生駒 忍

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お笑いの単純接触効果と個性偏重への疲れ

きょう、マイナビティーンズに、ティーンはなぜお笑い芸人のギャグ・ネタをマネしたくなるのか?という記事が出ました。「ネタを掘り下げ、心理学の観点などから検証していきます。」というものです。

想像がついた人も多いと思いますが、「リズムネタ」のつまらなさの記事でも取りあげた「ラッスンゴレライ」が、くり返して話題にされます。全裸に見える一発芸は、出てきません。ですが、同じくマイナビティーンズに先日出た記事、「とにかく明るい安村」が大ブレイク!ティーンに人気の訳は?が、「彼の真似をするティーンが続出しています。」「制服を着たままで真似をする動画がLINEやYouTubeに投稿されるように」として、きちんと取りあげたところです。安心してください。

「1968年に発表された心理学の論文で、繰り返し接することで印象が高まるという『単純接触効果』の存在が発表されています。」とあります。少々遠まわりのような書き方は、Zajoncのカタカナ表記に迷っての、苦肉の策かもしれません。ふと、占い師が教える幸せになる理論に半年前に出た記事、『身近な出会い』から「結婚」に繋げる方法が、つづりをまちがいながらも、一般的なカタカナ表記と合う書き方をしたのを思い出しました。また、あの論文の中には、mere exposure effectという表現は、一度も使われていません。時枝宗臣という人のウェブサイトの記事、記憶に残る広告、その効果は、事実に反することを、いきなり太字で示しています。一方で、気になる書き方ではあっても、こちらの筆者、浜瀬将樹というライターは、公刊年であることを明確にしていて、好感がもてます。公式の公刊年と実際に公刊された年とが一致しないことがあるのはともかくとしても、公刊された年が、研究の実施や発見にいたった年とは、少なくとも心理学では、多くの場合一致しないことは、意外に知られていないものです。

「総務省が発表した統計調査によると、10代のスマホ・PCによるSNS利用率は86.3%と非常に高くなっています。」とあります。この数値はおそらく、2012年秋に行われた調査の結果です。その2年後の調査の結果を示した、平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書では、これは94.8%です。また、10代といっても、12歳までは調査対象外であったことに注意してください。

「感受性の高いティーンの年代には特にダイレクトに伝わり、ついマネをしたくなるのだと思います。みなさんがティーンの頃はいかがでしたか?」と締めます。個性に価値がおかれるこのご時世に反して、若者がそろって同じ芸人のまねとはなげかわしいと思う人もいるかもしれません。ですが、無意味に個性にとらわれても、しかたがありません。週刊現代 7月25日・8月1日号(講談社)で酒井順子は、マンモグラフィ体験などから、「実は我々、個性偏重という状況に疲れている」可能性を見いだしました。また、週刊アスキー 5月5日号(KADOKAWA)で小野ほりでいは、「個性というのはほとんど捨てるためにあるようなものだ。」と論じています。