生駒 忍

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心理フラワーカウンセラーと准看の最低年収

きょう、アゴラに、合格率100%の資格を取得する際の留意ポイントは?という記事が出ました。

「事前になんの知識や経験もない人でも必ず取得できる資格」、「合格率100%の資格」の例が、「ハウスクリーニング技能士、ファイナンシャル・リスクマネジャー、着付インストラクター、台湾式リフレクソロジスト、認定ウエディングスペシャリスト、心理フラワーカウンセラー、コーヒーコーディネーター、紅茶コーディネーター、雑貨カフェクリエイター、ベビーマッサージインストラクターなど」とあります。コーヒーコーディネーターと紅茶コーディネーターとは、どちらか片方を挙げてもよかったように思いますが、さまざまなものがならびます。まったく知らない資格ばかりですが、名前が気になったので「心理フラワーカウンセラー」について調べてみると、認定までに最低145,000円がかかるシステムのようです。「「講習→試験→認定」を経て資格を取得可能」にさえもあてはまらず、試験もありませんが、そこは本質的な問題ではありません。私が持っている公的資格には、講習のみのものがありますが、講習会として常識的なレベルの費用ですし、欠員で業務が止まる事故は聞いたことがありませんが、必置資格です。

もちろん、合格率が高い資格には価値がないとは、必ずしも言えません。何年もの実務経験や専門教育が受験資格として必要なものは、試験そのものの合格率は高くても、手がとどきません。実務経験や専門教育の前の時点では「事前になんの知識や経験もない人」だったかもしれませんが、この記事であつかいたいものとは、まったく質が異なるでしょう。案の定、コメント欄には、准看護師を挙げて、反証したつもりのような人が登場しました。しかも、その人が挙げた、「最低でも年収400万円くらい」は、事実に反します。看護師比較.comの都道府県別平均年収データ(常勤)を見れば、平均でさえ400万を切ることがめずらしくないことがわかります。また、看護roo!で、准看護師の給与を検索すると、400万どころか、夜勤ありの常勤でも200万台の人さえ見つかります。どこでも求人があるのに、わざわざ地方ではたらくような奇特な人など無視するべきだという考えなのでしょうか。

准看に限りませんが、医療・看護分野の特異な売り手市場は、よく知られたところです。アゴラでアクセスを集めている記事、なぜ人手不足で実質賃金が下がるのかの棒グラフが、とてもわかりやすいと思います。ですが、取りにくい資格が必須になっているわけではないサービス業の高さのほうが、より特異だともいえそうです。「牛丼屋のアルバイトは時給を上げても集まらず、ホワイトカラーは余ったまま」で、労働市場におけるミスマッチの問題です。そういえば、スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学(吉本佳生著、筑摩書房)は、選ばなければ誰にでも仕事があることを論証しましたが、ミスマッチはその選ぶことと関連します。その図40の右下に入る人は、比較優位の威力が使えないのです。