生駒 忍

記事一覧

日本における障害者の比率と声かけの増加

きょう、物流ウィークリーのウェブサイトに、運送業で進む障害者雇用 人材確保、経済的自立を支援・・・という記事が出ました。「運送業界では、障害者雇用の促進は進んでいるのだろうか。」という関心から書かれたもので、促進が進むという書き方からもうかがえるように、文章力が気になるものの、こうして話題にされるのは、ありがたいことです。

「日本では、障害のある人の比率は全体の約6%という。」とします。ここでいう全体とは、日本国民全体のことでしょう。平成26年版 障害者白書(勝美印刷)には、「およそ国民の6%が何らかの障害を有していることに」とあります。ですが、これは推定値であること、少し前の調査からの数値であることだけでなく、3障害区分での数値の単純合計であって重複分の調整がないことや、「一過性の精神疾患のために日常生活や社会生活上の相当な制限を継続的には有しない者も含まれている可能性」にも、注意してください。

「京都市内の運送事業者では今年から、聴覚障害のある社員を雇用し、同社員は現在、倉庫の入・出荷作業を行っている。」という事例が紹介されます。「社員同士の声かけが以前よりも増え、活気が出ている」という声は、なぜ聴覚障害者が入って声かけが増えたのか、もう少し説明がないと、ふしぎに思われると思われます。

同じ社長の意見、「運転業務でも障害者のドライバー採用は決して不可能ではないのでは」、考えられることだと思います。ですが、毎日新聞のウェブサイトにきょう出た記事、池袋暴走:医師てんかんの持病 定期的に通院、服薬怠る?のようなことから、危険な「障害者」というイメージが一部で暴走することが、さまたげになる面があります。東洋経済ONLINEにきょう出た記事、地方は「好き嫌い」で物事を決めすぎるの世界でもそうですが、自分の感情でうごく人が、まわりの足をひっぱり、その人をふくむ自分たちの社会がよくならない原因となることは、めずらしくないのです。

「発達障害は育て方の問題」と女性のASD

きょう、京都新聞のウェブサイトに、心の病気、知って理解を 京都のNPO、冊子作成という記事が出ました。「中高生向けの啓発冊子「知ってほしい、心の病気のこと。」」の紹介です。

「心の病気は誰もがなる可能性があり適切な治療で回復に向かうが、偏見が強く、受診の遅れや孤立、いじめにつながっているという。」、いじめにもつなげることは、「心の病気」の啓発では、あまりみかけません。これは中高生向けだからでしょうか。あるいは、統合失調症ばかりにかたよらずに、発達障害も取りあげることと関連するでしょうか。発達障害といじめ “いじめに立ち向かう”10の解決策(C. グレイ著、クリエイツかもがわ)という本もあります。ですが、発達障害には、「誰もがなる可能性があり適切な治療で回復に向かう」という表現は、向かないと思います。

「対人関係がうまく築けない自閉症スペクトラム障害の少女」の事例が登場するそうです。自閉スペクトラム症という表記には、あわせなかったようです。また、割合としては少ないことが明らかな、女性の事例にしたところがユニークだと思います。

「「発達障害は育て方の問題」などの偏見や誤解」、このあつかいは、議論がわかれるところでしょう。少なくとも、子ども虐待という第四の発達障害(杉山登志郎著、学習研究社)のようなものを入れるなら、育て方の問題は明らかです。また、悪意のある虐待でなくても、不適切な育児行動が発達障害と関連するような指摘もあります。メディカルズアイの記事、赤ちゃんを強くゆさぶらないで!は、乳幼児揺さぶられ症候群について、「場合によっては、脳に障害が起き、知的障害や身体障害だけでなく、一見発達障害や学習障害などの後遺症が残ったりすることがあります。」とします。

入手方法ですが、「同法人メンバーが中学や高校で講演を行う際にのみ、冊子を生徒に配る。講演の希望者は事務局の洛南作業所に電子メールで申し込む。」とあります。ペイドパブかどうかはともかくとしても、興味をひく制作物を示して、それを材料に講演のお仕事が向こうから寄ってくるようにする、ややインバウンドマーケティング的な手法のようにも見えます。

障害者就労の場と気づかれずに搾取する図式

きょう、minyu-netに、双葉郡の障害者就労支援 郡山に店舗・作業場が完成という記事が出ました。

「福島中央テレビなどでつくる24時間テレビチャリティー委員会からの寄贈」とあります。日本テレビや、視聴率3冠の記事で取りあげた読売テレビなどをさしおいて、福島中央テレビを代表のように書いたのは、福島民友だからという、それ以上でも以下でもないと思います。

「ギャラリー28は、木造2階建て約30平方メートル。」だそうです。床面積もあと少し減らして、双葉とかけた28にしてもおもしろかったとは思いますが、名よりも実益をとったのでしょう。大阪ガス版MHDの記事で触れた、黄大人の発言を思い出しました。

写真にあるのが、そのギャラリーでしょうか。キャプションは、「24時間テレビチャリティー委員会からの寄贈で完成した「ギャラリー28」のオープンを喜ぶ関係者ら」ですので、これは人間の写真だという立場です。一方で、記念写真的な、きちんとととのったものでもありません。石垣市の自立支援の記事で取りあげたものほどの違和感はありませんが、全員が顔を向けてはいませんし、構図や立ち位置は、しろうと風の記念写真にも見えます。撮るのをよほど急いでいたのでしょうか。

撮るのを急ぐ、で思い出したのが、CrowdWorksにきょう出た募集、取り急ぎに関する記事を書いてくれる方を募集しますです。急いであわてていたのか、取りいそぎ何を書いてほしいのかと思ったら、「取り急ぎに関する記事を書いていただきたいと考えています。」だそうです。これで1800円、私には割にあわないお話に見えますが、お仕事というよりは、ひまつぶしとして乗る人がいるのでしょう。ネット上には、ひまのある人がたくさんいるのです。ウェブはバカと暇人のもの(中川淳一郎著、光文社)の世界です。「暇人はせっせと情報をアップし、リア充はその情報の換金化にはげむ」という節もあります。ここは、Amazon.co.jpでとても評価の高いヒンシュクの達人(ビートたけし著、小学館)の、「小銭ですむ道楽」で足りる、「お金なんてどうでもいいと思ってる」、「そうやって自分の視野をわざと狭めてる若者」を、「そいつらを「メシのタネ」にしてる賢いヤツラ」が「気がつかないうちに、ドンドン搾取して儲けてるって図式」、これが「今の時代の「二極化」の実態」だという指摘とも関連します。

視覚障害者の外出時の被害とアフォーダンス

きょう、埼玉新聞のウェブサイトに、外出で恐怖7割、性被害や暴力行為も 県視覚障害者協会アンケートという記事が出ました。

この調査では、「被害状況など」が調べられて、調査した団体の幹部によれば、「被害の実態がここまで詳細に分かるのは初めて。」だそうです。価値のある知見だと思います。そして、「外出で危険や恐怖を感じたことがある人は、約7割の75人に上った。」とのことです。後ろのほうに、「視覚障害者用の「音声読み上げソフト」を使い、約300人にメールで協力を求めた。」とありますので、回収率が低いという批判もあるとは思いますが、回答者の7割は多いでしょうか、少ないでしょうか。視覚障害のない人なら、外出時の危ない思いがゼロだとは、とても思えません。「ホームで電車を待っている時、電車が動いているのに後ろから押された」ようなことは、背中に目がある人はいませんので、視覚障害がなくてもよけられません。ですので、対照群との比較があれば、なおよかったところです。それでは、皆さんが調査を追加するとしたら、どんな対照群を合わせますでしょうか。補集合のように、それ以外の人で、でよいでしょうか。補集合から、ほかの障害者も除いてからがよいでしょうか。また、ふだん自転車、自家用車、自走式車いすで外出する人は、危険の起こり方が本質的に異なるでしょう。公共交通機関の利用量を、計ってきちんとそろえることも考えられますが、たとえば電車で厳密にするなら、営業キロ数と、乗車時間と、乗りかえもふくめた時間と、乗車回数と、乗りかえをふくめない乗車回数と、運賃と、どれが適切でしょうか。運賃には、障害者割引への注意も必要です。あるいは、ほかの障害者、たとえば聴覚障害者との比較から、障害や手帳の有無を統制して、視覚障害がかかえる問題を見るべきでしょうか。交通弱者として、肢体不自由とのほうがよいでしょうか。

気になったのは、「被害」という表現です。被害を起こした主体の存在をイメージさせます。「電車とホームの隙間に落ちてけがをした」、これは誰からの「被害」でしょうか。すきまの生じる設計を世界中で続ける鉄道産業でしょうか。わが国では、すきまへの注意喚起のアナウンスもありますが、すべてのすきまには流しませんので、その怠慢の被害でしょうか。もちろん、アナウンスを増やせば、うるさい日本の私(中島義道著、日本経済新聞出版社)のような「被害」を増やすことになります。

「つえの意味、点字ブロックの意味を多くの人に理解してほしい」、これはまったく同感です。ですが、意味を聞かれれば、たいていの人は、それなりの回答をできると思います。問題は、「意味」がわかっていればしそうにないはずの不適切行動が、出てしまうことです。点字ブロック上への駐輪は、めずらしくありません。弱視でもわかりやすいようにと、あの色ですので、いちいち目をこらさないと見えないとは思えませんが、その上に平気で駐輪されます。また、誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論(D.A. ノーマン著、新曜社)で使われる意味でのアフォーダンスを思わせますが、よりによって点字ブロックにそって行列がつくられがちな公共の場所も存在します。

そして、この調査のきっかけである川越駅視覚障害児傷害事件は、その「理解」や啓発の限界をうかがわせる事件だったのでした。SANSPO.COMの記事、全盲生徒蹴った疑い 知的障害の男を容疑者と特定にあるように、「狭山市の男(44)」が特定されましたが、「男は知的障害があり、受け答えが困難という。」とのことです。駅での偶発的なトラブルが、差別や人権につなげる展開に広げられていたのが、犯人がうかんでからは、佐村河内・ASKA・小保方の記事で触れた、「アンネの日記」損傷事件のその後のように、トーンダウンしたように思われます。人口減少の中で障害者が増える時代に、両方が障害者である今回の事件をどう考え、どう未来につなげるかは、重要なテーマになりそうですが、盛りあがらないようです。議論というよりは、片方を単純に悪と決めての、一方向的な主張しかしたくない人ばかりなのでしょうか。

裸の地域交流イベントと知的障害者による暴行

きょう、ヨミドクターに、心身障害者と入浴イベント…裸の交流「壁」取り払うという記事が出ました。

読んだこちらのこころまであたたまりそうな話題です。また、銭湯には、Business Journalに半年前に出た記事、銭湯、客数減でもなぜ潰れない?多額補助金、水道料金実質無料、税金免除…のような疑問点も知られるようになってきましたが、よい側面のアピールにもなりそうです。一方で、これを書いた岩永直子という記者の書き方には、やや気になるところがあります。

「街中の銭湯に障害者と出かけ、地域の人と同じ湯船につかればみんな仲間。」なのだそうですが、この「みんな」の範囲が、よくわかりません。障害者と出かけた人どうしが、湯船につかった時点で仲間になるのでしょうか。出かけた人がつかった時点から、地域の人までも仲間になるのでしょうか。「心身障害がある人の着替えを仲間が手伝い、まずは背中を流す。」とありますが、ここの「仲間」は、以前のある時点での入浴ですでに仲間になった人で、仲間は増えていく一方なのでしょうか。一方で、男は死ぬまで働きなさい(川北義則著、廣済堂出版)に登場する「僕、お風呂に入れないんです。」のような人は、仲間にはなれなさそうですが、あの人の場合は自業自得と言われそうです。

場所は、「創業約50年の老舗銭湯」だそうです。一方で、日本全国銭湯紀行は、この光明温泉を、「1983年にナニワ工務店によって改築された比較的新しい銭湯で、露天風呂やスチームサウナなど各種設備が揃っている。」とします。もちろん、どちらも事実なのだと思いますが、かなり印象が違ってきます。

「「障害を持つ人が気持ちいい顔でつかっているのを見たら、こっちまで気持ちよくなったよ。いつもより人が多いなと思うぐらいで気にならない。大歓迎だ」と語る。」とありますが、これは誰の発言でしょうか。「近所に住む藤岡雅史さん(61)夫妻」が、そろってこのとおりに発話したのでしょうか。この夫妻を含めて、登場人物の誰もが標準語で話しているのも、尼崎の人が読むと、取材に出ずに書いたようなうそくさい記事に見えるかもしれません。ふと、最近やや蒸しかえされぎみな、朝日新聞の新党日本に関する捏造事件を思い出しました。

「元舞台俳優だった清田さんのオリジナル脚本」とあるのも、ふしぎな表現です。「元」を取るか、「元は」にするか、あるいは「の」が続くことをがまんして、「元舞台俳優の」にするかが、より自然であるように思います。

最後に、イベント企画者の紹介がつきます。「「重い障害を持つ人が地域に住めば、誰にとっても住みやすい町になる」を合言葉に、おふろプロジェクトなど地域の人を巻き込むイベントを数多く開催している。」とのことです。合いことばは、バリアフリーというより、ユニバーサルデザインの思想に近いものです。また、重症心身障害に焦点化したところが、ひとつのポイントかもしれません。障害者の個性によっては、住みやすさどころではなく、地域で悲惨な被害を出して、しかもセカンドレイプではありませんが、そこに「障害」が持ちだされることで、さらに被害者側が苦しむことがあります。GIRL'S TALKできのうから大変に盛りあがっている自制出来ない知的障害者は、出歩かないで欲しいです。や、きょう派生した今知的障害者が雑貨屋で暴れたというトピが上がってますね。の「私の娘は知的障害者の方に暴行されました。相手は知的障害者と言うことで罪にもならずにむしろ娘が攻められました。」のようなことも、合わせて考えたいものです。

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