生駒 忍

記事一覧

ストレス原因説への批判と「ネットの知識人」

きょう、しらべぇに、【またオマエかよ!】女性73%が「何でもストレス原因説」にストレスを抱えていた!という記事が出ました。

「「ストレスが原因」とされているものが多すぎると思う」としたのが、男性で56%、女性で73%という結果、多すぎるでしょうか。質問での多すぎるという評価が、何とくらべてのものかは不明ですが、自由記述からは、そういうものがもっと少ない世界に生きたいというよりは、過剰診断だというしろうと判断のようです。

そこまできらわれる「ストレス原因説」ですが、犯罪、がん、精神障害、その他さまざまな問題に、何らかのかたちでストレスのかかわりがあることは明らかです。どんなにたどってもストレスにはいき着かない問題は、なかなかないでしょう。問題は、ストレスもという理解にはなりにくく、ストレスのことを出されたときに、それが唯一絶対の原因だと決めつけたようにとってしまいがちなところです。純粋にストレスだけで、説明率が100%になるものなどまずありませんし、そのストレスにも原因があってとさかのぼれば、ストレスでないものにすぐ入れかえることができるのは、心理学をかじっていなくても、想像できないことはなさそうですが、むずかしいようです。一方で、素因ストレスモデルのような発想が妥当なことでも、相談してきた人には素因のことをとばして、ストレスのほうだけ説明するのが現実的な場面があると理解することは、少しむずかしいかもしれません。遺伝子の不都合な真実 すべての能力は遺伝である(安藤寿康著、筑摩書房)がもっと広く読まれるようになれば、変わりそうですが、現実的でしょうか。

「自称専門家がテレビなどでなんでもかんでも「ストレスが原因じゃない?」と回答する」、「「ストレスが原因」で回答した気になっているネットの知識人に違和感を持つ」、実際の回答には固有名詞も入っていたのでしょうか。NEWSポストセブンにきのう出た記事、コメンテーターの役割は視聴者からの共感 専門的な話は不要から考えると、何にでも遺伝だと言うよりは、ストレスだと言うほうが、テレビを見るような人の共感は集めやすそうです。では、「ネットの知識人」ではどうでしょうか。どちらも、誰がというところまで明らかにされて、その本人からの反論をきいてみたいところでもあります。

「ストレスのない人なんているのかと疑問にも」、それは当然の疑問でしょう。心理学検定 公式問題集 2015年度(実務教育出版)にも、「どのような刺激もストレッサーとなりえる。」とあります。Amazon.co.jpでとても評価の高い背骨の実学(石垣英俊著、池田書店)に、「重力という刺激をよいストレスとして受け入れ、うまく付き合っていきましょう。」とあるのを思い出しました。

宮崎あおいの朝ドラ再登場と大河失敗の原因

きょう、東スポWebに、宮崎あおい 朝ドラ主演の波瑠にアドバイス送れず恐縮という記事が出ました。

宮崎について、「朝ドラと大河に主演した女優が、再び朝ドラの主要キャストになることは異例。」とあります。落ちぶれたととる人もいるかもしれませんが、活躍の場があることは、よいことです。週刊実話 5月7日号(日本ジャーナル出版)に、小林タケという人のコメントとして、「ドラマに出たがらないのか、それとも本人が起用されないのか、真相は不明」と書かれた矢先に、大きなお仕事が明かされたのでした。不倫騒動のダメージは大きかったと思いますが、まだ20代です。ケイコとマナブ首都圏版 2015年4月号(リクルートホールディングス)でマギーは、「20代、30代は失敗が通用する年齢だと思う。」としていました。ここからあざやかな復活となりますでしょうか。

一方で、その宮崎が貢献した大河が、いまの大河の悲惨なつまずきを生んだともされていて、NHK側としては、複雑なところかもしれません。FRIDAY 5月1日号(講談社)には、「『篤姫』の成功体験こそ、今回の失敗の原因だと語るのはNHK局員だ。」とありました。

自分だけ取りのこされる大学デビューと苦悩

きょう、マイナビニュースに、4月:「大学のシステムがわからない病」と「まわりがみんなスゴイ人に見える病」という記事が出ました。

「大学1年の4月というのは、期待よりも不安が勝ってしまう時期だと思います。」とします。外部のステレオタイプでは、期待でいっぱいの時期ですが、このほうが、リアリティがあります。

「声をかけられたアメフト部の人から連日めっちゃ勧誘の電話がかかってきて」、ご苦労さまです。「この体験は私に大きな恐怖を植えつけました。」となったことについて、15年前に植えつけた側だった人に、いまの考えを聞いてみたいところです。

「トミヤマさんも書いていたように、大学というのは中学や高校に比べて圧倒的に放任主義の場所です。」、近年変わってきてはいますが、本質的にはそうでしょう。高い自由による必然でもあります。また、「どんな授業を、どんな時間割りで組むのか。情報は自分で仕入れなきゃいけないし、手続きも自分でやらなければなりません。」、こういった経験は、生徒から社会人への橋わたしとして、意味があるものでもあります。

「なぜか「あの授業がおもしろいらしい」「あの先生は単位楽勝らしい」などとワイワイやっている。えっ、何でそんなに詳しいの? てか、何でもう友達になってるの? もしや、俺だけが欠席した説明会でもあったのではないか……。」、よくあることです。今ではSNSで、入学前からもうつながっていることが、よくも悪くもおどろかれますが、20世紀の末でもこういうことができた人々が一定数いたのです。夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘(中川淳一郎著、講談社)にある、会社の内定者が、ろくにネットもない時代なのにつながりあっていて、自分だけ取りのこされたような体験を思い出しました。こういうスキルは、生涯に何度も出番があるわけではありませんが、人生の要所でみごとに作用しますので、興味深いものですが、心理学や教育学で、実証的な分析はなかなかされていないように思います。

それでも、この事例でも、同じく「大学デビューの落とし穴」で1週間前に出てなおアクセスを集めている記事、4月:新入生ファッションとサークル勧誘の関係性の筆者である大学講師も、デビューでつまずきはしたものの、得るものも、結果的にはよかったところもあったようです。人生、そういうものです。ふと、ベーシック心理学(二宮克美・山田ゆかり・譲西賢・天野寛・山本ちか・高橋彩著、医歯薬出版)に、「苦悩がなければ,人間は想い違いのまま生き続けるかもしれない.想い通りにならない苦悩があるから,自分の生き方に潜んでいた問題性に気づけるのである.」とあるのを思い出しました。

「スマホやめますか」の皮肉と音楽による難聴

きょう、スポーツ報知のウェブサイトに、【メディカルNOW】「スマホ依存症」「スマホやめますか、それとも…」信大学長の真意は?という記事が出ました。

「「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」というフレーズが話題に」、あれはいわゆる炎上マーケティングとしては成果があり、今季では芸能人の批判しにくいできごとを使った関西大とともに、大学教育に関心のない人にまで知られた入学式となりました。会場で聴かなくても、あいさつの全文が公表されていますので、あのフレーズはレトリックで、二者択一を強いたわけではないとすぐわかるものでしたが、それができない人も一定数いることを浮かびあがらせた事件だったようにも思います。スマートフォンで、いつでもどこでも文章が読める時代になっても、その便利さを生かせていない自分に気づかずに、便利なスマホをたたくなと反発するとは、皮肉なものです。ちなみに私は、ニュースサイト、若くないのでネットニュースではなくニュースサイトと表現しますが、そこでのタイトルで見たときには、あいさつ中にスマホいじりをやめない学生が目だって、仙台で吉村作治が怒った事件のようなことが起こったのかと期待しましたので、もっとずれた誤解から入りました。

「長時間スマホを使う」ことの、学長の主眼とは異なる問題点が、先に提示されます。「首を下に向けるので肩こりがひどくなる」、こういった問題には「スマホうつ」の記事で触れました。「ヘッドホンで音楽を聴いていると難聴になる」、これに関する対策には、音楽心理学入門(星野悦子編、誠信書房)で触れました。

「が、スマホのゲームなどで無為に時間を潰す機会が増え、スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもないから、スイッチを切って本を読もう、友だちと話をしよう、自分で考えることを習慣づけようと呼びかけたのだ。」、これが新入生へのメッセージだったような書き方ですが、「毒以外の何物でもない」は言いすぎでしょう。それでも、悪影響には注意が必要です。情報弱者とパソコン離れの記事で取りあげたような、つくる関心が落ちてただの「消費者」に固定されてしまうこと、テレビをつまらなくしている若手の記事で取りあげたような、自分の意思を他人にわたしてしまっているかのようなところなどは、スマホくらい自由に使わせろと言いたい人ほど、より重い自由の問題として、よく考えるべきでしょう。

健康心理学・福祉心理学問題集119の評判

健康心理学・福祉心理学問題集119(生駒忍著、デザインエッグ)、好評の声をいただいています。本日から、第2版となりました。ご覧いただくとわかりますが、目次でいきなりまちがいがあるなど、おかしなところを修正しました。また、出題解説も、皆様にご活用いただけているようで、ありがたいことです。これからも、どうぞよろしくお願いします。