生駒 忍

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栄養士が国家資格かどうかと旅館でのお茶

きょう、マイナビウーマンに、こんな資格、持ってないでしょう? 女性たちが自信を持って自慢できるレアな資格やスキル12!という記事が出ました。

「栄養士。国家資格なので、認可された学校に通わなければ取れないから」、これはあやしげです。「なので」がつながっていないように感じられます。また、昨年10月の調査ですので、川上伸一郎の騒動よりも前ですが、国家資格持ちに見せかけるなんてと、あきれた人もいるかもしれません。いちばんやさしい管理栄養士国家試験合格講座 最新出題基準対応(渡辺睦行著、秀和システム)には、「管理栄養士は栄養系では唯一の国家資格」「栄養士は都道府県知事の免許を受ける公的資格、管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受ける国家資格」とありますし、管理栄養士のキャリアデザイン(田中浩子・田中幸恵編、化学同人)は、「国家資格である管理栄養士はもちろんのこと、栄養士と管理栄養士の定義は法律によって定められています。」として、栄養士は国家資格ではないことを表現しています。一方で、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」(第2回)配付資料は、栄養士も国家資格に入れました。文部科学省のお墨つきだと、うれしくなっても、後注を見て、ずっこけるところまでが作法です。

「茶道の資格を持っているのですが、旅館などでお茶を入れるときに作法がちゃんとわかる」、わかりますでしょうか。「入れる」の主語は、「持っている」「わかる」と同じだと思われ、自分で作法をわかってできるということだとわかるのですが、「旅館などで」とつけた理由が、よくわかりません。どこでもよさそうなものですが、会社でも家でも誰かにしてもらえる立場で、旅先でもないと自分ではというほのめかしでしょうか。ふだんはお茶は飲まず、旅館などではあるものをいただくという意味かもしれませんが、茶道を学んでおいて、それも奇妙です。あるいは、「お茶」と呼ぶ程度のものは、旅館などであるものをいただくときにしかさわらないと言いたいのかもしれません。

「心理士資格。飲み会で『僕の心を呼んで』とむちゃぶりされる」、ありそうでしょうか。具体的な資格名を聞きたかった人もいるかもしれませんが、「心理士資格」とだけ呼んだところに、この人の考えを読んであげましょう。

「資格やスキル、というのは、その人の能力を見るひとつの目安になります。」、そのとおりです。心理学検定 一問一答問題集[A領域編](日本心理学諸学会連合心理学検定局編、実務教育出版)のコラム1でも取りあげました。

心理フラワーカウンセラーと准看の最低年収

きょう、アゴラに、合格率100%の資格を取得する際の留意ポイントは?という記事が出ました。

「事前になんの知識や経験もない人でも必ず取得できる資格」、「合格率100%の資格」の例が、「ハウスクリーニング技能士、ファイナンシャル・リスクマネジャー、着付インストラクター、台湾式リフレクソロジスト、認定ウエディングスペシャリスト、心理フラワーカウンセラー、コーヒーコーディネーター、紅茶コーディネーター、雑貨カフェクリエイター、ベビーマッサージインストラクターなど」とあります。コーヒーコーディネーターと紅茶コーディネーターとは、どちらか片方を挙げてもよかったように思いますが、さまざまなものがならびます。まったく知らない資格ばかりですが、名前が気になったので「心理フラワーカウンセラー」について調べてみると、認定までに最低145,000円がかかるシステムのようです。「「講習→試験→認定」を経て資格を取得可能」にさえもあてはまらず、試験もありませんが、そこは本質的な問題ではありません。私が持っている公的資格には、講習のみのものがありますが、講習会として常識的なレベルの費用ですし、欠員で業務が止まる事故は聞いたことがありませんが、必置資格です。

もちろん、合格率が高い資格には価値がないとは、必ずしも言えません。何年もの実務経験や専門教育が受験資格として必要なものは、試験そのものの合格率は高くても、手がとどきません。実務経験や専門教育の前の時点では「事前になんの知識や経験もない人」だったかもしれませんが、この記事であつかいたいものとは、まったく質が異なるでしょう。案の定、コメント欄には、准看護師を挙げて、反証したつもりのような人が登場しました。しかも、その人が挙げた、「最低でも年収400万円くらい」は、事実に反します。看護師比較.comの都道府県別平均年収データ(常勤)を見れば、平均でさえ400万を切ることがめずらしくないことがわかります。また、看護roo!で、准看護師の給与を検索すると、400万どころか、夜勤ありの常勤でも200万台の人さえ見つかります。どこでも求人があるのに、わざわざ地方ではたらくような奇特な人など無視するべきだという考えなのでしょうか。

准看に限りませんが、医療・看護分野の特異な売り手市場は、よく知られたところです。アゴラでアクセスを集めている記事、なぜ人手不足で実質賃金が下がるのかの棒グラフが、とてもわかりやすいと思います。ですが、取りにくい資格が必須になっているわけではないサービス業の高さのほうが、より特異だともいえそうです。「牛丼屋のアルバイトは時給を上げても集まらず、ホワイトカラーは余ったまま」で、労働市場におけるミスマッチの問題です。そういえば、スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学(吉本佳生著、筑摩書房)は、選ばなければ誰にでも仕事があることを論証しましたが、ミスマッチはその選ぶことと関連します。その図40の右下に入る人は、比較優位の威力が使えないのです。

労務管理3級テキストの当初からのまちがい

あすは、平成25年度後期ビジネス・キャリア検定試験の試験日です。大雪でどうなるか、心配だった方も多いと思いますが、予定どおり開催される予定です。

私が昨年、その労務管理3級をとったことは、以前の記事で書いたとおりです。今回も多くの方に追いつかれ、追いこされていくと思いますし、それでまったくかまいません。多少の社会人経験があれば、常識問題とまではいえなくても、難易度はさほどでないでしょう。ご健闘をいのります。

ですが、そこを受験する方の多くは、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 労務管理3級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)で試験対策をすすめてきたと思いますが、絶対評価としては、すぐれたテキストとはいえません。誤字脱字や表記の不統一はもちろん、ほかのテキストからのリライトだと明言された節があったり、学習テキストとしての体系化が甘かったりといったところが気になった方もいるでしょう。また、データが古くなりつつあるだけでなく、近年の法改正が反映されていないのは、書籍というかたちである以上は、ある程度やむをえないところですが、学習の上で注意を要することになります。しかも、時の流れとは無関係に、おそらく公刊の当初からまちがったままの記述も見うけられます。

そこで、明らかにまちがいであるところを、いくつか挙げておきたいと思います。なお、私の手もとにあるのは第6刷ですので、ほかのものでは異なる可能性があります。また、私はこれに限らず、資格試験対策のために買ったテキスト類はいつも、適当につまみ読みして、読みのこしがあるままで試験を受けてしまいますので、すべてを読みとおしてまちがいをひろったわけではありません。

・18ページで、「行動が立ち上がるには動因と誘引の組合せが必要」「誘引とは、ヒトの外にある欲しい気持ちを満たすもの」「賃金等の誘引」とありますが、「誘引」とあるのはいずれも、正しくは「誘因」です。リライト元のビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発3級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)にあるまちがいを、書きなおさずにそのまま持ってきたのでしょう。ちなみに、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2級(中央職業能力開発協会編、社会保険研究所)には、正しく「誘因」で書かれています。

・139ページで、「人口15万人以上の市と特別市には人事委員会または公平委員会が」とありますが、「特別市」ではなく「特別区」です。地方公務員法7条2項です。

・169ページで、図表5-3-5の中の矢印のうち、一番下にあるものは向きが逆で、労働局長の助言・指導は、紛争調整委員会のあっせんより先です。厚生労働省と都道府県労働局によるパンフレット、労働者、事業主のみなさまへ 職場のトラブル解決サポートしますがわかりやすいでしょう。

・184ページで、「高齢化社会(高齢化率が7%)から高齢社会(同14%)に」とありますが、少なくとも一般的な定義では、7%ちょうどは高齢化社会ではありませんし、14%ちょうどではぎりぎり高齢化社会で、高齢社会ではありません。よく引用される、平成18年版 高齢社会白書(ぎょうせい)のコラム1「「高齢社会」「高齢化社会」とは?」をご覧ください。

・223ページで、図表6-3-6のタイトルが「雇用形態別の雇用者数」となっていますが、数値を見ればわかるように、雇用者数ではなく、各雇用形態の人数比の表です。なお、いつのデータなのかが書かれていませんが、平成18年の年平均だと思います。

・障害者雇用率制度に関して、235ページに「事業主は、法定雇用障害者数を上回る人数の障害者を雇用すること」、236ページに「雇用障害者数(実雇用率)が法定障害者数(法定雇用率)を上回ること」、238ページに「実雇用率が法定雇用率を超えること」とあり、これならば法に反することはありませんが、障害者雇用促進法43条が求めるのは「上回る」「超える」ことではありません。

・255ページで、図表6-5-1の一番下に「法務大臣が特別な理由を考慮して、一定期間の在留を認める者、インドネシア難民、条約難民、日系3世等」とありますが、「インドネシア難民」ではなく「インドシナ難民」でしょう。入国管理局による在留資格一覧表をご覧ください。なお、テキストの図表の「在留期間」のところはもう古くなり、これで覚えてはいけませんので、新しい在留管理制度や、在留資格「公用」の在留期間の改正についてを確認しておきましょう。

明治大学臨床心理士資格合格祝賀会と人口減少

きょう、明治大学のウェブサイトに、臨床心理士資格合格祝賀会が開催されましたという記事が出ました。合格者の皆さん、おめでとうございます。

文学部事務室による報告なのですが、文中のことばづかいには、気になるところがあります。特に、「資格を所得したことになり」は、明らかに「取得」のまちがいでしょう。ほかの民間資格でもだいたいそうですが、臨床心理士の取得が所得と表裏一体と考える人は、取得者にはあまりいないと思います。

表の下には、「修了者数と受験者数が異なるのは、複数回受けている修了生がいるため」とあります。ですが、修了者数と受験者数とは、どの年度の行でもぴったり一致して、異なるところが見あたらず、「異なるのは」という前提が確認できません。数値がずれるのは、たて方向です。修了者数の列は、合計が62とあるのに、7年分を単純合計すると、67になります。複数回修了した人がいるとは考えにくいです。合格者数のみを書いた表にしてあれば、ここで引っかかることはなくなります。ですが、そうすると中ほどの人数減少に、教育の質がくずれた時期があったような印象を生じそうです。

人数減少で思い出しましたが、きょう、OKWaveに、日本でイースター島のような人口減少が有り得ますか?という質問記事が立ちました。人口減少そのものはもう現実となり、平成25年少子化社会対策白書の第1-1-2図と第1-1-3図とでわかるように、反転する見こみは当分ありません。ですが、「イースター島のような」と言われても、ロンゴロンゴが解読されたことになっているなど、通説からははずれた理解を前提としての問いのようです。通説といっても、私はせいぜい、文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 上(J. ダイアモンド著、草思社)どまりの理解なのですが、その後、しろうとも知るべき通説の書きかえがあったのでしょうか。ご存じの方がいましたら、教えていただきたいと思います。

東北福祉大サイトでの認定心理士資格の説明

先週末に、東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科のウェブサイトが更新されました。ほかの学部・学科に先がけて、新しいデザインになったようです。course01.htmlからcourse03.htmlまであった、各履修コースの案内のページが削除されて、学生便覧から切りだしたPDFファイルに差しかわったり、心理学との関連があまりなさそうな授業風景に見えるdwp03.jpgがはずされしたりもしましたが、基本的には情報量が増えて、充実しました。

ですが、先がけのために公開を急いだのかもしれませんが、あちこちに、まだ修正を要するところがあります。中でも、進路・就職のページにある、認定心理士資格の説明は、困ったことになっています。ほかの資格にはない、取得のための過程の説明がついていますが、「大学や大学院で所定の科目単位を充足し、日本心理学会へ入会、資格試験(試験・面接)に合格することで取得可能です。」というのは、原形をとどめないくらいに、事実と異なります。

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