生駒 忍

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テレビドラマのわくの減少と「愚民化装置」

きょう、スポニチアネックスに、ドラマは二極化へ?夏は各局苦戦の様相 深みないと視聴者そっぽという記事が出ました。

「フジテレビ「恋仲」(月曜後9・00)は同局の看板ドラマ枠“月9”史上初の1桁発進(9・8%)となった。」そうです。フジテレビのドラマの苦戦の記事で取りあげた予測のとおり、あるいはそれをさらに突きぬけるほどに、あのわくとは思えない、あわれな数字です。

「テレビ離れや視聴スタイルの変化が叫ばれて久しく、ドラマ枠が減少。」「ドラマ枠は今年4月クールからTBSの月曜8時枠、フジテレビの火曜9時枠が消滅。」とあります。ただし、ドラマのわくが減るのは、いまに始まったことではありません。20世紀末の本、テレビドラマのメッセージ 社会心理学的分析(岩男壽美子著、勁草書房)にも、「番組数、トータルの放送時間ともに減少傾向」であったことが指摘されています。

「ドラマ制作の舵取りが難しく中、ある民放関係者は視聴される作品と、されない作品の差が大きくなりつつある「二極化」の現象を指摘する。」として、「ある種、二極化が進んでいるような気がします」という声を紹介します。ここ数年、ドラマの視聴率というと、今回のようなさえない話題が多い中で、家政婦のミタ半沢直樹の、異常なほどの数字もあったのです。

同じ関係者による、「インターネットとは違い、積極視聴ではないといわれるテレビに、不特定多数の人をどう呼び込むか。」という問題提起があります。ドラマにかぎっては「積極視聴ではない」はずはないと考える人もいるかもしれませんが、テレビに観音びらきのとびらがついていた時代ではありませんし、いまの若者むけのドラマだったら中身がないから、などと早合点するのもよくありません。Amazon.co.jpでとても評価の高い、文は一行目から書かなくていい 検索、コピペ時代の文章術(藤原智美著、プレジデント社)によれば、橋田壽賀子脚本のあの長ぜりふが、集中しては見ていない視聴者層に適していたのです。もちろん、テレビ全体が、積極視聴から相対的に遠ざかっていることは明らかです。週刊アスキー 7月29日号(KADOKAWA)で、4スクリーン時代の最強の「愚民化装置」がテレビとされたのは、まさにここでした。