生駒 忍

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学級崩壊の低年齢化と早生まれのマタイ効果

きょう、mamatennaに、最近の子どもは昔に比べて幼いの?という記事が出ました。親野智可等への取材をまとめたものです。

「最近、小学校の先生が口をそろえて言うのが『今の子どもたちは、手がかかります。20年くらい前の子どもたちに比べて2~3歳は幼い』と。保育園や幼稚園の先生も同じことを言うんです。」、数字がこれでぴったりかどうかはともかくとしても、方向性としては同感です。発達加速現象は減速したようですが、からだの成長と見あわないことも、内面がより幼く感じられる要因でしょう。一方で、別冊宝島2333 教師が危ない(宝島社)には、学級崩壊の低年齢化の指摘があり、手がかかることは早くなっているようです。

「子どもたちが幼くなったことには、平均寿命との関係もあるのです。寿命が年々長くなっているから、成長段階も全体的にゆったり長くなっているので当然なわけです。」、どうして当然になるのでしょうか。寿命のことははるか先のことで、それが「成長段階も全体的にゆったり」と、時間的にはるかに前のことに影響する因果関係の説明がほしいところです。また、平均寿命ののびを、全体が引きのばされるイメージで理解しているのかもしれませんが、実際は乳児期における死亡率低下が、大きく寄与してのことです。わが国の平均寿命は、明治時代にくらべて倍になりましたが、全員が等しく倍にのびたようなイメージでは、適切ではありません。

「最近では、美魔女ブームなどいうのもあって、コンテストのファイナリストに60歳の女の人が出場したということが話題になりました。大人もゆったりと年を重ねています。それなのに、なぜか大人が幼くなるのはいい事とされて、子どもはけしからんというのは、ちょっと子どもたちが可哀想だなと思うのです」、どうでしょうか。いつの時代も、どこの文化でも、子どもがぐんぐんそだつことは、よころばしいものです。また、「なぜか大人が幼くなるのはいい事とされて」しまうことは、問題にしないようです。「若作りうつ」社会(講談社)のような指摘にはどう考えるのか、聞いてみたいところです。

「もちろんなかには早熟な子もいれば、のんびりな子もいます。でも、子ども時代に優秀だからといって、将来大成するとは限りませんし、ピークが子どものころにきても人生つまらないじゃないですか?」と主張します。ですが、出だしをよくすることは、その後の人生の成功に、明らかに影響します。BERD 16号の記事、就学前教育の投資効果から見た幼児教育の意義で、ペリー就学前計画の劇的な効果を見てください。また、早生まれをめぐるマタイ効果の存在も、よく知られています。スポーツに関しては、バレーボールガイドの早生まれは損かが、さまざまなスポーツについてまとめています。学業では、経済総合研究所の論文、小学校入学時の月齢が教育・所得に与える影響が、最終学歴に「大きな違い」「大きな差」が出ることを明らかにしました。もちろん、「分析の結果は、きわめてセンシティブなもの」ですので、注意して読まれてほしいと思います。また、「ピークが子どものころにきても人生つまらない」という感覚もわかりますが、出だしでのんびりだったことがずっとひびき、ピークらしいものを一度も見ずにすごす人生と、どちらがましかと問われたら、むずかしいところかもしれません。ふと、週刊現代 1月31日号(講談社)で向井万起男がボビー・フィッシャーを探して(S. ザイリアン監督)を論じる中で登場した、「トップにならないほうがイイのかもしれない」を思い出しました。