生駒 忍

記事一覧

日本的なジューシィメイクと専業主婦願望

きょう、サイゾーウーマンに、「ジューシィメイク」「ロースキンメイク」トレンドの“顔”が映し出す、女の願望と社会という記事が出ました。「では、2015年現在のトレンドメイクからは、どのような社会背景が読み取れるだろうか。メイクに隠された女性の願望、心理はどのようなものだろうか。」といった点に関するインタビューです。

ジューシィメイクについて、「中央にチークが入ると赤ちゃんの顔のように平面的になり、幼く」、「いわゆる欧米ふうのセクシーさではなく」、「その裏には「そう見えた方が得だ」という現代女性の意識があるのだと私は思っています。」とあります。「社会が求めている役割を表現していたら、こうした甘いメイクにはなりません。」「完全に日本オリジナルのカワイイカルチャーです。若く見られた方がチヤホヤされるというのは、いかにも日本的。」ともされます。このような、社会の中で子ども、若者のすがたであり続けようとすることには、世間からは心理学の出番が求められますが、よく目だってきたのはむしろ、精神医学に足場をおく人による解読です。モラトリアム人間の時代(小此木啓吾著、中央公論新社)も、「甘え」の構造(土井健郎著、弘文堂)も、今なお読みつがれています。新しいところでは、まもなく流通する、子どものまま中年化する若者たち 根拠なき万能感とあきらめの心理(鍋田恭孝著、幻冬舎)が興味深そうです。

「今は「女性活用」が叫ばれています」、「そんな時代の流れに30代後半~40代の女性が疲弊しているのを見て、20~30代は逆に専業主婦願望を強めているという話も聞きます。」とあります。ソニー生命保険が4か月前に公表した、女性の活躍に関する調査 2015の図5で、「専業主婦願望を強めているという話」のとおりの世代差は確認できます。専業主婦になりたい女たち(白河桃子著、ポプラ社)とも対応します。

「ロースキン派は、ファンデーションを塗らないことをよしとしているんですが、実際のところは、その手前の肌色補正効果のある日焼け止めなどを塗っていることが多いですね。」「その裏には「素肌がきれい=ていねいな生活をしている」と見られたいという心理があると分析できます。」とあります。ふと、見て見ぬふりをする社会(M. ヘファーナン著、河出書房新社)にある、イギリスの日焼けサロンの、裕福なくらしに見せるために焼くお話を思い出しました。

「いろんな提案や情報があふれ、受け手の情報整理の成熟度も上がっています。その中で、自分の価値観に合ったものを見つけたら飛びつく、という状況になっています。」とあります。おととい書いた記事で取りあげた、「「二極化」の現象」とも関連しそうです。

「「みんなと同じメイクじゃないと変」と感じる人は少なくなりました。」、自分の頭で考えたくない大学生の記事で取りあげたような、出るくいの不利が少なくなってきているのなら、よいことです。一方で、ハナクロにきょう出た記事、自信がないナルシストに騙されないで!ファッションでわかる男の心理には、「それなのに、情報に流されて、シーズンごとに洋服の系統が変わるような男性は、「周りと同じでいたい」「取り残されたくない」という気持ちが強いタイプ。」とありました。

深夜のチョコレートとごはんで太らない理由

きょう、マイナビウーマンに、わかっちゃいるけどやめられない! 深夜に食べると「罪悪感を感じる食べ物」4つという記事が出ました。

筆頭は、「はじめは「ちょっとだけ食べよう」と思っていたのに、1回食べはじめると止まらなくなってしまうチョコレート。」です。かぎかっこの中は、私なら、「ちょこっとだけ」「これくらいなら」「レートを考えて」などと書きたくなって、甘い考えを止められたか自信がありません。また、「止まらなくなってしまう」ものは、はじめから避けるのが確実です。ふと、甘いお菓子は食べません(田中兆子作、新潮社)を思い出しました。もちろん、あの主人公たちはだれも、甘いものを食べない、少なくとも食べるシーンがないのですが、この調査の対象、「22歳~34歳の働く女性」とは世代がはなれますし、アルコール依存がひとりいました。

「翌朝、鏡を見るのと体重計に乗るのが怖い!」、「止まらなくなってしまう」とはいっても、体重がうごくほどの目方を食べるのでしょうか。摂食障害の定義の記事で取りあげた過食症のレベルでなければ、そこまで心配しなくてもと思います。月刊TVnavi 首都圏版 2014年1月号(日本工業新聞社)で中村静香は、体型維持は足し算引き算だとしましたし、「いつものパン」があなたを殺す(D. パールマター・K. ロバーグ著、三笠書房)でいう「九〇/一〇のルール」の感覚で、長期的にバランスがとれればよいでしょう。

「炭水化物は、体を動かすために必要なエネルギー源ですが、夜遅い時間帯に食べると、エネルギーとしえ消費されずそのまま体に吸収されてしまい、脂肪となってしまいます。」、すべてがそうなるわけではありませんが、その傾向は高まります。夜中にチョコレートを食べる女性たち(幕内秀夫著、講談社)は、「ご飯を食べても太らない」としながらも、そう思われにくいのは「夕飯の時間が遅くなっているから」だと説明します。

「アイス。お酒のあとや夜食のあとに食べてしまう」、悪にさらに悪を重ねる愚です。こちらも、一日の締めくくりではなく、早い時間に回せるとましでしょう。つめたくてあまいお菓子(黒川愉子著、文化出版局)に、「いつでも「あのアイスクリームが私の帰りを待っている」、それだけで、ちょっと楽しい気分で一日が過ごせるのでは?」とあるのを思い出しました。教育関係者のようですが、わかっていても、早くは帰れないのでしょうか。

それで思い出したのが、同じくマイナビウーマンにきょう出た記事、子どもの作り方は教えないって意味ない! 学生時代、性教育を受けた人はどのくらい?です。「Q.学生時代、学校で性教育を受けましたか?」に対して、「「いいえ」……17.6%」とはずいぶんと高く、そのタイミングは欠席か早退で帰ったのか、教育を受けても早くに忘れたのか、そういったこともあるのでしょう。こちらも「22歳~34歳の働く女性」ですので、性教育元年より先に義務教育を終えていたはずはないのです。また、性教育があっても、「肝心の知りたいこと(どうやって子供を作るか)」「行為」「仕方」を教われなかったことを、よく思っていないようです。そういえば、夜中にチョコレートを食べる女性たちでは、筆者は「小中学校の授業で性教育はなかったはずだ。」とし、あの歳ですのでそれはそうかもしれませんが、「考えてみればたいていの大人は、だれもきちんとセックスを学習していないのである。」として、性教育のうすさを批判しました。

テレビドラマのわくの減少と「愚民化装置」

きょう、スポニチアネックスに、ドラマは二極化へ?夏は各局苦戦の様相 深みないと視聴者そっぽという記事が出ました。

「フジテレビ「恋仲」(月曜後9・00)は同局の看板ドラマ枠“月9”史上初の1桁発進(9・8%)となった。」そうです。フジテレビのドラマの苦戦の記事で取りあげた予測のとおり、あるいはそれをさらに突きぬけるほどに、あのわくとは思えない、あわれな数字です。

「テレビ離れや視聴スタイルの変化が叫ばれて久しく、ドラマ枠が減少。」「ドラマ枠は今年4月クールからTBSの月曜8時枠、フジテレビの火曜9時枠が消滅。」とあります。ただし、ドラマのわくが減るのは、いまに始まったことではありません。20世紀末の本、テレビドラマのメッセージ 社会心理学的分析(岩男壽美子著、勁草書房)にも、「番組数、トータルの放送時間ともに減少傾向」であったことが指摘されています。

「ドラマ制作の舵取りが難しく中、ある民放関係者は視聴される作品と、されない作品の差が大きくなりつつある「二極化」の現象を指摘する。」として、「ある種、二極化が進んでいるような気がします」という声を紹介します。ここ数年、ドラマの視聴率というと、今回のようなさえない話題が多い中で、家政婦のミタ半沢直樹の、異常なほどの数字もあったのです。

同じ関係者による、「インターネットとは違い、積極視聴ではないといわれるテレビに、不特定多数の人をどう呼び込むか。」という問題提起があります。ドラマにかぎっては「積極視聴ではない」はずはないと考える人もいるかもしれませんが、テレビに観音びらきのとびらがついていた時代ではありませんし、いまの若者むけのドラマだったら中身がないから、などと早合点するのもよくありません。Amazon.co.jpでとても評価の高い、文は一行目から書かなくていい 検索、コピペ時代の文章術(藤原智美著、プレジデント社)によれば、橋田壽賀子脚本のあの長ぜりふが、集中しては見ていない視聴者層に適していたのです。もちろん、テレビ全体が、積極視聴から相対的に遠ざかっていることは明らかです。週刊アスキー 7月29日号(KADOKAWA)で、4スクリーン時代の最強の「愚民化装置」がテレビとされたのは、まさにここでした。

お笑いの単純接触効果と個性偏重への疲れ

きょう、マイナビティーンズに、ティーンはなぜお笑い芸人のギャグ・ネタをマネしたくなるのか?という記事が出ました。「ネタを掘り下げ、心理学の観点などから検証していきます。」というものです。

想像がついた人も多いと思いますが、「リズムネタ」のつまらなさの記事でも取りあげた「ラッスンゴレライ」が、くり返して話題にされます。全裸に見える一発芸は、出てきません。ですが、同じくマイナビティーンズに先日出た記事、「とにかく明るい安村」が大ブレイク!ティーンに人気の訳は?が、「彼の真似をするティーンが続出しています。」「制服を着たままで真似をする動画がLINEやYouTubeに投稿されるように」として、きちんと取りあげたところです。安心してください。

「1968年に発表された心理学の論文で、繰り返し接することで印象が高まるという『単純接触効果』の存在が発表されています。」とあります。少々遠まわりのような書き方は、Zajoncのカタカナ表記に迷っての、苦肉の策かもしれません。ふと、占い師が教える幸せになる理論に半年前に出た記事、『身近な出会い』から「結婚」に繋げる方法が、つづりをまちがいながらも、一般的なカタカナ表記と合う書き方をしたのを思い出しました。また、あの論文の中には、mere exposure effectという表現は、一度も使われていません。時枝宗臣という人のウェブサイトの記事、記憶に残る広告、その効果は、事実に反することを、いきなり太字で示しています。一方で、気になる書き方ではあっても、こちらの筆者、浜瀬将樹というライターは、公刊年であることを明確にしていて、好感がもてます。公式の公刊年と実際に公刊された年とが一致しないことがあるのはともかくとしても、公刊された年が、研究の実施や発見にいたった年とは、少なくとも心理学では、多くの場合一致しないことは、意外に知られていないものです。

「総務省が発表した統計調査によると、10代のスマホ・PCによるSNS利用率は86.3%と非常に高くなっています。」とあります。この数値はおそらく、2012年秋に行われた調査の結果です。その2年後の調査の結果を示した、平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書では、これは94.8%です。また、10代といっても、12歳までは調査対象外であったことに注意してください。

「感受性の高いティーンの年代には特にダイレクトに伝わり、ついマネをしたくなるのだと思います。みなさんがティーンの頃はいかがでしたか?」と締めます。個性に価値がおかれるこのご時世に反して、若者がそろって同じ芸人のまねとはなげかわしいと思う人もいるかもしれません。ですが、無意味に個性にとらわれても、しかたがありません。週刊現代 7月25日・8月1日号(講談社)で酒井順子は、マンモグラフィ体験などから、「実は我々、個性偏重という状況に疲れている」可能性を見いだしました。また、週刊アスキー 5月5日号(KADOKAWA)で小野ほりでいは、「個性というのはほとんど捨てるためにあるようなものだ。」と論じています。

くるみの健康効能と「水着にまつわる失敗談」

きょう、Woman Insightに、【今日のインサイト】7月22日はナッツの日。王様はこれ!という記事が出ました。

すっかり夏らしくなった中、「今日7月22日はナッツの日です!」「ナッツといえば、連想するのはお酒。」と書き出されますが、この方向にはすすみません。夏子の酒(尾瀬あきら作、講談社)の連想へもつなげません。

「一言でナッツと言っても、その種類はさまざま。」「そのなかでも特に栄養バランスがよいとされているもの」として、くるみが取りあげられます。ですが、「くるみの健康効能に関する研究成果」が強調される一方で、バランスがどのようにととのっているのかは、ほとんど話題にされず、バランスが悪い印象です。

「スペインの脂質クリニック所長のエミリオ・ロス博士」とあるのは、Emilio Rosのことです。ですので、所属先は、Hospital Clinic Barselonaで書くほうがよさそうです。スペインなのでdeを入れるはずだと思った人は、地名を見てください。

「情報提供:カルフォルニア くるみ協会 日本代表事務所」とあります。原語では弱化母音のところで、カタカナ化に筆者なりのこだわりを出したかったのかもしれませんが、公式の表記にあわせたほうがよいと思います。出所はきちんと書くべきでしょう。

それで思い出したのが、同じくWoman Insightにきょう出た記事、わ、アソコが…!水着のあるある「赤面失敗談」ぶっちゃけ告白です。「それも数年経てばいい思い出!? というわけで、ちょっぴり笑える失敗談を集めてみました!!」とありますが、筆者であるいしかわちえという人が集めてきたものではないように、私には見えます。ValuePress!の記事、夏休み直前!水着に関する緊急アンケート実施水着になる際気になるのは、「太もも」が1位 3人に1人は胸にパット!“水着にまつわる失敗談”も発表からひろって、「三角ビキニが左右の脇に」「ボコボコの胸」「すごい寸胴体型に」「保健室のベットの上」といった、特徴のある表現をそのまま生かしつつ、リライトしたように思えるのですが、いかがでしょうか。