生駒 忍

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盛岡の「ワッフルエムズ」とジェロのこだわり

きょう、盛岡経済新聞に、盛岡にワッフル専門店「ワッフルエムズ」-ふわふわ食感で人気にという記事が出ました。

記事タイトルは、前半だけ見ると開店のニュースのようですが、後半は開店からしばらくしないと書きにくい情報です。オープンから1か月なので、「盛岡のワッフル専門店「ワッフルエムズ」 ふわふわ食感で人気に」とは書かずに、開店情報の感じも出したかったのでしょうか。この記事自体は、あのサイトではかなりアクセスがあって人気記事になっていますが、「人気に」という状態をメインにした記事内容でもないので、そこを前面に出すことをひかえた面もあるのかもしれません。人気をうかがわせるのは、後のほうに「ワッフルは一日300個限定で、早い時は昼過ぎにはなくなってしまうという。」とある一文と、写真が売り物をきれいにそろえた撮影用の絵ではなく、品切れがわかる状態のものであることくらいでしょう。なお、私は食べたことがありませんし、実際の人気や評判もわかりません。とりあえず、検索してみると、waffle (ワッフル) Ms(エムズ)という個人ブログ記事は確認できました。

「ふわふわの食感にこだわって試行錯誤を繰り返し、ほのかな甘さとしっとり感のある生地が完成。」とあります。外見や、花輪ふくし会を定年退職した可能性から推測すると、「こだわる」ということばのこういう使い方は、店主が自分でしたものではないかもしれません。私の業界では、自閉症スペクトラムのことがあるのでまた特殊なのですが、本来はよくない意味あいだったものが、世間ではしばらく前に反転したことばです。今はもう気にならなくなった人も、ずっと違和感を持ちつづけている人もいるでしょう。サラダ油が脳を殺す(山嶋哲盛著、河出書房新社)には、一生のこだわりを持つことの影響のお話がありましたが、そのこだわりも、よい意味でのものでした。一方で、日本語ネイティブではない人ですと、最近ではたとえば、Rillia 2014年5月号(講談社)で、演歌歌手のジェロが、「僕はこだわりますが、人には求めません。」と書きましたが、これはどうでしょうか。

待ち時間は外来の最大の不満要素でしょうか

きょう、財経新聞に、日本最大級の病院検索サイト「QLife病院検索」で【混まない時間帯】【混み具合】情報を掲載開始という記事が出ました。内容は、QLifeによるプレスリリースです。

「「待ち時間」は、厚生労働省「平成23年度受療行動調査」によると、病院受診者の最大の不満要素となっている。」とありますが、これは誤りです。平成23年受療行動調査(確定数)の概況をご覧ください。待ち時間のデータは、診察時間との対応でみると、個々の診察時間が長いために待ち時間が長くなるというよりも、むしろ混みにくいところほど個々の診察に時間をかける、あまり悪くない医師誘発需要のようなものが示唆されて興味深いのですが、「最大の不満要素」と判断できる情報はありません。また、その病院を選んだ理由、選ぶにあたり重視したもの、どちらのデータを見ても、「待ち時間が短い」を選んだ人は少ないことがわかります。医療機関に対する不満感のデータには、不満の理由はありませんし、不満を主治医に相談した場合の内容のデータはありますが、そこに待ち時間は見あたらず、あったとしたら「その他」に含まれるはずです。

もちろん、最大でなければ、エビデンスが適切でなければ対応してはいけないということもありません。QLifeのこの新サービスは、私は有用だと思います。患者側はもちろん、医療機関としても来院の平準化は助かることです。「“口コミ&個別調査回答”というあくまで「主観情報の複合体」として表示することで」責任から距離をとるアイデアも、興味深いと思います。ぐるナビなどの「主観情報の複合体」も、社会に定着したといえますし、ぐるナビと異なり、すいているという患者側に好ましい情報は、実際には混むのに病院側が事実に反する方向へ操作して掲載させるインセンティブが弱いので、より運用しやすいかもしれません。

気になるのは、これを見て時間帯を調整する患者が、どういうタイプなのかです。急ぎの人、いそがしい人には、そもそも使えません。余裕のある人が利用して、うまく分散されると、急ぎの人が大混雑にあたって迷惑することも、結果的に減るでしょう。ですが、ほんとうに余裕があって、自分が待つことが気にならない人は、わざわざ混雑情報を調べずに来そうです。ひまがたっぷりあるのに、調べるのはめんどうだと言いそうです。ほんとうは、そういう人にこそ、平準化に協力してほしいところなのです。また、予想とのずれがどのくらい許容されるかも、興味があります。もちろん、ここは個人差がかなりあるでしょう。学校の先生が、外ではクレーマーになるようなお話も聞きますが、ずれると不寛容で、ぴったりなら気にいるかもしれません。キリスト教学校教育同盟の機関紙、キリスト教学校教育のきょう付の号に、「学校で働く者は、時間の感覚が研ぎ澄まされているように感じます。」とあったことを思い出しました。

私立大学新入生の家計負担調査と性的バイト

きょう、ゲンダイネットに、親は気をつけろ! 娘の「風俗アルバイト」を見抜く方法という記事が出ました。

「私立大学教職員組合連合の最新調査によると、首都圏の私大生が受け取る仕送り額は8万9000円で9年連続で最低を更新。」とありますが、まず、ここで話題にされた調査は、東京地区私立大学教職員組合連合による「私立大学新入生の家計負担調査 2013年度」だと思います。ホームページ掲載版で、概要を見ることができます。私立大学教職員組合連合は、その東京私大教連を含む37都道府県にある組織による連合体ですので、また別の団体です。「首都圏の私大生」とありますが、データは関東の14大学・1短大の学生のものです。ホームページ掲載版に「干葉」とあるのは千葉県のことだと思いますが、群馬県には対象校がありません。今回は日本大学と日本大学短期大学部とが離脱しましたし、武蔵野美術大学が抜けたり筑波学院大学が入ったりと、対象校は固定ではありません。9年連続更新は、データがある1986年からの範囲でのことで、その後のバブルのために1986年がずっと最低だったところを、2005年調査で下回ったところから数えたものです。

「(独)日本学生支援機構の調査によると、学生の収入は「家庭からの給付」が0.9ポイント減る一方で、「アルバイト」は0.8ポイント増になった。」、これは平成24年度学生生活調査の、昼間部の学部生のデータのことでしょう。こちらは、1年おきに行われていますので、増減は平成22年度のものと比べての、2年の間の差分です。先ほどの東京私大教連のものと同時期ではなく、平成24年度調査はそれの半年ほど前です。

蛯名泰造というライターによる、「同じ種類のブランドバッグが部屋に2つあるのもキャバ嬢の特徴。2人の客に買ってもらい、ひとつを質屋で換金するのです」という指摘があります。二つを入手するのはあまりに有名なお話ですが、片方を換金するのですから、部屋にずっと両方があるわけではないはずです。それでも、二つあることは、そういう仕事をしない学生にはまずありえないことなので、一瞬でもそういうことがあったらうたがうべきという主張なのだと思います。二つがそろうのは、文字どおりの一瞬ではなく、少なくとも昼田とハッコウ(山崎ナオコーラ作、講談社)のアロワナ書店の感覚での「一瞬」くらいの間はあるはずでしょう。

「デリヘルや性感エステを始めると「1時間半」を「90分」と表現するようになる。」とあるのは、これ自体が正しいかどうかは知りませんが、もし正しいとしても、特異度の低い手がかりだと思います。大学はその業界以上に、時間の単位は90分で組まれています。そして、「90分授業」とは言っても、「1時間半授業」とは言わないように思います。ですので、大学に通うだけでも、90分という表現になじんでいくはずです。「ストレス発散のために、ネットショッピングの回数が増えるのも風俗嬢に見られる現象です」、これも同様に、特異度が低いと思います。私も、昔よりネットショッピングの利用が増えました。

万引き防止顔認識システムの報道と会社名

きょう、Business Journalに、読売新聞記事に捏造の疑い、取材対象者から抗議受けた記者は「いい宣伝になったでしょ?」という記事が出ました。万引き犯顔情報共有の騒動について、渦中の会社の担当者へのインタビューを行い、発端をつくった新聞記者の行いに疑問を投げかけるものです。

筆者は、会社社長で「ブラック企業アナリスト」として知られる人物です。今回は、ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない(黒井勇人著、新潮社)以降の意味での「ブラック企業」ではなく、法にそむく行為や、少なくとも社会通念上問題のある行為で事業を行う、もともとの意味での「ブラック企業」の方向性に近い話題です。

7点にわたる「読売新聞記事の内容について、事実と異なる点」を見ると、記事がこの会社への取材にもとづく内容であったとは言いがたいと言わざるをえません。ここまでですと、特に(2)や(3)からは、渦中の企業への取材はまったく記事に使われず、実はいろいろとそっくりな別の企業を取りあげたところだけが記事になったようにも見えます。

それで気になって、東京ブレイキングニュースにおととい出た記事、客の顔情報115店が無断共有!? 万引き防止システムの怖い落とし穴を読みなおしてみました。読売記事の騒動にあわせた記事だろうと思いますが、こちらには「万引きすると疑われて困っているという人物」の被害事例があります。これがあの会社のものと対応するかというと、手がかりになる情報がありません。そのショッピングモールが首都圏にあれば、先ほどの(2)に反するので違うといえるのですが、近くに人家があり、駐車場があり、「店員や保安員、警備員など」がいるという程度しか情報がありません。また、いつからなのかもわからないので、(3)も使えません。筆者は「確かに顔認証装置を導入している店」としますが、店の責任者はそのような装置の設置を認めていないとあるので、この段階ではっきりせず、被害妄想ではないとも言いきれません。発言小町でここのところアクセスを集めつづける人気記事、上階の住人が天井越しに話しかけてくるを思い出しました。ですが、こちらの筆者は、万引きGメンは見た!(伊東ゆう著、河出書房新社)の著者でもあるすご腕の万引きGメンとのことですので、信用できるという見方もあるでしょう。ニッチー!の記事、万引きGメンに聞く「こいつ、やるな」の特徴とは?によれば、「犯人が歩いているときのヒジの動きだけでわかる事も」、それどころか、「伊東さんは店の外観を見ただけで、その店に万引き犯がいるかいないかわかるという。」というほどなのです。ですが、だからこそ、最後には警察のシステムまであわせてネガティブな印象をもたせる、ネオ・ラッダイト的な記事を書いたと考える人もいるかもしれません。今回のBusiness Journalの記事は、「日頃から万引き被害に苦しむ店舗の側からしてみれば、今回読売新聞が問題視しているようなシステムがあれば、これまで対策に割いていた余計な人件費や経費をもっと生産的な活動に回すことができ、メリットが大きい」と指摘し、万引きの害について、「まさに、犯罪によって、国民の働く機会が失われているといえよう。」としますが、万引きGメンから見れば、自分のはたらく機会が機械にとられてしまいかねないのです。

さて、今回の記事で気になったのは、ひとつは読売側への取材がないことです。SAPIO 2014年5月号(小学館)の記事、「原因追及 「慰安婦問題の火付け役」に全20問を送付! 朝日新聞は歴史的大誤報にどう答えたか」の朝日のように、形式的な返答かもしれませんが、形式として向こうにも聞いたかたちをとれると、よりかたちがととのったように思います。そしてもうひとつは、会社名のふせ方です。「「NAVERまとめ」や「2ちゃんねる」などでも「名古屋市内のソフト開発会社」とみられる企業名が挙げられ、ちょっとした炎上状態」と、会社名がネット上で話題になったことを示しながらも、インタビューの導入では「名古屋市内のソフトウェア開発会社」(以下、A社)の担当者である畠山公治氏」と、実名と思われる担当者名のほうを出して、会社名はふせます。ですが、新旧2ちゃんねるを探しまわる必要はなく、この氏名、「今年2月14日のプレスリリース」の存在、さらには他者の記事の紹介で、もう明かしたようなものです。「いい宣伝になったでしょ?」への皮肉をこめて、ふせたようでそうでない書き方をしたのでしょうか。mama★staにきのう出た記事、うんこって言葉で小一時間笑えるの、けさ6時ごろについたコメントを思い出しました。

ひらめきを待たない創造性とドラゴンボール-

きょう、ライフハッカー日本版に、ひらめきという神話:本当にクリエイティブな人は、ひらめきを待ったりしないという記事が出ました。

「本当にクリエイティブな人」をどう定義するかはともかくとしても、多彩な顔ぶれが登場する記事です。ですが、少なくともわが国では、一般に高い知名度や評価があるとはいいにくい名前も混ざります。登場順に見ていくと、冒頭のカフカは、今の学生なら読んだことがないという人もめずらしくない気がしますが、それでも名前くらいは知っているでしょう。続いて、マヤ・アンジェロウは、もちろんすぐれた詩人ですが、ぐっと知名度は下がります。斎藤美奈子のいう「中古典」のような位置で、私の世代まで下ると、名前を知らない人もいそうです。マイケル・シェイボンは、もう少しはましになりますが、それでも一般にも有名とまではいいにくい作家です。それが一気に反転するのが、村上春樹です。カフカのあと、知らない人が二人いるのを飛ばして、この名前で海辺のカフカ(村上春樹作、新潮社)が頭にうかんだ人もいそうです。

こちらは作家ではありませんが、「有名な心理学者、ウィリアム・ジェームズは、習慣とスケジュールが大事である理由を「心を解き放ち、本当に面白い活動の舞台へと導いてくれる」からと言っています。」とあります。心理学史では有名な人物ですが、そのことばが今日の世界に生かされるのは、意外にめずらしいことです。あとは、「ウリアムジームスの言葉」としてネットに出回るものが、この人のもののようです。

ひらめきとスケジュールとは、直接に対立するものではありませんが、この記事の主張は、降りてきてから仕事をしよう、ではなく、スケジュールをきちんと確保して、ひらめきと関係なく仕事をしていれば、その中でクリエイティブなひらめきの機会もあるだろうというものです。へたな鉄砲のことわざだとがっかりした人も、あるいは前向きなものでは、エジソンのことばということになっている「99%のパースピレーション」が思いうかんだ人もいるでしょう。SAMURAI SOCCER KING 2013年12月増刊号(講談社)で宮間あやが言う、「当然、乗らない日もありますが、そういう日はそういう日なりに」でいいのです。「もうちょっとやる気があったら今日やるのにな」より、ずっといいのです。

ですが、そういう固定スケジュール戦略で気になるのは、降りてきたらスケジュールを変更して、仕事時間をのばすのはありかどうかです。決めたスケジュールなのでと無条件で切ってしまっては、とてももったいないように思えます。一方で、のばした分だけあとで休みもほしくなるでしょう。また、臨機応変にというともっともらしいですが、そこの合理性をとると、結局は気が向いたらする、向かなければしかたないという考えにかたむいて、スケジュール固定のよさを失いそうです。よいときに仕事をのばして、そうでないときに先のばしするのでは、ひらめき待ち戦略に戻る方向です。

のばすで思い出したのが、銀河パトロール ジャコ(鳥山明作、集英社)の「スペシャル おまけストーリー」です。むしろ、ジャコ本編よりも話題になっているようにも思える「おまけ」ですが、「ドラゴンボールー」というように、後ろを長音記号でのばす人もいるようです。ですが、あのタイトルにあるのは、マイナスです。ネット上で文字になったものだけ見て、誤読したのかもしれません。あの字だけ白抜きにして区別してありますし、カタカナで「マイナス」と添えてあるので、ひと目みればもうまちがわないはずなのです。紙にお金をはらうのは情弱、などという考えもあるのかもしれませんが、若者はまんがしか買わないと悪く言われたのが、今はまんがも買わないになってきたのでしょうか。フリーですが紙媒体であるR25の、4月3日号の36ページ、石田衣良が書いた「なんでも無料症候群」を思い出しました。