生駒 忍

記事一覧

スマホの身体依存と鶏肉料理での不快体験

きょう、OKWaveに、スマホ依存・吐き気という質問記事が出ました。

心因性の吐き気に苦しみ、それをまぎらわすのには読書もゲームも適さず、スマートフォンにたよっているという人からの相談です。横になってずっとスマホ漬けで、むしろこれが逆効果なのではないかと考え、しかしよい効果を失う不安のため、はなれる決断もできないとのことです。タイトルにはスマホ依存とありますが、一般的な「依存」のイメージとは、やや異なるかもしれません。同じくOKWaveにきょう出た、外食中にスマホゲームを始める友人のほうが、いかにも依存という印象です。こういうプロセス依存は、日常的な感覚ともつながりやすく、表面的にはわかりやすい一方で、サンデー毎日 10月12日号(毎日新聞社)で牧太郎が、依存症を「「分かっちゃいるけどやめられない」程度の「気分の病」」と軽視し、啓発を陰謀論につなげてしまうような問題の一因でもあるでしょう。

今回のものは、苦しい身体症状をしのぐために手を出し、それが長期的にはその症状を強めていて、悪循環になっているとしたら、アルコール依存などに近いともいえます。スマートフォンと健康問題との関連は、「スマホ猫背」と「スマホうつ」の記事などでも取りあげましたが、吐き気でそのようなことがあるのか、ちょっとわかりません。ですので、やめてよくなるかどうかは、試してみないとというところではあります。アルコールなどの物質依存では特に、ぴたりとやめることのみが、回復への道です。ですが、離脱の苦しみをともないますし、日常にある対象ほどスリップの機会もあり、かんたんなことではありません。吐き気ぐらいでと思う人もいるかもしれませんが、味覚嫌悪条件づけの知見からもわかるように、その力は相当なものです。ヨーガンレールの社員食堂(高橋みどり著、PHP研究所)に、ヨーガン・レールが社員食堂を、あのベジタリアンメニューに徹するようにさせたのは、「以前の昼食時、3店を巡っていたころに、ある1軒の店でとても嫌な経験をしました。」という、鶏肉でのことがきっかけだとあったのを思い出しました。きょう、そのレールの訃報が入りました。ご冥福をいのります。

人間関係への違和感と大学のいじめへの介入

きょう、OKWaveに、「人間関係」がどうの、ってうざくない?という質問記事が出ました。

「人間関係」になやんでいるという人々を見ての、自分の違和感を5点にわけて示し、反応を求めています。ですが、オリジナリティあふれる主張というよりは、ひと目見てわかるように、嫌われる勇気(岸見一郎・古賀史健著、ダイヤモンド社)に触発されたものです。ツイッターとフェイスブックそしてホリエモンの時代は終わった(梅崎健理著、講談社)のSNS論にも、「人から認められようと必死になり過ぎたり、逆に嫌われることを怖がり過ぎたら、間違いなく行き詰まってしまう。」とあります。これだけ伝統のしがらみが解体されて、「砂のような個人」の時代が来てもなお、孤独な心(落合良行著、サイエンス社)でいう「明るい孤独感」に満ちた明るい社会は遠いようです。世界中をフラットかつクールにつなぐサイバースペースでは、結局は日常の人間関係とつながったウェットな場にこそ、人が集まるようになりました。先ほどのうめけん本、ツイッターとフェイスブックそしてホリエモンの時代は終わったには、「ツイッター、フェイスブック、LINEと、形を変えながら浸透しているSNS……しかし重要なポイントは一つで、それは「すべてが人間関係に集約される」ということだ。」とあります。

4点目までは、1文目はおおむね正論でしょう。もちろん、現実はそう美しくはありません。たとえば3点目では、「強い気持ちを以て、」「外部の支援者の支援を仰げば」と続きますが、そこまではできたとしても、その先はわかりません。同じくOKWaveにきょう出た質問記事、議員さんにブログで晒しものにされています・・・を思い出しました。大学でのいじめ、モンスターペアレント、議員の介入と、外からはリアリティのないお話と思われそうな相談です。

5点目、心理学の世界ではそもそも、「人間関係」はあまり使われず、以前からずっと「対人関係」です。ほかに「対物関係」や「対動物関係」などがあって対比したいわけではないのですが、interpersonal relationsの意訳として、定着したのだと思います。また、ヒューマン・リレーションズ、人間関係運動とまぎらわしくては困るということもあったのでしょう。なお、それとは別の流派の団体に、福岡人間関係研究会があります。公式ウェブサイトは、3か月以上更新が止まって見えますが、そこの方々と私とは人間関係がないので、どういう状況なのかはわかりません。

関係がないで思い出したのが、リアルライブにきょう出た記事、35歳の無職熟女が生活保護費で男子中学生を買春です。こちらは、関係がなくなることをおそれて、LINEでおどしたことから発覚しました。生活保護費「三重受給」なぜ可能? 「不正できる仕組みなくせ!」と怒りの声生活保護受けながらネットで1000万円超荒稼ぎ 逮捕の男は本当に「記憶喪失」なのか、そして美玲ちゃん殺害の君野康弘どんな男?生活保護受け酒浸り...裸で街中ふらふらと、いずれもJ-CASTの記事ですが、生活保護受給者によるさまざまな犯罪が続く中で、こちらは「あってはならない関係」の性犯罪です。神戸の事件も、容疑者に「幼児的破壊行為が残っている」 精神科医・日向野氏 神戸女児遺棄事件は、病的な性欲がらみである可能性をほのめかしています。これらが、事件と関係のない、欲をおさえてくらす生活保護受給者に対する偏見につながるのが心配です。これは、「強い気持ちを以て、」「外部の支援者の支援を仰げば」解消できるようなものではないのです。

さいころをふる心理実験と「はてな村奇譚」

きょう、Yahoo!知恵袋に、大学で学ぶ心理学はどんなこと、どんな勉強をするんですか? 大学は行きたい学部...という質問記事が出ました。

心理学に興味を持ってもらえるのは、とてもうれしいことです。すでに、心理学に統計が求められそうなことも伝わっているようで、数学をがんばる意識があるのも、ありがたいです。

「私は心理学は名前的に人の感情や性格について研究するのかな、と思ってましたが、調べてたら、なんだかサイコロ?をふって次は何が出るかとか…?えって思いました。」とのことです。「名前的に」サイコロジーなのでさいころ、という連想ではないはずですが、心理学について調べていて、何かの心理実験で、そういうものが登場したのでしょうか。むずかしい学術書はともかくとしても、ことし出たものではたとえば、話のおもしろい人、へたな人の心理法則(内藤誼人著、PHP研究所)に、「ミネソタ大学のジョセフ・レッデン博士は、70人の学生を集めてサイコロゲームをしてもらった。」とあります。私は、確率的に有利な選択肢を選ばない人が4割近く出る、反直観的な確率的判断課題かと思ったのですが、著者はそこの議論はせずに、こまかいことはいいからシンプルにしようと、相対的剥奪の記事の最後に触れたような結論へと進めます。不勉強な私は、この研究を知らず、そこで論文を探してみたのですが、うまく見つけられませんでした。もちろん、一見するとそれらしく見えるものとして、Unpacking unpacking: Greater detail can reduce perceived likelihoodの実験1がありますが、こちらはイェール大学のS. Frederickとの共著で、ゲームをさせた役割が筆頭著者だけにあったのかどうかは、書かれた範囲では不明ですし、61%という割合はあっても3択での選択率ではありませんし、3条件のうち3番目以外は内容が異なり、同じ実験だとしたら中学生レベルの誤訳だと考えなければいけませんので、著者に失礼でしょう。

また、その半年後、つまり最近出たばかりの良い習慣悪い習慣 世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法(J. ディーン著、東洋経済新報社)には、「ダイスセラピー」が紹介されています。精神科医が、自分の行動を、用意した選択肢からさいころで決めることで、退屈、終わりなき日常どころか、自我からも解放されるほどになったとあります。ですが、このアレアで、コンセプチュアルアートのような生き方は、すぐ後に明言されているように、フィクションです。こちらも不勉強で、私は読んだことがないのですが、The Dice Man(L. Rheinehart作、HarperCollins)の主人公のことなのだそうです。

ただし、さいころの目は、人間の意思と無関係とは限りません。一定の訓練で、ねらった目を出せるようになることが、早稲田大学での研究で判明しています。実は私も発表に立ちあった、確率事象に対する運動制御の検討です。著者の片方は有名な心理学者で、また、謝辞には「本論分の執筆にあたり、ご助言いただいた、早稲田大学人間科学部の井出野尚先生に厚く御礼申し上げます。」とあります。制御幻想だと思われがちなものが幻想ではなくなる可能性を示す知見で、信じられない人は、実験参加者8名で有意差を出したシンプルな実験ですので、ぜひ追試に取りくんでください。

さて、心理学に限らず、外から期待されるイメージが、その学問の中の見方や考え方とずれることは、しばしばあることです。以前に、子ども電話相談室の記事で、心理学よりも文学になじむこころへの関心について書きましたが、大学へ入ってみたけれどどうしてもなじめないままの4年間では、おたがいに不幸ですので、よく見てから選んでください。きちんと見ずに、頭の中でつくったイメージばかりで入ると、興味ゼロどころか、マイナスへ落ちてきらわれかねないので、こちらとしても困惑します。

それで思い出したのが、はてな匿名ダイアリーにきのう出た記事、はてな村奇譚ウザすぎです。興味のなさではなく、嫌悪感の表明で、かなり共感も集めていますが、「5回位で終わるかと思ったらもう19までやっててほんまウザい。」という理解が、やや気になりました。すでに3作目、はてな村奇譚3でもう、「前回、前々回の2回で終わる話ではなく、全50ページくらいになる予定です。 」と公表しているのですが、そこは見ていなかったのでしょうか。あるいは、きちんと見ずに、5ページと誤読したのでしょうか。それとも、自分にはよい作品とは思えないので、スターもページビューもすぐ減って、あの人は5回もすれば投げだすにちがいないと読んでいたのでしょうか。

光通信の経費と言い負かすコミュニケーション

きょう、OKWaveに、光通信の経費節約方法についてという質問記事が出ました。

「光通信」と聞いて、私はつい、タイ代理出産事件で注目を集めたところを、頭にうかべてしまいました。ネガティブな意味あいのものへの、認知的なバイアスでしょうか。あいうえおみせ(安野光雅作、福音館書店)で、「ねずみとり」が文字どおりの意味の絵だったので、ほっとしたことを思い出しました。

自宅のことのようなのに「経費」で書いているのも、やや気になりますが、「おられましたら教えていただくようにお願いいたします。」も、ふしぎな表現です。私は若くないためでしょうか、「おられます」も落ちつきませんが、この書き方ですと、話者本人に対して教えてほしい感じが、あまりしません。「教えていただけますよう」にすると、改善されそうですが、どうでしょうか。敬語の感覚のむずかしさを感じると、一転して、まだまだ自分は若造だと感じてしまいます。

敬語の感覚で思い出したのが、誠 Biz.IDにきょう出た記事、「教えてもらったけど、できません」です。結論はこれでよさそうですし、よくない例は、中の「やった」も、以前に書いた不適切発言の抑制法の記事で触れたお話とも関連しますが、不適切でしょう。ですが、「「教わってません」「聞いてません」なども、相手を否定することになるのでNG」、これは教えても意味がないような気がします。「教えてもらったけど、できません」の場面で、水かけ論へとすりかえて引きわけに持ちこむ戦術を使う人も、いるとは思います。就活のコノヤロー ネット就活の限界。その先は?(石渡嶺司著、光文社)によれば、2010年代の勉強しない学生にとって、コミュニケーションとはSNSでののしったり、言い負かしたりするものなのだそうです。そういう人は、NGだと言われてやめることは、なさそうに思います。

消費者問題の苦しみと体重を気にしないモデル

きょう、OKWaveに、寝てる時以外は、頭から離れないという質問記事が出ました。

タイトルからすると、常に頭からはなれずに苦しんでいるわけではなく、おそらく1日の3分の1くらいは、はなれているということになります。ですが、常盤大学講演会の記事でも名前を出したSFAの視点で、この例外から介入するのは、やりにくそうです。また、本質的な問題は、頭にずっとあること自体ではないでしょう。さらにいえば、後で思い出せないだけで、眠っている間でも、毎晩何度も夢を見ている中で、頭に浮かぶこともありそうです。それが強い悪夢となって目がさめてしまう展開にまでは、届いていないのでしょう。そういえば、眠りと夢のメカニズム なぜ夢を見るのか? 睡眠中に脳が育つのか?(堀忠雄著、ソフトバンククリエイティブ)は、「おそろしい夢が始まり、間違いなく悪夢へと変化していくことに気がついたら、夢のシナリオに介入し、楽しい夢に書きかえてしまおうという」研究を紹介していました。一方で、smart 2014年10月号(宝島社)は、悪夢を見ることによい側面がある可能性にも触れています。

さて、さっそく回答がついて、それに対する返答が、特徴的です。有利と思われる指摘よりも、半数あるという不利と思われる指摘のほうに、バイアスをかけているようです。防衛的悲観主義でしょうか。そうでしたら、本人のためにはそう悪い状態ではありませんので、安易に気持ちを変えさせようとはしなくてよさそうです。ですが、まわりは巻きこまれまでいかなくても、苦しいものです。ももクロ流 5人へ伝えたこと 5人から教わったこと(川上アキラ著、日経BP社)で高城れにが、「今は人の話も全然気にならないし、いいことしか聞かない(笑)。」と言い、ST MODELS SUPER BODY BOOK(集英社)で岡本杏理が、「体重を気にすると暗い気持ちになるだけだから、今は気にしない(笑)。」と言うくらいのほうが、別の意味で心配ではあっても、まわりは楽なのです。

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