド喫茶」「よりお人形っぽい服装を選んだ」といった皮肉なパターンにさえ、感じるものがあります。マンガで分かる心療内科♥心から感謝です!のきょうのツイート、【自分は人生で成功している】という人ほどのように、原因など出てこないほうが、むしろ健康でいられるというのも、皮肉なものです。

あるいは、この調査のような漫然と事例をひろったものに、エビデンスとしての価値はほぼないと言いたい人もいるでしょう。心理学検定 一問一答問題集[A領域編](日本心理学諸学会連合心理学検定局編、実務教育出版)での図解では、ケースシリーズは、エビデンスの水準としては下から2番目、単なる専門家の意見よりはさすがにましという程度です。ですので、子どもは「この場所」で襲われる(小宮信夫著、小学館)が、「はじめに」の中で、1地点の前後比較にワンクッションを入れて解釈して、犯罪機会論の予測力の「証明」だとしたことに、無理を感じた人も多いでしょう。一方で、特異な事例が得られて道がひらかれるような研究テーマもあり、そのために強いられた無理もあります。TOCANAにきのう出た記事、電気ショックは当たり前! 本当にあった「10の邪悪な社会実験」5位~1位の1位などがそうで、造膣手術が完了したように書くなど、誤解をまねくところが少なくないので、くわしくはAmazon.co.jpでとても評価の高いブレンダと呼ばれた少年(J. コラピント著、扶桑社)で読んでほしい事件ですが、「1965年~2004年」というとらえ方にこめられた批判は、意識しなければいけません。

夫に毎日ののしられる妻と「心の運動神経」

きょう、恋愛jpに、カレを喜ばせたい! 気が利く女性になれる“心の運動神経”の鍛え方という記事が出ました。

「彼氏から、「おまえは気がきかない」といつも言われます。」というところから、相談がされることになります。この相談者は、DV防止法で対応できる範囲ではなさそうですが、心理学にかかわっていると、広義のDVのにおいを感じます。東京都立精神保健福祉センターのウェブサイトで、よくある相談事例を見ると、4件目に「「夫に毎日『気が利かない、役立たず』とののしられ、生活費も満足にもらえません。」(妻)」があります。一方、心理学の外の世界の表現ですが、一般にはモラハラということばのほうが、想像されやすいかもしれません。

回答は、「でも、大丈夫です!」と、前向きに呼びかけます。回答は敬体ですが、美の懺悔室を思い出しました。そういえば、田辺誠一さんがお答え! ゆるめの人生相談。(主婦の友社)では、桐谷美玲は質問する側で、みーにゃのせりふに、「桐谷さんにも、悩みがあるにゃー?」とあります。

「心理学ではこのように気がきく人のことを“心の運動神経が優れている”と表現します。」、そういう心理学もあるのでしょうか。一般的な心理学の感覚からすると、気がきくのは、体性神経では知覚のほうの個人差のイメージですが、これは運動神経という用語の、通俗的な用法を使った比喩表現のようです。少し検索してみると、たとえばマリアローザのパーティー情報の記事、心の運動神経が、TPOのことや、のばす方法など、同様の観点を述べているのが見つかります。一方で、武士道プロダクション無双館の記事、武活動にも「心の運動神経」が登場しますが、こちらは少々意味が異なるかもしれません。

最後に、参考文献として、本当は怖い心理学BLACK(齊藤勇監修、イースト・プレス)が示されます。「齊藤勇・著」とありますが、監修者です。ちなみに、ピクシブ百科事典でゴーストライターを見ると、現時点では最後の編集で、「仮に本職の作家が作品のすべてを代筆させた場合は、「著作」ではなく「監修」という形になる」と書きたされていました。

戦国時代の姫の美しさと食べログ未載の料亭群

きょう、ウーマンエキサイトに、昔の人は性格良かったの? 歴史上の人物を分析してみた結果という記事が出ました。誤解をまねきそうなタイトルですが、「昔はよかった」病(パオロ・マッツァリーノ著、新潮社)のような主張ではなく、「今回は戦国時代の姫たちから、魅力ある女性像を紹介」するというものです。

「戦国時代といえば、男性中心の戦時代というイメージですが、武将たちに関わる姫たちは、その陰で多くの活躍をしていたといわれています。」とします。「○○戦(の)時代」という表現は、よく見かけますが、「戦時代」とは、あまり言わないように思います。戦国時代から、国盗りにかけて、「国」をとったと考えるところでしょうか。

「私たちも情報に振り回されてしまわないための判断力や、周りの人に信頼されるようなリーダー性、そして周りの人たちと関わってくことができる協調性を磨いて、戦国時代の姫たちのように凛とした美しさを身につけたいもの。」、もっともなことです。もちろん、それができたら苦労しないといえばそれまでですが、「戦国時代の姫は、大切なものを守るために自然と強さを身につけていったのかもしれません。」という筆者の解釈は、「大切なもの」があれば「自然と」できるように強くなる可能性をみちびきます。

それで思い出したのが、Sakura Financial Newsにきょう出た記事、【続報】「強い」事務所を目指した二重橋法律事務所、3人の女性「喜び組」弁護士も解散危機?です。「大塚氏の弁護士資格いかんに問わず、事務所が空中分解しないとしたら、その危機管理力は相当なものだろう。「喜び組」の結束力が、注目される。」、皆さんはどうなると思いますでしょうか。「「喜び組」とのあだ名も」、「三人(女女女)で大塚氏を守り抜けば、これからも無敵では」などといったことは、断定をさけて書いた上に、後注であえて、「以上のコンテンツは、大塚和成氏が、門伝明子弁護士、伊藤菜々子弁護士、江口真理恵弁護士らと性的関係があったことを主張するするものではありません。」とします。弁護士相手では腰が引けてしまう見ぐるしいメディアだと思った人もいるかもしれませんが、同じくSakura Financial Newsにおととい出た記事、【速報】「乱倫な法律事務所」事件の渦中の大塚和成元弁護士、「子供のために、強姦とかレイプとかいう表現だけは削除してくれ」と本誌関係者に涙目に、「本誌に対して、「強姦とかレイプとかいう表現だけは、自分の子供の将来にとって良くないので、勘弁してほしい、削除してほしい」と泣きついているため、総合的に判断して、表現を一部変更」とありますし、性にかかわるお話は、あまり踏みこんだ書き方にしないのがよいものです。

それで思い出したのが、しらべぇにきょう出た記事、飛田新地の料亭はなぜ食べログに載らないのか大阪人に聞いてみたです。何も知らずに、よくわからない書き方だったとだけ思う人はさほど気になりませんが、鯛よし百番だけはと語りたくてしかたがない人が出てきたら、冷たい目を向けてしまいそうです。こういうおとなのことには、おとなしくするのがおとなかもしれません。文徒アーカイブスの記事、「現代の『悪所』、飛田新地を往く」完全版を公開します!のコメント欄の、閑散としていながら異様な空気をご覧ください。

「負けるが勝ち」の意味と「不安スパイラル」

きょう、i無料占いに、ケンカしやす人は早死にの傾向あり!? ストレスを軽減し長生きするための行動心理学という記事が出ました。

ここでいう「行動心理学」は、うその見ぬき方の記事で取りあげたものとは、向きが逆のようです。他人がした行動ではなく、自分がする行動について取りあげます。

「ストレスにさらされないためには、部屋に引きこもるか、山奥で文明から隔離されて過ごすくらいしかありません。」、それで逃げきれるでしょうか。ストレス原因説批判の記事で取りあげたように、どんなものもストレスを起こしうるのです。あるいは、谷麻衣の記事で取りあげたぱいぱいでか美のように、文明の利器でストレスから身を守っていると思われる場合もあります。

筆者のそういう発想は、「人間にとって最大のストレスは「人間関係」にほかなりません。」という立場からくるのかもしれません。人間関係への違和感の記事で取りあげたような感覚の人には、理解しにくいでしょう。

「ある大学の教授が発表した説によると、「人付き合いのうまい人ほど死亡率が下がる」とのこと。」とあります。このあたりのテーマは、友だちの数で寿命はきまる(石川善樹著、マガジンハウス)でも、エビデンスが示されています。「人間関係が苦手な場合でも、ある程度は演技をするなりしていつもニコニコしていれば、ストレスは軽減されるでしょう。」、これもその本で、寿命を延ばすとされた要因です。

「ケンカしやすい人は早死の傾向が!?」、早合点した人はいませんでしょうか。心の進化 人間性の起源をもとめて(松沢哲郎・長谷川寿一編、岩波書店)が示したように、いろいろな意味でレベルの低いところで、けんかで殺し殺されは世界中で日常茶飯事で、ただし日本だけ、若年男性の殺人が激減していくのですが、そういうお話ではありません。「ある大学教授が追跡調査で1,900人を25年にわたって研究したところ、誰とでも張り合おうとする闘争心の強すぎる人は、心臓病にかかる確率も死亡率も通常の5倍に跳ね上がるとのこと。」、タイプA行動パターンだとそうなるだろうと早合点したくなる人もいそうですが、Friedmanの記事で触れた有名な研究でしたら、「ある大学教授」という、単数と思われる表現は適しませんし、あの関連性についても、議論のあるところです。25年の追跡研究でしたら、30年ほど前にJ. Behav. Med.に出た論文、Hostility, coronary heart disease (CHD) incidence, and total mortality: Lack of association in a 25-year follow-up study of 478 physiciansが、タイプAとの関連を疑問視する知見を示しました。一方で、近年ではむしろ、タイプDとの関連の指摘があります。

「ノース大学の実験によると、ギャンブルで大勝ちを体験できるグループと、勝てないグループに分けた場合、大勝ちグループは「自分なら勝てる」と誤った期待を持つようになり、ギャンブルをやめられなくなってしまうことが判明しました。」、大学が実験したような書き方は気になりますが、内容はもっともです。10年近く前のNHKですので、国谷裕子アナウンサーは「いそんしょう」と読んでいたと思いますが、クローズアップ現代No. 2250では、パチンコで40万円をかせいだ日を境にはまり込んでいき、GAにつながった男性が紹介されました。

ですので、「勝負には負けておいたほうが、自分にとってプラスになることも」とされます。負けるが勝ち、勝ち、勝ち!(萩本欽一著、廣済堂出版)の人生観は特徴的ですが、日本にはその、「負けるが勝ち」という表現があります。ですが、その意味をどこまで理解し、共有して使われているかは、わかりません。七つの会議(池井戸潤作、集英社)にある、「この日本で、喧嘩で勝つことは負けることと同義である。」のようなお話でしたら、わかりやすいと思うのですが、どうでしょうか。

「心配性・不安症の人は、「心配・不安」という色眼鏡を介してしか、世界を見られなくなってしまいます。」とあります。全般不安症のようなイメージですが、不安障害ではなく不安症と、新しい表現であるところが、一般向けのこういう記事では、ある意味でうれしいところです。防衛的悲観主義のよさももっと知られてほしい一方で、こういう視点もまた、価値があります。「こういった人は、「これは本当に安全か」と気にしすぎるあまり、余計な情報を仕入れてしまい、真偽の判断がつかないまま情報を鵜呑みにして、さらなる不安を抱える「不安スパイラル」に陥る傾向」、これが手ごわいからです。大人の肉ドリル(松浦達也著、マガジンハウス)も、調べようと思うとかえってノイズが増えて、正しいものにたどり着きにくい問題を指摘しました。ギネスブックに載ったゲーマーによる勝ち続ける意志力(梅原大吾著、小学館)は、確実だとわかってからではいけない、まずは変わる、「もし悪くなったとしたら、それに気づいたときにまた変えればいい。」と、ブリーフセラピーの中心哲学を思わせる発想を示しました。これに対して、CCCの5タブレット、今はゴールドタブレットをとり続けるパティシエの「心配性」だから世界一になれた 先手を打ち続けるトップの習慣(小山進著、祥伝社)は、対照的にも見えますが、不安だからと引っこむのではなく、だからこそ先にうごくことを明かしました。

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