生駒 忍

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自閉症・ADHDなどにつながる父親側の要因

きょう、AFPBB NEWSに、子どもの精神疾患リスク、高齢の父親で高まる 研究という記事が出ました。

「米国医師会(American Medical Association、AMA)の26日の精神医学専門誌「JAMAサイキアトリー(JAMA Psychiatry)」に研究論文が掲載された。」とありますが、26日に掲載号が出版されたわけではなく、この論文のオンライン版の提供開始が今月26日付だったということです。Paternal Age at Childbearing and Offspring Psychiatric and Academic Morbidityです。

記事タイトルにある「精神疾患」という表現が引っかかる方もいると思います。分析対象となった問題のうち、academic morbidityである後ろの二つは、疾患とは呼べません。その前の二つも、精神疾患そのものとは、やや次元が異なるでしょう。また、発達障害である自閉症やADHDを「疾患」と呼ぶのも、不適切だと感じる方もいると思います。自閉症を「病気」としたテレビ番組が、誤解が丸わかりのイラストを添えたこともあって、自閉症協会の「対応」を受けたことは記憶に新しいでしょう。さらに進めると、統合失調症も躁うつ病も、そもそも精神病、精神疾患など実在しないとする極論もあります。こころの科学 171号(日本評論社)には、ランパー・スプリッター論争の、単一精神病論さえも突きぬけたランパー側に、そういった反精神医学を位置づけた論考があります。

「研究によると、父親が20~24歳の時点で生まれた子どもに比べ、父親が45歳以上になってから生まれた子どもは、双極性障害の可能性が25倍高かった。また、高齢の父親から生まれた子どもは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の可能性が13倍高かった。」、高くなることは以前から報告がありましたが、これはインパクトのある結果です。ですが、誤解をまねきそうなところもあります。

ひとつは、これは子どもの問題の有無と親の年齢との単純な対応関係ではないことです。そのやり方でプロットすると、それほどの効果はあらわれません。同じ親の子どもだとした場合の値です。もちろん、ここまで歳のはなれた、サザエさん的な兄弟姉妹はめずらしいですので、統計的な推定値です。

また、ハザード比の計算のため、この2時点の比較として結果が示されましたが、あくまで2時点での大小関係であって、加齢と対応する単調増加であるとは限りません。この記事でいう「低いIQスコア、学校を留年する可能性」については、あまり若すぎてもグラフが上向く傾向が見てとれます。ですので、「研究では、子どもがなんらかの問題を持つ可能性が父親の年齢とともに一定して上昇し、年齢のしきい値がないことも示唆された。」とあるのは、すべてに当てはまるわけではありません。

ハザード比の信頼区間にも、注意がいります。たとえば、双極性障害でのCIは12.12-50.31で、相当にばらつきます。そこを忘れて、数字が固定的なものとしてひとり歩きしそうなのが心配です。スウェーデンでの結果なのも忘れて、人類普遍の倍率のようにとる人も出るでしょう。ひとつ目に挙げた誤解のために、まったく別々の子どもについて、父親の年齢だけから、誰が誰の何倍などと決めつける人も出るかもしれません。以前に社会的手ぬきの記事で触れた「メラビアンの法則」のようにはなってほしくないと思います。