生駒 忍

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労務管理3級テキストの当初からのまちがい

あすは、平成25年度後期ビジネス・キャリア検定試験の試験日です。大雪でどうなるか、心配だった方も多いと思いますが、予定どおり開催される予定です。

私が昨年、その労務管理3級をとったことは、以前の記事で書いたとおりです。今回も多くの方に追いつかれ、追いこされていくと思いますし、それでまったくかまいません。多少の社会人経験があれば、常識問題とまではいえなくても、難易度はさほどでないでしょう。ご健闘をいのります。

ですが、そこを受験する方の多くは、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 労務管理3級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)で試験対策をすすめてきたと思いますが、絶対評価としては、すぐれたテキストとはいえません。誤字脱字や表記の不統一はもちろん、ほかのテキストからのリライトだと明言された節があったり、学習テキストとしての体系化が甘かったりといったところが気になった方もいるでしょう。また、データが古くなりつつあるだけでなく、近年の法改正が反映されていないのは、書籍というかたちである以上は、ある程度やむをえないところですが、学習の上で注意を要することになります。しかも、時の流れとは無関係に、おそらく公刊の当初からまちがったままの記述も見うけられます。

そこで、明らかにまちがいであるところを、いくつか挙げておきたいと思います。なお、私の手もとにあるのは第6刷ですので、ほかのものでは異なる可能性があります。また、私はこれに限らず、資格試験対策のために買ったテキスト類はいつも、適当につまみ読みして、読みのこしがあるままで試験を受けてしまいますので、すべてを読みとおしてまちがいをひろったわけではありません。

・18ページで、「行動が立ち上がるには動因と誘引の組合せが必要」「誘引とは、ヒトの外にある欲しい気持ちを満たすもの」「賃金等の誘引」とありますが、「誘引」とあるのはいずれも、正しくは「誘因」です。リライト元のビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発3級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)にあるまちがいを、書きなおさずにそのまま持ってきたのでしょう。ちなみに、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)には、正しく「誘因」で書かれています。

・139ページで、「人口15万人以上の市と特別市には人事委員会または公平委員会が」とありますが、「特別市」ではなく「特別区」です。地方公務員法7条2項です。

・169ページで、図表5-3-5の中の矢印のうち、一番下にあるものは向きが逆で、労働局長の助言・指導は、紛争調整委員会のあっせんより先です。厚生労働省と都道府県労働局によるパンフレット、労働者、事業主のみなさまへ 職場のトラブル解決サポートしますがわかりやすいでしょう。

・184ページで、「高齢化社会(高齢化率が7%)から高齢社会(同14%)に」とありますが、少なくとも一般的な定義では、7%ちょうどは高齢化社会ではありませんし、14%ちょうどではぎりぎり高齢化社会で、高齢社会ではありません。よく引用される、平成18年版 高齢社会白書(ぎょうせい)のコラム1「「高齢社会」「高齢化社会」とは?」をご覧ください。

・223ページで、図表6-3-6のタイトルが「雇用形態別の雇用者数」となっていますが、数値を見ればわかるように、雇用者数ではなく、各雇用形態の人数比の表です。なお、いつのデータなのかが書かれていませんが、平成18年の年平均だと思います。

・障害者雇用率制度に関して、235ページに「事業主は、法定雇用障害者数を上回る人数の障害者を雇用すること」、236ページに「雇用障害者数(実雇用率)が法定障害者数(法定雇用率)を上回ること」、238ページに「実雇用率が法定雇用率を超えること」とあり、これならば法に反することはありませんが、障害者雇用促進法43条が求めるのは「上回る」「超える」ことではありません。

・255ページで、図表6-5-1の一番下に「法務大臣が特別な理由を考慮して、一定期間の在留を認める者、インドネシア難民、条約難民、日系3世等」とありますが、「インドネシア難民」ではなく「インドシナ難民」でしょう。入国管理局による在留資格一覧表をご覧ください。なお、テキストの図表の「在留期間」のところはもう古くなり、これで覚えてはいけませんので、新しい在留管理制度や、在留資格「公用」の在留期間の改正についてを確認しておきましょう。

曻地三郎の足跡への感謝状と居住地の変遷

きょう、西日本新聞のウェブサイトに、故曻地三郎さんに感謝状 福岡市「障害児福祉発展に功績」 [福岡県]という記事が出ました。

以前に、「平野新聞」終刊の記事で、曻地の訃報に触れましたが、この感謝状は、すでに亡くなったことを前提として、「生前果たした」ことへの感謝を述べます。賞状や感謝状のたぐいは、これでもかというほど受けてきた偉人ですが、もしお元気だったとすれば、これもあの人なつっこい笑顔で受けとったことでしょう。今回、福岡市が出したのは、市の障害者福祉への貢献のためであることは、容易に見当がつきますが、あまりにも容易すぎるためでしょうか、記事には感謝状を出した理由が明示されていません。最後に、「感謝状は「日本の障害児福祉の発展に多大なる足跡を残した」と三郎さんの生前の功績をたたえている。」とあるので、日本に対してのことに福岡市が感謝したように読めます。なお、ここのかぎかっこ内の表現は、実際の感謝状にあるものとは、少しだけ変えてあります。正しくは、「我が国の障がい児福祉の発展に多大なる足跡を残されました」です。ほかのところはともかくとしても、「障がい」を「障害」に「直した」のは、許しがたいと思った人もいるかもしれません。この単語の表記をめぐっては、強く主張したい人とやり取りする意欲はないので、私からはこの機会に、まだ知らない人の多そうな2点を、軽く示すのみにします。ひとつは、昨年8月25日付の福祉新聞で、障害者の側から「まだまだ、この「障害者」という言葉を使っていくべき」とした、文福の八木勝自理事長のユニークな指摘、もうひとつは、「“「障害」は本来「障碍」と書くのに、戦後になって「障害」と書くようになった”という俗説」を根本的に反証した、アスペ日記に1か月ほど前に出た記事、「障害」書き換え説,あるいは戦前の雑さです。

「曻地三郎さんは、小学校教師として大阪府で勤務していたが、長男が生後間もなく脳性まひとなり、福岡市に転居。」とありますが、誤解をまねく書き方であるように思います。私の理解では、長男が脳性まひを発症したのは、その教職を辞して、大阪から広島へ戻ってからのことで、福岡への転居も、発症してすぐではなく、福岡県女子師範学校の仕事が取れてからのはずだったと思います。あるいは、もし私の理解におかしなところがあれば、ぜひ指摘していただきたいと思います。ですが、BLOGOSにきょう出た記事、STAP細胞の研究論文内の不自然な画像データがその日のうちに「一時削除」となった騒動を見ると、指摘することのむずかしさも感じます。

いばらキッスはスワンカフェの目玉でしょうか

きょう、フィールドプロモーションニュースに、障がい者とともに生きるスワンカフェ いちごスイーツフェア開催という記事が出ました。近々開催される、スワンカフェ銀座店のフェアの紹介です。

スワンカフェのことは、専門分野の関係で当然知ってはいますが、実はまだ、入ったことがありません。銀座店はあの立地で、いわゆる銀座からはやや遠く、私のくらしの中では、通りかかる場所ではないのです。一方で、社会福祉を意識しながらわざわざ行くのも、創業理念になじみにくいように思ってしまいます。食べログの記事でも、福祉を前面に出さない、ふつうのカフェ、ふつうの労働の場と見られていることがわかります。経営はロマンだ!(小倉昌男著、日本経済新聞社)に自身で書いたように、おかしな規制や権益とは本気でたたかった創業者らしく、市場の競争の中にノーマライゼーションを体現したところなのです。そういえば、タウンニュース戸塚区版にきょう出た記事、「障がい者美術館」に150点 きょう17時までは投票もは、クイズダービーのような点数ではなく、約150点が展示された美術展の紹介ですが、「気に入った作品を一つ選び、会場に設置された投票用紙で投票できる。上位入賞作品は展示期間終了後も会場内に掲示される予定。」と、むき出しの競争システムを導入したのが独特です。それでいて、展覧会の名称は「みんなちがっていいんだよ」にしたところに、バランス感覚を感じます。

さて、今回のスワンカフェの記事を読んで、なんとなく既視感を感じた人も、あるいははっきりと、この前読んだあれだと気づいた人も、いるだろうと思います。銀座経済新聞に出た記事、銀座スワンカフェでいちごスイーツフェア-障がい者と共に12年にあった内容に、ほとんどかぶるのです。それをリライトして圧縮して、この記事になったように見えます。ですが、よく見ると、そのオリジナルには見あたらない、こちらの記事オリジナルの情報もありますので、単なるリライトではありません。

ひとつは、このカフェが使うパン生地の開発者です。銀座経済新聞には、「小倉理事長は障がい者の自立のために月給10万円以上を支払えるよう、タカギベーカリー(広島県広島市)の当時の社長だった高木誠一さんの協力を得て、同社が独自に開発した冷凍パン生地を使い、障がい者でもパンが焼ける方法を生み出した。」とあります。「アンデルセン」や「リトルマーメイド」で知られる、タカキベーカリーが開発者です。一方、フィールドプロモーションニュースでは、「故・小倉昌男同財団初代理事長が障がい者の自立のために冷凍パン生地を独自に開発し、障がい者でもパンが焼ける方法を確立した。」、つまり開発者は小倉昌男、運送業ひとすじの男が独自開発したことになっています。小倉が、後から美談がつくられることもありそうな傑物だからというわけではありませんが、私の知る限りでは、銀座経済新聞のほうが正しい起源だと思います。

もうひとつは、いばらキッスを使うメニューの位置づけです。銀座経済新聞には、「今年は初めて仕入れる品種『いばらキッス』を使ったスイーツメニューを提供する予定。鈴木さんは「『いばらキッス』は、サイズはまちまちだが肉質が柔らかで甘味が強くジューシー」と話す。」とあります。一方、フィールドプロモーションニュースは、「このフェアは今年で4回目となるが、今年初めて仕入れる品種、『いばらキッス』を使ったスイーツメニューが今回の目玉だ。」、目玉メニューに位置づけます。銀座経済新聞には、そのメニューの写真もありますが、キャプションにも目玉だと書いてはいませんし、目玉のかたちをしたメニューでもありません。すると、真実はどちらにあるのか、興味をもつ方も出るかもしれませんが、両者は相互排他的な関係ではありません。銀座経済新聞は、目玉メニューではないと書いたわけではありませんので、もし目玉メニューであったら、どちらにもうそはなく、目玉メニューでなかったら、フィールドプロモーションニュースがうそを報じたことになります。心情的には、目玉であってほしいと思います。いばらキッスは、あいかわらず茨城らしいセンスのネーミングですが、目玉に取りあげてもらえるならありがたいことです。また、愛の貧乏脱出大作戦ではありませんが、何かひとつ、飛びぬけた看板メニューがつくれれば、後まで安心でしょう。ええもんひとつ とびきり屋見立て帖(山本兼一作、文藝春秋)の、真之介とゆずとが善右衛門から教わってあった、「ええもんひとつ」の思想にもやや近いところがあります。きょう、その作者である山本が亡くなりました。ご冥福をいのります。

名古屋市教委の常勤スクールカウンセラー

きょう、毎日新聞のウェブサイトに、名古屋市教委:「子ども応援委」設置 臨床心理士ら常勤という記事が出ました。いじめ等への対応の一環として、事務室を11か所に設置して、それぞれ常勤3名、非常勤1名ずつを配置するそうです。

「12日発表の2014年度一般会計当初予算案に3億1800万円を計上した。」とあり、人口規模で日本で4番目の大都市だけあって、なかなかのお金のかけ方だと感心しました。ですが、やや気になりましたので、少し調べてみました。きょう発表された平成26年度予算の概要(草案)では、学校教育関係経費120億円の中では、名古屋市立大への運営交付金の次に規模が大きい「教育指導」23億円弱の中に、「なごや子ども応援委員会の設置」が入っていて、これ単独の配分額は不明です。そこで、参考として平成26年度当初予算財政局案を確認してみると、「なごや子ども応援委員会の設置」単独の予算規模はわかりませんが、これを含む「いじめや問題行動など児童生徒に関わる諸問題への対応」全体が一般会計で1億7600万円で、記事の金額の半分にも届きません。そして、それを含む4事業をあわせた「学校におけるマンパワーの拡大」の予算要求が、一般会計で計3億900万円で、これが報道された金額に近いようです。

「スクールカウンセラーら常勤職員3人と警察出身者を充てる非常勤の「スクールポリス」1人の計4人ずつを配置する。」とあり、スクールポリス以外は「常勤」です。これは、委員会の所属としては常勤ですが、ふだんは委員会の事務室に3名ともいるのではなく、エリア内の各校での援助活動を、非常勤的にかけもちするのだと思います。「臨床心理士などの資格を持つ常勤職員が子供たちの問題の兆候を探し、関係機関との調整に当たるなどの業務に特化することで、教員の負担軽減も図る。」とありますので、現場を回るはずです。なお、「関係機関との調整に当たるなどの業務」は、おなじみのロングセラー、学校心理学(石隈利紀著、誠信書房)では「心理教育的援助サービス」の射程ですが、そういう業務は本質的に、カウンセラーというよりはソーシャルワーカーの領分です。予算の概要(草案)には、「常勤のスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等で構成し、児童生徒に関わる諸問題への対応を行う「なごや子ども応援委員会」」とありますので、SSWがきちんと分担するものと思います。そこで、「常勤職員の公募を12日に始めた。」のでしたら、募集の書面で業務内容を確認できるだろうと思ったのですが、職員採用情報メニューからは、それらしいものが見つかりませんでした。

私としては、より興味があるのはスクールポリスです。アメリカではもう定着した存在のようですが、わが国にもなじみますでしょうか。少年犯罪と闘うアメリカ(矢部武著、共同通信社)にあるような決死の活躍は、日本ではさすがに考えにくいでしょう。ですが、学校保健安全法26条の「加害行為」への対応は、文部科学省の学校安全の推進に関する計画についてでも主な関心の外ですので、スクールポリスが別の角度から、学校、子どもの安全、安心を守ることを期待します。鸡西新闻网にきょう出た記事、孩子心理的四大"需要"の2番目にもあるように、子どもの学びに安全は不可欠なのです。

和歌山おもてなしタクシー大作戦の対象者

きょう、msn産経ニュースに、出発「おもてなしタクシー大作戦」 来月までに計14回 和歌山という記事が出ました。

「大作戦」の背景として、「今年は「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録10周年、来年には高野山開創1200年や国体開催などが目白押しの“ゴールデンイヤー”。」とあります。統語的には、今年がそのゴールデンイヤーと読めますが、挙がったイベントを見る限り、県外の者の感覚としては、来年をゴールデンイヤーと考えたほうがよさそうに思えます。この2年間をひとくくりでゴールデンイヤーと呼びたいのかもしれませんが、スティーブン・キングのゴールデン・イヤーズではありませんが、それなら複数形にしたいところです。

「和歌山の魅力をアピールする「和歌山おもてなしタクシー大作戦」が本格的にスタートした。」とありますが、記事にある範囲では、和歌山かどうかに関係のない、単なる接客の講習のようです。14回の開催なので、そのうち新名所のアピールや方言の言いかえなどをあつかう回もあるのかもしれませんが、「今年3月までに計14回が予定され、県内の全タクシー運転手約1700人を対象に行われる。」とあり、今回の参加者は「約180人」ですので、14回を続けて受ける講座ではなさそうです。ですが、「県内の全タクシー運転手約1700人を対象」とあるからといって、全員に受講義務があるかどうかは、よく考えるとわかりません。市町村内在住者が対象だという一般向け講座はどこの自治体でもありますが、在住者全員に受講義務があるとは考えにくいでしょう。

サイゾーウーマンにきのう出た記事、マスコミ・業界関係者に聞いた、気を遣う「“勘違い”女性芸能人」によれば、フォニックスは滝川クリステルに「おもてなしは言わせません」と、強気な態度のようです。ですが、せっかくの流行語ですし、東京五輪に向けても、そしてその先もずっと、和歌山でもどこでも、意識されつづけてよいと思います。BLOGOSにきょう出た記事、現実を見ないで空想を語るのが勇気か?のコメント欄に、「「ご・ら・ん・し・ん TOKYO 2014」っていうブログ」をつくったお話がありましたが、位置がずれて「し」の1文字がかぶるだけなのに、滝川のもじりだとすぐわかるくらい、広まったことばです。また、タクシーに関しては特に、ごく一部だと思いたいですが、不愉快な思いをした体験を聞くことがありますので、おもてなしをぜひ意識してほしい業界です。マイナビウーマンにきょう出た記事、タクシーでのトラブル体験「運転手にナンパされた」「愚痴を20分間聞かされ続けた」にも、いろいろなエピソードがありました。1か月ほど前にイザ!に出た記事、すごむ、割り込む、客回さぬ 「営業妨害」認めたタクシー縄張り争いも、どちらが正しいかにかかわらず、利用者からみれば迷惑なもめごとです。ちなみに、それを書いた記者のうち片方は、きょう、逮捕されました。ですが、本紙神戸総局記者、傷害容疑で逮捕によれば、容疑を否認しているそうです。