生駒 忍

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左右色ちがいの顔の絵をかく心理と犯行時刻

きょう、Yahoo!知恵袋に、児童心理に詳しい方お願いします。 この絵を6歳の息子が描きました。心理的判断と...という質問記事が出ました。子どもの絵の画像を示して、描画アセスメントのようなものを求めています。

いろいろな回答がならぶ中で、今のところの範囲では、最初のものが私の考えに一番近く、6番目、これは現在の最後の回答ですが、これが一番遠いです。絵から発達の水準はある程度読みとれますが、それ以上のことは、いきなり絵だけ見せられたのでは答えにくいです。心理学はその程度なのかと、残念に思われそうですが、サイコメトリーのように、そこにあるものひとつからくっきり見えることは、なかなかありません。心理テストはウソでした(村上宣寛著、講談社)に登場する、名の知れた臨床家3名によるロールシャッハ解釈ショーの残念な展開を思い出してください。質問サイトに山ほどある、こんな返事がきました、こんな態度をとってきます、これは脈ありですか、脈なしですか、といった2択であっても、心理学者ならそれ以外の人よりも当てられるとは、とても言えません。

ですので、以下は絵の解釈ではなく、単なる連想です。顔の左右が別の色といえば、やはりVenus's Page - Amazing Chimera catが有名でしょう。イヌでは、更新がとまって久しいGagDonkeyの記事、Bi-Color Pugがあります。甲殻類でもときどき起こることで、中でもGeekologieに昨年出た記事、1-In-50-Million Bi-Colored Blue And Red Lobsterのインパクトは強烈です。ではヒトではどうかと思った方は、調べてみてください。なお、アンドロイドでしたら、まもなく完全版でよみがえる人造人間キカイダー(石ノ森章太郎作、復刊ドットコム)があります。

さて、ですので前に書いたとおり、これはむずかしい質問です。「児童心理に詳しい方」でも、くわしく答えるのは苦しいです。

くわしいといえば、きのうの記事で取りあげた図書館カレー投げいれ事件について、スポーツ報知のウェブサイトにきょう出た記事、返却BOXにカレー また受難、図書館は辛いよが、カレーをかけたので「からい」と「つらい」とをかけたタイトルなのも楽しいですが、よりくわしい情報を明らかにしました。昨年末にもあったので今回で5件目として、これまでの被害状況や、被害届提出の経緯など、日経やmsn産経の記事にはなかった情報が盛りこまれました。また、「カレーライスはコンビニエンスストアなどで販売されているプラスチック製の容器に入っており、ルーだけではなくライスも盛られていた。」との説明も、ずいぶんと具体的です。

ですが、スポーツ報知の記事には、きのう紹介した記事との不一致もあります。ひとつは、犯行時刻です。「2月28日午前10時30分ごろ、東京都荒川区の区立日暮里図書館で、出入り口に設置された貸出書籍の返却ボックスにカレーライスを投げ込み、書籍6を汚損させた疑い」「現場の警戒に当たっていた署員が28日朝、カレーライスを手に現れ、ボックスに投げ込んだ兼行容疑者を逮捕」、これはほかの報道での時刻よりも、半日以上早いものです。昼か夜か、まったく別ですので、少なくともどちらかは、うその報道のはずで、どこかで白黒をつけてほしいところです。

もうひとつは、容疑者の氏名表記に使った漢字で、スポーツ報知では「龍」ではなく、「竜」です。こちらは、見かけのかたちはまったく別でも、さほど重要なことではないと思う人も多いでしょう。ですが、エピソードでつかむ青年心理学(大野久編、ミネルヴァ書房)には「姓名はその人全体を表す」とありますし、名前はアイデンティティと深くかかわることがありますので、どちらかの字を氏名にふくむ人などで、どちらでも大差ないと雑にあつかわれるのは許せない、決着をつけたいと思う人もいるかもしれません。それでも、STAR TREK 宇宙大作戦 シーズン3の、顔のどちら側の半分が白で、どちら側が黒かで対立し、文字どおり最後まで争いつづける後味の悪いエピソード、「惑星セロンの対立」のようにはならないことを願いたいところです。

カレー投げいれ事件と秋葉原激安カレーのお話

きょう、日経電子版に、図書館返却箱にカレー入れる 東京・荒川、容疑の男逮捕という記事が出ました。日暮里図書館での不可解な事件ですが、容疑者の氏名はふせられていません。

カレーを入れるとは想像しにくい行いですが、「書籍返却ボックスに食べかけのカレーライスと容器を投げ入れ」とあります。食べかけのきたないイメージと、入れものつきのていねいなイメージとの組みあわせで、ですが投げいれるとはまた、きたない印象です。日経はこうでしたが、msn産経ニュースにきょう出た記事、図書館の本返却ボックスにカレー投げ込む 容疑で男を逮捕では、タイトルだけでなく、本文でも「カレーライスを投げ入れた」「カレーを投げ込んだ」「カレーライスを投げ込み」と、くり返し投げられます。なお、現行犯逮捕された北区民は、返却ボックスをごみ箱だと思ったと言いはっているそうですが、北海道ルール(中経出版)を引くまでもなく、日本にはごみを捨てることを「投げる」と表現する地域があります。

今回の逮捕容疑となった損害は6冊ですが、同様の被害はこれで4回目のようです。msn産経の記事には、「同館では1月31日から同様の被害が数件発生し50冊以上の書籍が廃棄処分されていた。」とあります。本は洗濯するわけにはいきませんし、カレーは洗濯できる衣服でも落ちにくいものです。TRFがHEY!HEY!HEY!にまっ白な衣装で出演したときには、松本人志がカレーうどんに気をつけるようにと言って、DJ KOO以外が笑った展開がありました。はねてから、いそいで紙ナプキンで抵抗したことのある人も多いでしょう。そういえば、先日TMZに出た記事、Man Sues for $1.5 MILLION ... They Only Gave Me One Napkinは、世界各地で話題になりました。ステレオタイプ的なアメリカ人の感覚に、日本人ならここは、美味しんぼ 9(雁屋哲作、小学館)の「見ろ!! 手が汚れてしまった!!」を連想するところでしょうか。

さて、わざわざ食べかけにしてから「投げ入れ」に行ったのは、ごみ箱だと思って捨てたと言いはるためだったのでしょうか、それとも、全部を入れるのはもったいなく感じて、手をつけてしまったのでしょうか。ですが、一部であっても、もったいないことには大差ありません。カレーは原価率が低いとも思われがちですが、業務用コーヒー業者が書いたカフェオープンマニュアル19を見ると、喫茶店メニューのカレーは、ほかのメニューよりも率が高いです。また、読むとがっかりする内容なのですが、なるほど事典には、原価安いはずのカレー、でもカレー専門チェーン店なぜ高い?という記事があります。カレーの安いお店ほど、原価率は相当なものだろうと感じます。

カレーが安いといえば、こちらは東日暮里ではなく西日暮里ですが、先月にロケットニュース24に出た記事、【下町グルメ】運がよければ190円でカレーを食べられる! 激安の「はってん食堂」が穴場すぎる件にはおどろきました。はずれてもあと100円高くなるだけですので、運だめしをかねて行ってみたいと思うのですが、なかなか機会がありません。

一方で、あったらぜひ行ってみたい激安カレーとしては、週刊アスキー 11月5日号(KADOKAWA)の、秋葉原のどことまでは書いてありませんでしたが、あのお話があります。まずは店名で笑うところですが、シンプルなカレーライスなら1食120円からとなりますので、掲載誌1冊の値段で約3皿の設定です。ですが、客の多くが他人の目を気にして、高いトッピングをつけてしまうときて、この心理のつき方にまた笑わされます。私がくらす近所にこんなお店があったら、とても助かりそうですが、自分ならトッピングなしで平気で通えるかと想像すると、少し自信がゆらぎます。

「アレフ」への潜入をねらうオウムファン

きょう、東スポWebに、“オウムおっかけ”理解不能な頭の中身という記事が出ました。平田信裁判の傍聴のために上京中の、ある「オウマー」を取りあげたものです。

取材対象となった女性の写真は、首から下だけで、一応ぼかしてあります。記事の理解に資する写真とはあまり感じませんが、キャプションにある、「一見すると普通の女性でオウムファンにはまったく見えない」を表現したかったのでしょうか。ですが、一見してオウムファンとわかるような姿かっこうがあるとも想像しにくいです。サマナ服にヘッドギアで、それも本物では信者に見えそうですので、手づくり感のあるコスプレ風にしあげてあれば、ファンらしく見えるでしょうか。

「Sさんは、もう一つの派生団体「アレフ」への潜入もたくらんでいる。」とあり、まずはAlephが派生団体あつかいであるところにおどろきました。「アレフ」は、オウム真理教がその名称を破産管財人から禁止されたために改称したものですので、派生ではなく、こちらが本流でしょう。

そして、潜入を目ざすことにもおどろき、そして心配になりました。「私が『アーちゃん』と呼んでる麻原(彰晃教祖=本名松本智津夫)の三女のアーチャリーがお気に入り」というこの人ですが、「“愛”が高まり過ぎて、関東某所の三女の自宅を1日9時間も眺めることが日課になりつつあるとか。」とありますので、そのながめ方によっては、先方に顔が割れてしまい、ふつうの「潜入」はもうむずかしいかもしれません。また、本人は取りこまれない自信があるようですし、内側への興味も理解できますが、それでもミイラとりになる可能性はあります。オウムへの擁護的な主張で有名になった島田裕巳は、学生時代にヤマギシ会に調査に行ったところ、はまっていき出てきたのは7か月後だったといいます。また、もっと強烈なのは、2年前に和訳が出て心理学者の間でも話題になった、ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観(D.L. エヴェレット著、みすず書房)です。著者であるプロテスタントの宣教師が、アマゾン奥地に伝道に入ったつもりが、現地の文化にゆさぶられるうちに、ついには棄教にいたってしまったのでした。

自閉症・ADHDなどにつながる父親側の要因

きょう、AFPBB NEWSに、子どもの精神疾患リスク、高齢の父親で高まる 研究という記事が出ました。

「米国医師会(American Medical Association、AMA)の26日の精神医学専門誌「JAMAサイキアトリー(JAMA Psychiatry)」に研究論文が掲載された。」とありますが、26日に掲載号が出版されたわけではなく、この論文のオンライン版の提供開始が今月26日付だったということです。Paternal Age at Childbearing and Offspring Psychiatric and Academic Morbidityです。

記事タイトルにある「精神疾患」という表現が引っかかる方もいると思います。分析対象となった問題のうち、academic morbidityである後ろの二つは、疾患とは呼べません。その前の二つも、精神疾患そのものとは、やや次元が異なるでしょう。また、発達障害である自閉症やADHDを「疾患」と呼ぶのも、不適切だと感じる方もいると思います。自閉症を「病気」としたテレビ番組が、誤解が丸わかりのイラストを添えたこともあって、自閉症協会の「対応」を受けたことは記憶に新しいでしょう。さらに進めると、統合失調症も躁うつ病も、そもそも精神病、精神疾患など実在しないとする極論もあります。こころの科学 171号(日本評論社)には、ランパー・スプリッター論争の、単一精神病論さえも突きぬけたランパー側に、そういった反精神医学を位置づけた論考があります。

「研究によると、父親が20~24歳の時点で生まれた子どもに比べ、父親が45歳以上になってから生まれた子どもは、双極性障害の可能性が25倍高かった。また、高齢の父親から生まれた子どもは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の可能性が13倍高かった。」、高くなることは以前から報告がありましたが、これはインパクトのある結果です。ですが、誤解をまねきそうなところもあります。

ひとつは、これは子どもの問題の有無と親の年齢との単純な対応関係ではないことです。そのやり方でプロットすると、それほどの効果はあらわれません。同じ親の子どもだとした場合の値です。もちろん、ここまで歳のはなれた、サザエさん的な兄弟姉妹はめずらしいですので、統計的な推定値です。

また、ハザード比の計算のため、この2時点の比較として結果が示されましたが、あくまで2時点での大小関係であって、加齢と対応する単調増加であるとは限りません。この記事でいう「低いIQスコア、学校を留年する可能性」については、あまり若すぎてもグラフが上向く傾向が見てとれます。ですので、「研究では、子どもがなんらかの問題を持つ可能性が父親の年齢とともに一定して上昇し、年齢のしきい値がないことも示唆された。」とあるのは、すべてに当てはまるわけではありません。

ハザード比の信頼区間にも、注意がいります。たとえば、双極性障害でのCIは12.12-50.31で、相当にばらつきます。そこを忘れて、数字が固定的なものとしてひとり歩きしそうなのが心配です。スウェーデンでの結果なのも忘れて、人類普遍の倍率のようにとる人も出るでしょう。ひとつ目に挙げた誤解のために、まったく別々の子どもについて、父親の年齢だけから、誰が誰の何倍などと決めつける人も出るかもしれません。以前に社会的手ぬきの記事で触れた「メラビアンの法則」のようにはなってほしくないと思います。

保健福祉センター地域保健福祉課の表彰時期

きょう、福岡女学院大学心理学科Todayに、福岡女学院大学心理学科協力の子育て支援が高島市長から表彰されました!という記事が出ました。まずは、表彰おめでとうございます。

ですが、表彰されたのは誰でしょうか。タイトルや写真のキャプション、記事の1文目からは、「みなみん」という子育て支援の活動が、市職員に高く評価され、市長から表彰を受けたように読めます。ですが、表彰状では、「南区保健福祉センター 地域保健福祉課」が受けたことになっています。役所の中の互選で、役所の部課を表彰したようです。そして、市の位置づけは、記事で紹介されたきのうの読売新聞記事の切りぬきを見ると、よくわからなくなります。導入部には、「区役所に訴えた一人の母親の思いに市が応え、昨年5月に設置」とありますので、市が設置者であると考えられますが、記事の中ほどでは、「同区の福岡女学院大に臨床心理士を紹介してもらったり、学生ボランティアを派遣してもらったりして、全面的に支援」と、市ではないところによるものを、市も外から応援したような書き方です。一方で、今回表彰された地域保健福祉課による文書、発達が気になる子どもと親のためのサロンを開設しますを見ると、「南区において,同じ悩みを持つ保護者同士が気軽に集い,専門スタッフによる相談や情報交換ができるが場(サロン)“みなみん”を開設します」とあって、この主語は市の側のはずです。なお、福岡女学院大の関与については、「サロンの運営あたっては,福岡女学院大学や関係機関の協力を得て学識経験者等の助言・支援を受けながら実施します。」とあります。

この心理学科Todayの記事で気になったのは、表彰の時期です。タイトルを見ると、速報のように感じますが、表彰状の日付は昨年12月27日ですので、2か月も前です。きのうの読売の記事で表彰を思い出し、表彰状を持っての写真撮影をして、この記事にしたのでしょうか。あるいは、市長が表彰状をわたしたのはつい最近でも、表彰状もお役所の書類ですので、お役所的な事情で日付はこう書かなければいけなかったのでしょうか。そういえば、ラクに書けて通る企画書 77のルール(富田眞司著、すばる舎)に、書面に入れる日付の重要な意味の説明がありました。

記事では、ここが発達障害がらみの集まり、表彰状の表現でいう「発達が気になる子どもと親のためのサロン」であることには、言及されません。「地域の子育て支援」「行政と大学の協力関係のよいモデル」「心理学科の学生たちの学びの場」といった、大学が外部とつながる活動として位置づけます。ですが、学外者からは、発達障害がらみのところに大きな価値を感じるでしょう。読売の切りぬき記事の最後にある事例も印象的です。宮古毎日新聞のウェブサイトにきょう出た記事、生き方の基準が確立していない現代人は、全体的に意味のつかみにくい論考で、「夫婦の虐待、子どもの虐待、自殺、ひきこもり、不登校、いじめ等の問題も、人が心理的欲求が十分に満たされておれば、その人は幸福であると言えます。」とあるのも理解しにくいですが、読売の事例では、育児サークルの満たされない体験から、親がいったん引きこもってしまい、不幸だったと思います。そして、この「みなみん」に救われたようです。