生駒 忍

記事一覧

言いわけする大人にさせない方法と尾鷲節

きょう、It Mamaに、ベストセラー教育家に聞く!子どもが将来「言い訳をする大人にならないため」の2つの秘訣という記事が出ました。

タイトルの「ベストセラー教育家」という表現がユニークですが、その人に「聞く」もののように見えて、本文には、「そこで今日は、『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者・立石美津子が“言い訳をしない大人に育てる秘訣”についてお話します。」とあり、立石美津子というライター自身が、「ベストセラー教育家」であるという設定で書いたものです。なお、「お話」に「し」が足りないようなのは、言いわけを「しない」ことにかけているのだと思います。

「「やってしまったこと」は素直に謝らせよう」とあります。はだかの王様への取り入りの記事で取りあげたよりもずっと小さくても、すなおなことはよいことです。

「例えば、子どもが牛乳をこぼしました。」という想定での、「ママ:「ママじゃなくて自分で拭こうね」」へと持っていく展開は、よいと思います。そして、「上手に拭けなかったら一緒に拭いて後始末を手伝うのは構いませんが、子どもでも自分のやったことに対しては自己責任を追わせましょう。」とします。「追わせ」とあるのが、つい気になりますが、尾鷲節が、「ままになる身を なしょままならぬ ままになる身を もちながら」、「親は樋の竹 子は樋の水 親がありゃこそ どこまでも」などと歌うことを連想させるねらいでしょうか。

「そんな躾が言い訳しない大人にしないための第一歩になりますよ。」と締めます。不必要に「しない」にひっくり返したために、結論をひっくり返してしまいましたが、ほんとうのうったえはその反対だと読めれば、混乱しないと思います。ふと、しない生活 煩悩を静める108のお稽古(小池龍之介著、幻冬舎)の24を思い出しました。

だしのタイミングと「注文の多い料理店」

きょう、エキサイトニュースに、家での料理も本格的に!東西の乾物屋に美味しい料理のコツを聞いてきたという記事が出ました。

東西のうち、まずは西のシマヤの取材からです。「ではどの味を、どのタイミングで使えばいいいのか。」という問いに、すぐ続く答えは、答えになっていません。タイミングを待つイメージをつくるねらいかもしれませんが、単に「地域性のあるラインナップが自慢」であることの話題を続けたかったのかもしれません。また、質問文に「い」が多いのも気になりましたが、次に「にんべん」が出てくることを示唆したかったのでしょうか。

一方、関東のほうでは、「そんなかつお節を使ったすすめの料理はお味噌汁やお吸い物。」とあります。料理を「お料理」と書くべきかどうかより以前のところで、「お」が落ちているように感じますが、鶏料理の写真が続くこととあわせて、「おとり」を連想させます。そういえば、注文の多い料理店(宮沢賢治作、オリオンブックス)は、西洋料理店の看板につられて、「どうか帽子と外とうと靴をおとり下さい」などとされていくお話でした。

学級崩壊の低年齢化と早生まれのマタイ効果

きょう、mamatennaに、最近の子どもは昔に比べて幼いの?という記事が出ました。親野智可等への取材をまとめたものです。

「最近、小学校の先生が口をそろえて言うのが『今の子どもたちは、手がかかります。20年くらい前の子どもたちに比べて2~3歳は幼い』と。保育園や幼稚園の先生も同じことを言うんです。」、数字がこれでぴったりかどうかはともかくとしても、方向性としては同感です。発達加速現象は減速したようですが、からだの成長と見あわないことも、内面がより幼く感じられる要因でしょう。一方で、別冊宝島2333 教師が危ない(宝島社)には、学級崩壊の低年齢化の指摘があり、手がかかることは早くなっているようです。

「子どもたちが幼くなったことには、平均寿命との関係もあるのです。寿命が年々長くなっているから、成長段階も全体的にゆったり長くなっているので当然なわけです。」、どうして当然になるのでしょうか。寿命のことははるか先のことで、それが「成長段階も全体的にゆったり」と、時間的にはるかに前のことに影響する因果関係の説明がほしいところです。また、平均寿命ののびを、全体が引きのばされるイメージで理解しているのかもしれませんが、実際は乳児期における死亡率低下が、大きく寄与してのことです。わが国の平均寿命は、明治時代にくらべて倍になりましたが、全員が等しく倍にのびたようなイメージでは、適切ではありません。

「最近では、美魔女ブームなどいうのもあって、コンテストのファイナリストに60歳の女の人が出場したということが話題になりました。大人もゆったりと年を重ねています。それなのに、なぜか大人が幼くなるのはいい事とされて、子どもはけしからんというのは、ちょっと子どもたちが可哀想だなと思うのです」、どうでしょうか。いつの時代も、どこの文化でも、子どもがぐんぐんそだつことは、よころばしいものです。また、「なぜか大人が幼くなるのはいい事とされて」しまうことは、問題にしないようです。「若作りうつ」社会(講談社)のような指摘にはどう考えるのか、聞いてみたいところです。

「もちろんなかには早熟な子もいれば、のんびりな子もいます。でも、子ども時代に優秀だからといって、将来大成するとは限りませんし、ピークが子どものころにきても人生つまらないじゃないですか?」と主張します。ですが、出だしをよくすることは、その後の人生の成功に、明らかに影響します。BERD 16号の記事、就学前教育の投資効果から見た幼児教育の意義で、ペリー就学前計画の劇的な効果を見てください。また、早生まれをめぐるマタイ効果の存在も、よく知られています。スポーツに関しては、バレーボールガイドの早生まれは損かが、さまざまなスポーツについてまとめています。学業では、経済総合研究所の論文、小学校入学時の月齢が教育・所得に与える影響が、最終学歴に「大きな違い」「大きな差」が出ることを明らかにしました。もちろん、「分析の結果は、きわめてセンシティブなもの」ですので、注意して読まれてほしいと思います。また、「ピークが子どものころにきても人生つまらない」という感覚もわかりますが、出だしでのんびりだったことがずっとひびき、ピークらしいものを一度も見ずにすごす人生と、どちらがましかと問われたら、むずかしいところかもしれません。ふと、週刊現代 1月31日号(講談社)で向井万起男がボビー・フィッシャーを探して(S. ザイリアン監督)を論じる中で登場した、「トップにならないほうがイイのかもしれない」を思い出しました。

はだかの王様への取り入りとエルメスティー

きょう、LAURIERに、優秀な人はどんな子が好き? 周りから可愛がられるちょっとしたコツという記事が出ました。

「優秀な人が好むのは総じて素直な人間。」と断言されます。ですが、「自分の話を素直に聞き、それを行動に移している人間はある意味「自分の分身」である。」「人は自分自身が人の価値観、行動の規範になることを好む」、これでは優秀な人というよりは、イエスマンに固められた、はだかの王様のようでもあります。むしろ、こういう見えすいた取り入りでかわいがってしまうのでは、取りまきから優秀だと持ちあげられることはあっても、ほんとうに優秀だとは考えにくいでしょう。あるいは、ほんとうかどうかはどうでもよく、権威があることになっている人に気に入られればそれでよいという人もいそうですが、多眼思考(ちきりん著、大和書房)の259ページが、頭にうかんでしまいます。

実のところ、「筆者は社会的に成功を収めている人や他人から人望厚い人にはとてもよく可愛がられる。それは筆者がその人たちの前では素直でいられるし、尊敬しか持っていないから。」などとする最後の段落が、筆者が読ませたかったことのようです。こういうことをおさえずに出してしまうほどに、ピュアですなおな人なのでしょう。いったい誰だろうと思ったら、最後に「エルメス」とありました。そういえば、電車男でエルメスは、べノアのピュア・ダージリンを贈ったのでした。

白くぼけた画像と「ルビーの指環」のヒット

きょう、i無料占いに、【心理テスト】婚約者からプレゼントされた指輪は? 答えでわかる結婚後の金運という記事が出ました。

「婚約者の家に代々伝わる宝石は、あなたが結婚後に得る財産の象徴です。」とあり、ひねりのない解釈にも、結婚後の財産は力を合わせてつくるのではなく、相手から得られるものと言いたそうな発想にも、しらけてしまった人もいるかもしれません。選択肢の画像が不必要に白くぼけているのは、それを意識したかのようです。それとも、金運という字は、金を運ぶと書くのだから、こういう解釈でぴったりだと考えますでしょうか。それでも、自分の金運を考えるのに、自分は運ぶのではなく、運ばれるほうという理解は、無理があるようにも思います。

ルビー以外の選択肢はそれぞれ、「老後までにはしっかりと一財産を築く」、「いつのまにか皆がうらやむリッチな生活に」、「結婚後、相手の親がなにかと援助してくれる」と、お金は明らかにプラスの方向です。一方、ルビーは、「結婚後、波乱万丈な金運となる」とされ、「少なくとも、退屈しないことだけは確かです。」とフォローが入ります。私のイメージでは、ルビーの指輪といえば、やはり寺尾 聰 ベストでは1曲目の「ルビーの指環」で、歴史的なロングヒットですので、波乱の浮き沈みという感じはない一方で、「退屈しない」のは納得できます。「二年の月日が流れ去り」どころではない今になって、ヒット中のイニシエーション・ラブの中で流れています。

「選んだ宝石が暗示する金運は、あなたの運命の青写真です。」、「でも、意識さえすれば、青写真は現実となるのです。」、おなじみの「引き寄せの法則」のような感覚です。最近ではたとえば、PHP 2015年7月号(PHP研究所)の特集も、そういう話題でした。ですが、考えることの逆効果と渡辺麻友の記事で取りあげたような指摘もあります。