生駒 忍

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ラフマニノフを表現したフィギュア選手と作家

きょう、マイナビニュースに、浅田真央、村上佳菜子らが「どや顔」で表現する"ラフマニノフ"がすごいという記事が出ました。おとといの織田信成のツイートを紹介したものです。

「メンバーの中央に浅田選手が写りこんでいることから、「ラフマニ」とは浅田さんがフリーの演技で使用している「ピアノ協奏曲第2番」を作曲したロシアのピアニスト、セルゲイ・ラフマニノフさんを意味していると思われる。」、これは適切な解釈ではありません。めずらしくラフマニノフをさんづけにすることに注意をひかれ、以前に書いたハーレーのだじゃれの記事を思い出しましたが、ここではラフマニノフその人を指したのではないでしょう。5人が写っているのにひとりだけ記事に名前を書いてもらえなかったのが「ラフマニノフさん」のはずもありません。ラフマニノフによるその作品を使って浅田が見せたうごきをすることを、あのように表現したのだと思います。では、皆さんでしたら、これを適切な意味の文にするには、どのように書きなおしますでしょうか。

「のぶなり、カラダかたっ! 」という反応も紹介されました。ここは、さんづけでないことも含めて、親しみを読みとるところでしょうか、それとも、あの道にいた人に対して、痛いところを突いたと見えますでしょうか。ですが、世界的な現役選手であるキム・ヨナにも、そういうところがあるとされます。Googleのサジェスト機能は、「キム・ヨナ 体が硬い」ではなく「キム・ヨナ 体が固い」を出してきますが、硬さが気になる人も多いことがわかります。

記事の中にある写真のあつかいが、独特です。浅田の以前の演技について、「その姿は写真に写っている「大」の字に見えなくも」としますが、織田のツイートの画像の中には、この文字そのものは見あたりませんし、時間的な順序はむしろ逆です。ですので、記事の写真で大の字になった人を指したのかとも思いましたが、最後に「写真と本文は関係ありません」とあります。これは、ふつうなら写真のキャプションのほうに入れることが多い文言ですが、キャプションには「浅田真央選手らが皆、「どや顔」になってポーズする姿は圧巻!?」とだけあります。もちろん、浅田も織田も「どや顔」も写っていないので、無関係な写真だと考えるしかないはずなのですが、織田のツイートを確認しないと、そろってこのようなポーズだったのかと誤解しそうです。写真のようなことばではない表現も、ことばの表現も、あらわすものを適切に伝えているかどうかには、注意がいるのです。

ことばで適切にということで、ラフマニノフつながりで思い出したのが、おやすみラフマニノフ(中山七里作、宝島社)です。ラスト近くに、ちょうどこのラフマニノフの2番を、ひたすらにことばでえがく展開があります。あの名曲の美をあますところなく読者に伝えたものと感じた人も、流れをこわすたいくつな自己満足ページだと感じた方もいるでしょう。あれを肩のこらないミステリーととるか、読みやすい青春小説ととるか、中途半端でどちらとしても評価できないか、そのあたりもわかれる作品でもあると思いますが、どうでしょうか。