生駒 忍

記事一覧

個人情報と300円とが必要な奈良県介護講座

きょう、けあNewsに、奈良県、介護講座「介護保険制度の仕組み」を開催という記事が出ました。

内容は結局、記事の最後にリンクのある、奈良県の発表からのリライトです。「奈良県健康福祉部長寿社会課が講師となって説明」とあるのも、発表からのそのままです。それでも、ややニュアンスを変えたところもあります。受講の申し込みについては、「その際は、住所、氏名、電話番号を必ず連絡することとしている。」とあり、個人情報が必須であることが強調された印象です。また、「なお、参加する人は、資料代として300円徴収されるという。」、ここだけ距離をおいた表現で、お金をとられるネガティブな感じが出ています。こうなると、無記名のリライト記事であっても、その人が書いたものとしての何かがあらわれますし、創作性のある自分の著作物だという感じ方も強まるでしょう。予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」(D. アリエリー著、早川書房)にも登場する、イケア効果を思い出しました。イケアのようなお店にある組み立て式の家具は、誰が組み立てても同じになりますし、そうでないと困るのですが、自分で組み立てると愛着が出て、ぐっと価値のあるものに思えてくるのです。

女子校は奥手や内戦を育てるのでしょうか

きょう、マイナビウーマンに、女子校出身者はやっぱり恋に奥手だったりするの?「いいえ 63.0%」という記事が出ました。先月に行われたネット調査の結果を紹介するものです。

「まず、女性読者277人に「女子校出身」か聞いてみたところ、46人が女子校出身とのことでした。」とあり、スクリーニングのところからの紹介のようです。ですが、最後には「有効回答数277件。」とあって、スクリーニングではなかったようなあつかいです。記事本文には、46名の回答で、本題に対して17人が「はい」、29人が「いいえ」だったとあきます。記事タイトルにある「いいえ 63.0%」は、ここでの比率で、277人でのものではないはずです。一方で、紹介されるエピソードは、すべてが「はい」の人のものです。「残念ながら「女子校の女の子たちは奥手!」という幻想は砕かれてしまいました……。」と結論しながら、幻想のかけらをひろい集めるのです。少数派を掘りさげる調査や分析はあってよいのですが、見たいものを見たいだけのようにも見えます。

サンプルが小さいのでしかたがなかったと思いますが、単純に「女子校」でくくることの限界もあります。いわゆるお嬢様学校でしたら、俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件 1(七月隆文作、一迅社)のあとがきにあるように、あらそいのないお花畑なのかもしれませんが、自分のところはそんな裏表のない平和ではなかったという女子校経験者も多いでしょう。むしろ、女子の国はいつも内戦(辛酸なめ子著、河出書房新社)のタイトルそのままだったり、昨今の流行語でいう「マウンティング」が横行する空間だったりしたかもしれません。女子校育ち(辛酸なめ子著、筑摩書房)にあるような分類をとりいれた調査ができると、もっとおもしろくなることでしょう。

ラフマニノフを表現したフィギュア選手と作家

きょう、マイナビニュースに、浅田真央、村上佳菜子らが「どや顔」で表現する"ラフマニノフ"がすごいという記事が出ました。おとといの織田信成のツイートを紹介したものです。

「メンバーの中央に浅田選手が写りこんでいることから、「ラフマニ」とは浅田さんがフリーの演技で使用している「ピアノ協奏曲第2番」を作曲したロシアのピアニスト、セルゲイ・ラフマニノフさんを意味していると思われる。」、これは適切な解釈ではありません。めずらしくラフマニノフをさんづけにすることに注意をひかれ、以前に書いたハーレーのだじゃれの記事を思い出しましたが、ここではラフマニノフその人を指したのではないでしょう。5人が写っているのにひとりだけ記事に名前を書いてもらえなかったのが「ラフマニノフさん」のはずもありません。ラフマニノフによるその作品を使って浅田が見せたうごきをすることを、あのように表現したのだと思います。では、皆さんでしたら、これを適切な意味の文にするには、どのように書きなおしますでしょうか。

「のぶなり、カラダかたっ! 」という反応も紹介されました。ここは、さんづけでないことも含めて、親しみを読みとるところでしょうか、それとも、あの道にいた人に対して、痛いところを突いたと見えますでしょうか。ですが、世界的な現役選手であるキム・ヨナにも、そういうところがあるとされます。Googleのサジェスト機能は、「キム・ヨナ 体が硬い」ではなく「キム・ヨナ 体が固い」を出してきますが、硬さが気になる人も多いことがわかります。

記事の中にある写真のあつかいが、独特です。浅田の以前の演技について、「その姿は写真に写っている「大」の字に見えなくも」としますが、織田のツイートの画像の中には、この文字そのものは見あたりませんし、時間的な順序はむしろ逆です。ですので、記事の写真で大の字になった人を指したのかとも思いましたが、最後に「写真と本文は関係ありません」とあります。これは、ふつうなら写真のキャプションのほうに入れることが多い文言ですが、キャプションには「浅田真央選手らが皆、「どや顔」になってポーズする姿は圧巻!?」とだけあります。もちろん、浅田も織田も「どや顔」も写っていないので、無関係な写真だと考えるしかないはずなのですが、織田のツイートを確認しないと、そろってこのようなポーズだったのかと誤解しそうです。写真のようなことばではない表現も、ことばの表現も、あらわすものを適切に伝えているかどうかには、注意がいるのです。

ことばで適切にということで、ラフマニノフつながりで思い出したのが、おやすみラフマニノフ(中山七里作、宝島社)です。ラスト近くに、ちょうどこのラフマニノフの2番を、ひたすらにことばでえがく展開があります。あの名曲の美をあますところなく読者に伝えたものと感じた人も、流れをこわすたいくつな自己満足ページだと感じた方もいるでしょう。あれを肩のこらないミステリーととるか、読みやすい青春小説ととるか、中途半端でどちらとしても評価できないか、そのあたりもわかれる作品でもあると思いますが、どうでしょうか。

北海道医療大にダブルトールが開店しました

きょう、どうしんウェブに、道医療大に渋谷で話題のラテアート店 社会福祉法人ゆうゆう運営という記事が出ました。

以前に、スタバの鳥取進出の記事で、茨城大や筑波大でのカフェの誘致に触れましたが、北海道の、それも町村部で、ダブルトールを入れるのは、とてもユニークだと思います。「ダブルトールカフェは東京・渋谷などに計5店を展開。」とあり、本店は渋谷ではなく原宿なのですが、この規模でこういう出店は、ダブルトールとしても冒険かもしれません。

きょうの開店記念イベントでは、「渋谷店スタッフによるラテアート実演」もあったようですが、通常営業に入ってからは、ラテアートやそのレベルは、どうなるのでしょうか。ダブルトールの看板ですので、期待もかなりあるはずです。一方で、大学の講義棟のお店ですので、美はどうでもよく、価格設定なども含めて、実を重視する人もいるでしょう。そういえば、週刊東洋経済 3月15日号(東洋経済新報社)には、「単身社会のリアル」を特集した3月1日号で、室谷克実を「室谷克美」と書いたことへのおわびがありました。

高校生の寄り道と遠回りした人生からの成長

きょう、Yahoo!知恵袋に、高校生は帰りに寄り道して何をしとるんですか?という質問記事が出ました。方言のせいではないと思いますが、まだ誰も回答をつけていません。

子どもの放課後のすごし方については、たとえばベネッセ教育総合研究所による、放課後の生活時間調査をはじめとして、いろいろな研究があり、ちょうど私もかかわっていたりもします。ですが、帰宅後をはずして、特に寄り道に限定したものは、なかなかありません。子どもの道くさ(水月昭道著、東信堂)はありますが、高校生よりもずっと低い年代の話題です。同じくYahoo!知恵袋できょう解決した質問、私はこの春から高校へ進学します。を見ると、こんなに早々に質問するほど、寄り道に関心の高い高校生がいることがわかりますが、外からは関心が持たれにくいようです。

先ほど挙げた本について、水月-寄り道という組みあわせは、あの著者の経歴を考えると、興味深く思えます。よく、心理学者が研究テーマに選ぶのは自分自身のことだと言われるのを思い出します。今では学校法人筑紫女学園評議員につき、ご実家つながりという意味では帰宅ともいえそうですが、それまでの長い間の「道草」から、安泰の根がそだったのかもしれません。立命館がらみでは、少し前に書いた『ビリギャル』と西條剛央の記事で紹介した例もありますし、遠回りの道が王道へつながる人生もあるのだと考えたいところです。hontoできょう販売開始となった、家が、居場所が、なくなる時 さまよう子どもたちが辿り着いた先の最後の章は、「遠回りしたから、強くなれた」でした。