生駒 忍

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児童家庭支援センター新設と児童買春の読み

きょう、下野新聞SOONに、児童の虐待防止、栃木県が支援対策 新年度に「児童家庭支援センター」設置へという記事が出ました。

「県は3日までに、虐待を受ける恐れのある子どもらに専門的な立場から相談支援を行う「児童家庭支援センター」を、新年度に県内の児童福祉施設に設置する方向で検討に入った。」と書き出されます。県の役人が、三が日にこういうお仕事をしていることは考えにくいので、昨年にもう固まった方向だと思います。それでも、「3日までに」という表現ですので、まちがいではありません。年始に連休をとれるよう、書きためておいたのでしょう。いそいで書いたのか、センターの説明は、ややあやしげです。

「児童虐待に関する相談件数が増加する中、児童相談所(児相)や市町と連携して対応する機関として必要性が指摘されてきた。」とあります。栃木県における相談件数の動向や傾向は、県のサイトの児童虐待相談件数をご覧ください。「市町」とあるのは、9年前の栗山村廃止を最後に、栃木県には村がなくなったためです。

「センターは13年10月1日現在、36道府県に98カ所ある。」とあり、やや古い日付なのが気になりました。ですが、現状を確認しようと、全国児童家庭支援センター協議会のウェブサイトを見たところ、全国の児童家庭支援センターには「全国86か所」とあり、そこをクリックすると見られる全国児童家庭支援センターリンクに掲載されているのは、89か所でした。

「本県は「児相の機能強化を優先してきた」(こども政策課)との経緯もあり、未設置だった。」、賛否はあると思いますが、予算は有限ですし、このやり方も理解できます。標準社会福祉用語事典[第2版](秀和システム)の「児童家庭支援センター」の項目を見ると、「児童相談所が継続的に相談・指導を行うことが困難な地域を中心に、比較的軽微な児童問題について、児童・家庭などからの相談に応じ、必要なきめ細かい支援を行おうとするもの」とあります。ちなみに、この事典は、その前の2項目において、法律上の児童買春に、「じどうかいしゅん」というふりがなをふっています。

いちごイヤーの新年とスカイベリーの登録時期

きょう、東洋経済ONLINEに、スイーツ業界が「いちご」に熱狂する理由という記事が出ました。

「語呂合わせのようだが、「15=いちご」。2015年は100年に一度の「いちごイヤー」なのだ。」、ようだも何も、ふつうにごろ合わせだと思います。「今だけ」商法の記事で取りあげた東京駅記念Suica騒動で、100周年記念は100年に1回だからと興奮していた人は、さらに100年後が100周年ではなく、200周年になることが理解できていなかったようですが、こちらは100年に1回という理解でよいでしょう。20世紀少年 9(浦沢直樹作、小学館)に登場する「しんよげんの書」のように、西暦が2015年で終わるとしても、今回の「いちごイヤー」はおとずれます。

飲食店側の例として、資生堂パーラーのサロン・ド・カフェの「2015 こだわりの“苺”フェア」が紹介されます。フェア自体については、macaroniの記事、資生堂パーラーでこだわりの苺フェア開催!苺パフェが美味しそう?のほうが参考になります。

生産者側の例として、安来市での企画を紹介した上で、「そもそも100年に一度の「いちごイヤー」とはいえ、今年だけ収穫量を増加させることは可能なのであろうか?」と問いかけます。ですが、明確な答えは示されません。すぐ、日本一のいちご産地、栃木県の話題となり、数値がならびます。「年」と「年産」との使いわけも適切です。「栃木県のいちご収穫量は平成17(2005)年をピークに一転、減少に」、「作付面積に至っては、昭和50年から右肩下がり」という指摘は、両者の間の1文がうまくつなげにくいことはともかくとしても、「今年だけ収穫量を増加させること」はむずかしいだろうという雰囲気を出します。

「もっとも昨年は日本で唯一、イチゴ専門の公設研究機関である「栃木県農業試験場いちご研究所」で「とちおとめ」の後継である「スカイベリー」も開発され、期待が高まる。」、これは日本語としてだけでなく、内容も適切ではありません。とちおとめが女峰に取ってかわったように、スカイベリーがとちおとめの後をつぐとは考えにくく、むしろあまおうのシェアを取るねらいの新品種だと思います。また、開発が昨年というのも、事実に反します。日経電子版の記事、打倒あまおう イチゴ王国・栃木、17年ぶり大型新人 新品種「スカイベリー」によれば、2012年にはすでに販売されています。そして、栃木県のウェブサイトの文書、「スカイベリー」誕生物語によれば、品種登録、商標登録とも2011年です。ですが、私が確認できた範囲では、2011年にそれらしい商標登録は見あたらず、商標のほうは、おそらく1年後のはずです。栃木県が、2012年に2件、2014年に1件、「スカイベリー」で商標登録を出願し、登録したことは確認できています。いずれにしても、まもなく新年、2015年をむかえるにふさわしい記事だったところを、最後に正しくないことを書いてしまったようです。ふと、アナと雪の女王 年賀状2015(エムディエヌコーポレーション)に、「年賀状の作成で、最も失敗が多いのが印刷です。」とあるのを思い出しました。

教員夫婦の公然わいせつと恋愛の「蛙化現象」

きょう、日刊大衆WEB版に、2014年「わいせつ事件」注目度ランキングTOP10という記事が出ました。このサイトに「2014年12月までに掲載された記事から、特に注目度の高かった事件を編集部でピックアップ」したものです。

10位は、「現役教師夫婦が過激な露出行為!?」です。「容疑者妻は、8月31日午後5時ごろ、県内の公園で遊んでいた子ども2人に対し、いきなりワンピースの前をはだけて乳房や性器などを見せたという。驚く子供と恍惚の表情の妻を、夫の高校教諭は遠方からビデオカメラで撮影していた。」とあります。ですが、FRIDAY Dynamite 1月12日増刊号(講談社)で見ると、やや異なる印象です。もくじで「集まれ! 世界のヘンタイさん 2014下半期編」、記事本体では「美人精神科医がブッタ斬り 集まれ! 世界のヘンタイさん 2014下半期」というタイトルとなったところに、「キレイなハダカだろ? コレ、俺の嫁なんだぜ」として紹介されました。場所は宮崎市内、見せられたのは中学生で、「男は女の胸をもみしだき、おもむろにカバンからビデオカメラを取り出した。すると女はワンピースをまくり、なんと胸と股間を見せつけてきたではないか!」、表情も「女はずっと無表情だった」とされました。なお、TOP10のうち、このFRIDAY Dynamiteの「2014下半期編」に収録された事件は、これだけでした。

一気に飛ばして、1位は、「女子大生のアレに無理矢理入れた米国人御用」です。「男は8月10日午後10時ごろ、高野川の河川敷で、女子大生(19)に「You are cute!」と話しかけ、いきなり抱きついた。また男は女子大生に携帯電話の番号を聞き、断わられると、女子学生のスマホに自分の携帯電話番号を勝手に登録するという行為に出たという。」とあります。こちらも、産経ニュースに出た記事、「You are cute」女子大生に抱きつき 許せん!46歳変態ガイジン逮捕と見くらべると、印象が異なります。産経のほうは、携帯番号の無断登録をしてから抱きつきという順であったことを明示しています。もちろん、順番にかかわらず、常軌を逸した犯罪であることには変わりありません。

順番で思い出したのが、Jタウン研究所にきょう出た記事、愛知VS大阪、頂上決戦の行方は...? 「運転マナーが悪いと思う都道府県」【3位~1位】です。「「修羅の国」としてすっかり名高くなってしまった福岡県が、ワースト3の一番手に名を連ねた。」とあり、福岡市職員の飲酒運転続発の記事で触れた「福岡人」のような過剰反応があるか気になりましたが、順番はここであっても、下の2府県との間には大きな開きがあります。「3位・福岡に実にトリプルスコア以上の大差をつけたのが、愛知県だった。」「3位以下を大きく引き離し、大阪と愛知が激しい「デッドヒート」を繰り広げた今回の投票だったが(2府県への投票が全体の4割以上)、大阪は北は秋田県から南は宮崎県まで幅広い地域で最多得票を確保、さらに岡山県を除く関西・中国地方の全府県で大阪への投票が1位となるなど、圧倒的な強さを見せつけた。」という、2強の激戦だったようです。

激戦で思い出したのが、しらべぇにきょう出た記事、【謎の現象】あれほど観たかったのになぜ? 42.3%が録画した番組を「観る気がしない」です。「大晦日の夜は、すべてのテレビ局が「1年の集大成」とも言える番組を贅沢にもそろえてくる、1年で最大の激戦区です。」という話題から書き出されます。そして、「リアルタイムで観る番組以外は、録画する」ことから、「Q. テレビ番組で、観たいと思っていたのに、録画した途端観たくなくなったことがありますか?」というウェブ調査の報告が行われます。「ある」が42.3%、「半数近い人が「あの現象」を経験したことがあると回答しました。」という結果でした。「この「手に入れた瞬間に、内容への興味が薄まる」現象、ゲームでは「積みゲー」、本では「積ん読」と呼ばれたりもしますが、調べたところ、テレビ番組まわりでは無いようなので、筆者は「No Look Rec」と呼ぶことを提案します。」、さすがにこの名前では、定着しにくいでしょう。記事で3回使われた「あの現象」が、「例のプール」や「あれの日」のようになる可能性のほうが、まだありそうです。

この「あの現象」はほかに、音楽CDでも見られます。クラシック音楽のファンの一部は、「ミチョランマ」と表現します。未聴のままのCDの山が、チョモランマのように高くそびえるイメージからの造語です。私がこの表現を初めて見たのは、Deutsche Harmonia Mundi 50th Anniversary Boxに関してでした。あのころから、数十枚規模で、もちろん格安で、しかも単なる有名曲集ではなく、わかる人にうれしいアイテムも盛りこんだボックスものが、主要レーベルから続々と出るようになりました。この活発な造山活動が、各地にミチョランマを形成したのでした。

また、似た心理学的現象として、「蛙化現象」があります。恋愛において、相手からの好意がわかると、成就のしあわせではなく、気持ちがさめてしまう方向へ行ってしまうというものです。実証研究としては、10年前の日本心理学会大会で発表された、女子が恋愛過程で遭遇する蛙化現象があります。名前の由来は、Yahoo!知恵袋の質問記事、「蛙化現象」と呼ぶ由来は? 好意を伝えられる…に書きこまれた、命名者からのメッセージでお読みください。

名前で思い出したのが、産経ニュースにきょう出た記事、関大キャンパスに侵入 中核派系全学連副委員長を逮捕です。「京都大生の男(23)=住所不詳=」と、名前をふせての報道のように見えて、3段落目には、はっきり登場します。

読売テレビの視聴率3冠とNHK紅白の定年制

きょう、nikkansports.comに、ミヤネ屋など好調 読売テレビが3冠という記事が出ました。

「2014年の年間視聴率3冠」達成、おめでとうございます。ですが、「全日(午前6時~深夜0時)で前年比4ポイント増の8・2%、ゴールデン(午後7時~同10時)で同4ポイント増の12・6%、プライム(午後7時~同11時)で同5ポイント増の12・7%を記録。」とあり、異常な大躍進に見えて、腰を抜かしそうになりました。前年からの増分は、正しくはいずれも、この10分の1です。それでも、きびしい競争の中、トップを達成したことは事実です。

トップで思い出したのが、同じくnikkansports.comにきょう出た記事、森進一「50回定年制」訴える/紅白リハです。「最多47回出場の森進一(67)は「50回定年制」を訴えた。」とあり、トップだからこその発言です。しかも、北島三郎とは異なり、連続出場での47回なのです。「みんなが50回で」の提案は、回数が重なった歌手をNHK側が落としにくくなり、定年制なのにかえって世代交代をさまたげる弊害もありそうですが、浜崎あゆみも、15回の連続出場で、2年前からは昔の代表曲で出られる人になったかと思ったら、ことしは「NHKホール卒業させて頂きます!」となりましたし、それほど長い間紅白に出ていける歌手は、もう育たないでしょう。可能性があるのは、氷川きよしです。氷川の書類送検の記事で取りあげたような不祥事があっても、ことしも出ることになったほどです。そうはいっても、今ごろになって紅白の常連になりそうな美輪明宏の例もありますが、演歌というジャンルが続いているかもわかりませんし、人口の4割が高齢者となる中でも、年寄りは引っこめと言われているかもしれません。ふと、サンデー毎日 10月5日号(毎日新聞社)に登場した、東大阪セブンイレブン乗用車突入事故に関して、「なぜ、79歳にもなって運転しているのか。」と怒り心頭の、64歳女性を思い出しました。

コーヒーが合わない人と多数派の「両向型」

きょう、バズプラスニュースに、内向的な人がコーヒーには向いていない理由という記事が出ました。性格とコーヒーの選択の記事で取りあげたものとは別の次元の観点で、コーヒーが合わない性格について取りあげたものです。

タイトルの書き方が、向きが奇妙にも感じられます。私でしたら、「内向的な人にはコーヒーが向いていない理由」と書きたいところです。

本文は、「最新のパーソナリティ心理学書『Me, Myself, and Us』によれば、内向的な人間にはコーヒーは向いていないかもしんないらしい。」と書き出されます。こちらは、書き方の向きは問題ないのですが、方言や、「パーソナリティ心理学書」という表現が気になりました。Me, Myself, and Us: The Science of Personality and the Art of Well-Being(B.R. Little著、PublicAffairs)がパーソナリティ心理学に関する本ではないというわけではありませんし、パーソナリティ心理学、パーソナリティ心理学者という表現はありますが、「パーソナリティ心理学書」には違和感があります。もちろん、10月に出たAuiobook版のほうであれば、「書」ではありません。

その「心理学書」からの引用が2か所ありますが、第2章からの、直訳ではなく意訳、抄訳と見るべき内容ですし、イタリックで強調した場合もあるquantitativeは、誤訳されたようです。「激しい会議」とあるのは、「a rapid-fire discussion」のイメージを出した表現だと思います。

「この説のネタ元は1987年の研究(1)でして、なんでも外向型と内向型は大脳新皮質の構造が違っており、そのせいで外からの刺激に対するん反応も変わってしまうらしい。」、いろいろなレベルで落ちつかない一文です。2章ではこのコーヒーのお話のすぐ後に、MBTI的に外向-内向が分かれるのではなく、実際には中間の人が多いことが書かれますが、中間の人の「大脳新皮質の構造」は、どのようでしょうか。经济观察网にきょう出た記事、“飞机”上的环境心理学に取りあげられた「扶手神器」のようですが、つながっている現実を、人為的にぴったり切りわけることには、よしあしがあります。なお、多数派である中間は、ambivertと呼ばれ、「両向型」と訳されることが多いのですが、ESSRのように、向きが別々の異なるものの両方がある意味あいとは異なりますので、誤解をまねくようにも思います。同じ軸の中ほどを取る意味では、中間型と理解するのが無難ですが、原語の語感は落ちます。造語で、たとえば「中向型」のようにするのも一案ですが、「内」向型とまぎらわしいのが難点です。そもそも、中ほどが多い分布を3群に切りわけるのは、回帰効果の点で好ましくないという見方もあるでしょう。Amazon.co.jpでとても評価の高い、リスク 下 神々への反逆(P. バーンスタイン著、日本経済新聞社)でいう、「ゴールトンの平均への回帰が意味をなさない、ごつごつした世界である。」という理解は、できますでしょうか。

さて、「同書によれば、コーヒーのほかにも、騒音やストレスの多い環境も、内向型の人間には悪影響とのこと。」、騒音もストレスも、一般にはよいものではありませんし、そもそも騒音とは、デジタル大辞泉を引くと、「騒がしく、不快感を起こさせる音。また、ある目的に対して障害になる音。」です。内向型のほうが、悪影響が大きいということでしょう。ストレス社会といわれる現代は、内向型には不利な環境だと考えられます。一方で、内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力(S. ケイン著、講談社)は、外向型が志向される今日のアメリカでさえ、内向型にもきちんと価値があると論じます。内向型の皆さん、前を向いていきましょう。