生駒 忍

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「負けるが勝ち」の意味と「不安スパイラル」

きょう、i無料占いに、ケンカしやす人は早死にの傾向あり!? ストレスを軽減し長生きするための行動心理学という記事が出ました。

ここでいう「行動心理学」は、うその見ぬき方の記事で取りあげたものとは、向きが逆のようです。他人がした行動ではなく、自分がする行動について取りあげます。

「ストレスにさらされないためには、部屋に引きこもるか、山奥で文明から隔離されて過ごすくらいしかありません。」、それで逃げきれるでしょうか。ストレス原因説批判の記事で取りあげたように、どんなものもストレスを起こしうるのです。あるいは、谷麻衣の記事で取りあげたぱいぱいでか美のように、文明の利器でストレスから身を守っていると思われる場合もあります。

筆者のそういう発想は、「人間にとって最大のストレスは「人間関係」にほかなりません。」という立場からくるのかもしれません。人間関係への違和感の記事で取りあげたような感覚の人には、理解しにくいでしょう。

「ある大学の教授が発表した説によると、「人付き合いのうまい人ほど死亡率が下がる」とのこと。」とあります。このあたりのテーマは、友だちの数で寿命はきまる(石川善樹著、マガジンハウス)でも、エビデンスが示されています。「人間関係が苦手な場合でも、ある程度は演技をするなりしていつもニコニコしていれば、ストレスは軽減されるでしょう。」、これもその本で、寿命を延ばすとされた要因です。

「ケンカしやすい人は早死の傾向が!?」、早合点した人はいませんでしょうか。心の進化 人間性の起源をもとめて(松沢哲郎・長谷川寿一編、岩波書店)が示したように、いろいろな意味でレベルの低いところで、けんかで殺し殺されは世界中で日常茶飯事で、ただし日本だけ、若年男性の殺人が激減していくのですが、そういうお話ではありません。「ある大学教授が追跡調査で1,900人を25年にわたって研究したところ、誰とでも張り合おうとする闘争心の強すぎる人は、心臓病にかかる確率も死亡率も通常の5倍に跳ね上がるとのこと。」、タイプA行動パターンだとそうなるだろうと早合点したくなる人もいそうですが、Friedmanの記事で触れた有名な研究でしたら、「ある大学教授」という、単数と思われる表現は適しませんし、あの関連性についても、議論のあるところです。25年の追跡研究でしたら、30年ほど前にJ. Behav. Med.に出た論文、Hostility, coronary heart disease (CHD) incidence, and total mortality: Lack of association in a 25-year follow-up study of 478 physiciansが、タイプAとの関連を疑問視する知見を示しました。一方で、近年ではむしろ、タイプDとの関連の指摘があります。

「ノース大学の実験によると、ギャンブルで大勝ちを体験できるグループと、勝てないグループに分けた場合、大勝ちグループは「自分なら勝てる」と誤った期待を持つようになり、ギャンブルをやめられなくなってしまうことが判明しました。」、大学が実験したような書き方は気になりますが、内容はもっともです。10年近く前のNHKですので、国谷裕子アナウンサーは「いそんしょう」と読んでいたと思いますが、クローズアップ現代No. 2250では、パチンコで40万円をかせいだ日を境にはまり込んでいき、GAにつながった男性が紹介されました。

ですので、「勝負には負けておいたほうが、自分にとってプラスになることも」とされます。負けるが勝ち、勝ち、勝ち!(萩本欽一著、廣済堂出版)の人生観は特徴的ですが、日本にはその、「負けるが勝ち」という表現があります。ですが、その意味をどこまで理解し、共有して使われているかは、わかりません。七つの会議(池井戸潤作、集英社)にある、「この日本で、喧嘩で勝つことは負けることと同義である。」のようなお話でしたら、わかりやすいと思うのですが、どうでしょうか。

「心配性・不安症の人は、「心配・不安」という色眼鏡を介してしか、世界を見られなくなってしまいます。」とあります。全般不安症のようなイメージですが、不安障害ではなく不安症と、新しい表現であるところが、一般向けのこういう記事では、ある意味でうれしいところです。防衛的悲観主義のよさももっと知られてほしい一方で、こういう視点もまた、価値があります。「こういった人は、「これは本当に安全か」と気にしすぎるあまり、余計な情報を仕入れてしまい、真偽の判断がつかないまま情報を鵜呑みにして、さらなる不安を抱える「不安スパイラル」に陥る傾向」、これが手ごわいからです。大人の肉ドリル(松浦達也著、マガジンハウス)も、調べようと思うとかえってノイズが増えて、正しいものにたどり着きにくい問題を指摘しました。ギネスブックに載ったゲーマーによる勝ち続ける意志力(梅原大吾著、小学館)は、確実だとわかってからではいけない、まずは変わる、「もし悪くなったとしたら、それに気づいたときにまた変えればいい。」と、ブリーフセラピーの中心哲学を思わせる発想を示しました。これに対して、CCCの5タブレット、今はゴールドタブレットをとり続けるパティシエの「心配性」だから世界一になれた 先手を打ち続けるトップの習慣(小山進著、祥伝社)は、対照的にも見えますが、不安だからと引っこむのではなく、だからこそ先にうごくことを明かしました。