きょう、ヨミドクターに、「社会的手抜き」なぜ起きる?という記事が出ました。社会的手ぬきをテーマに、東北楽天、ブレスト、はたらかないアリといった話題をならべた、親しみやすい読みものです。
楽天球団の例は、最初からいきなり社会的手ぬきの応用的な当てはめになっています。一般には、ほかの人といっしょの状況と、一人だけの状況とで比較して、個人あたりの出力で前者が後者を下回るかたちで示される現象です。その原因になる成分が、田中将大の先発といっしょかどうかにもある程度対応すると解釈できることから、広い意味で社会的手ぬきとしてあつかったのでしょう。なお、田中先発の次の試合と、次の次の試合との勝敗の比のずれで、現象の存在をうかがわせていますが、無理筋なのを承知で、検定をかけてみました。結果は、ふつうのカイ二乗検定でp=.102、イェーツ修正ありのカイ二乗検定でp=.173、フィッシャーの直接確率計算の両側確率もp=.173、いずれにしても有意でないことになりました。
ブレインストーミングではなく「ブレーン・ストーミング」の段落をはさんで、最後ははたらかないアリのお話です。ここで使われた知見は、「北海道大准教授(動物行動学)の長谷川英祐さんが働きアリの集団を観察したところ、働いているのは3割で、長期的に見ても2、3割はほとんど働いていなかった。」というものです。はたらかない割合は、ほかにも2割だったり、1割だったりと、まちまちで出まわる話題ですが、研究によって報告された割合が異なることが、その根本にあります。同じ研究者のグループのものでも、たとえば日経電子版の記事、働かない「働きアリ」の正体は 常に1割が出遅れ 北大チーム、新たな性質発見には、「労働の回数が1割以下(7回以下)と、ほとんど働かないアリが10%いた。労働の回数が4割以上(28回以上)で特に熱心に働くアリは10%以下だった。」とあります。「ほとんど」はたらかないと判断する基準、行動カウントのルール、調査の対象や時期などで、この数値がある程度変わる、そして変えられることは、心理学者ならすぐわかります。ですが、以前に2・6・2の法則の記事も書きましたが、あのようにきちんと数値で決まったもののほうが、世間では科学的で有用な知見に見えるのでしょう。OKWaveにきのう出た質問記事、危機感とモチベーションの関係についても、そのあたりをうかがわせます。ですので、たとえば「メラビアンの法則」は、ポップ心理学の本では定番で、最近では10年後の自分のために 今すぐ始めたい36の習慣(松富かおり著、すばる舎)が、「最近では、「メラビアンの実験」というものが注目されています。」と書きましたが、最近に限らず、心理学の教科書や学術書にはまず見かけません。ですが、「マジカルナンバー7±2」は、おかしな解釈であつかった心理学のテキストもかなりあります。治療外要因が4割などとする、心理療法の効果の割合のお話は、わが国では昨年に問題が広く知られるようになりましたので、消えるのは時間の問題でしょう。まだ知らない方は、丹野義彦・東京大学教授によるLambert(1992) 心理療法の効果の割合 批判を、赤字のところだけでもよいので、ご覧ください。
杉森純の署名の後に、社会的手ぬきを説明するかこみがあります。そこの例示では、「祭りのみこし担ぎが典型で、実際に担いでいる人は全体の何割かに過ぎない。」とあります。こちらは数字を出さずに、「何割か」です。
みこしのたとえで、zakzakにきのう出た記事、舛添氏の強さのワケと細川氏が支持を一気に伸ばせない理由 都知事選を思い出しました。失速ぎみの陶芸家ですが、政治評論家の浅川博忠によれば、「細川陣営は雑居ビル状態で、旧日本新党の面々が同窓会をやっているような雰囲気で、支援態勢もまとまりがない」そうです。みこしとして、文字どおりかつぎ出しておいて、ろくにかつげていないわけです。週刊朝日 2月14日号(朝日新聞出版)によれば、共産党幹部が細川側の支持グループを勧誘して引きはがしているようですし、ずいぶんふんどしがゆるんでいます。今回も裏にかくれている小沢一郎の「みこしは軽くてパーがいい」は、仁義なき戦い(深作欣二監督)の「みこしが勝手に歩けるいうなら歩いてみいや」と何かもうひとつ足して「三大みこし名言」と呼びたいくらいの名言ですが、都知事選に関しては、週刊文春 1月23日号(文藝春秋)で適菜収が、細川を「神輿は軽くてパーはダメ」と斬りました。それでも、あれから20年がたって、またもかつぐ価値があるとされたところは、興味深いと思います。アイドル新党(原宏一作、徳間書店)では、久々に選挙にかかわることになった「照さん」が、政治家はみこしにかつがれるのも才能だと言います。