きょう、ライフハッカー日本版に、ひらめきという神話:本当にクリエイティブな人は、ひらめきを待ったりしないという記事が出ました。
「本当にクリエイティブな人」をどう定義するかはともかくとしても、多彩な顔ぶれが登場する記事です。ですが、少なくともわが国では、一般に高い知名度や評価があるとはいいにくい名前も混ざります。登場順に見ていくと、冒頭のカフカは、今の学生なら読んだことがないという人もめずらしくない気がしますが、それでも名前くらいは知っているでしょう。続いて、マヤ・アンジェロウは、もちろんすぐれた詩人ですが、ぐっと知名度は下がります。斎藤美奈子のいう「中古典」のような位置で、私の世代まで下ると、名前を知らない人もいそうです。マイケル・シェイボンは、もう少しはましになりますが、それでも一般にも有名とまではいいにくい作家です。それが一気に反転するのが、村上春樹です。カフカのあと、知らない人が二人いるのを飛ばして、この名前で海辺のカフカ(村上春樹作、新潮社)が頭にうかんだ人もいそうです。
こちらは作家ではありませんが、「有名な心理学者、ウィリアム・ジェームズは、習慣とスケジュールが大事である理由を「心を解き放ち、本当に面白い活動の舞台へと導いてくれる」からと言っています。」とあります。心理学史では有名な人物ですが、そのことばが今日の世界に生かされるのは、意外にめずらしいことです。あとは、「ウリアムジームスの言葉」としてネットに出回るものが、この人のもののようです。
ひらめきとスケジュールとは、直接に対立するものではありませんが、この記事の主張は、降りてきてから仕事をしよう、ではなく、スケジュールをきちんと確保して、ひらめきと関係なく仕事をしていれば、その中でクリエイティブなひらめきの機会もあるだろうというものです。へたな鉄砲のことわざだとがっかりした人も、あるいは前向きなものでは、エジソンのことばということになっている「99%のパースピレーション」が思いうかんだ人もいるでしょう。SAMURAI SOCCER KING 2013年12月増刊号(講談社)で宮間あやが言う、「当然、乗らない日もありますが、そういう日はそういう日なりに」でいいのです。「もうちょっとやる気があったら今日やるのにな」より、ずっといいのです。
ですが、そういう固定スケジュール戦略で気になるのは、降りてきたらスケジュールを変更して、仕事時間をのばすのはありかどうかです。決めたスケジュールなのでと無条件で切ってしまっては、とてももったいないように思えます。一方で、のばした分だけあとで休みもほしくなるでしょう。また、臨機応変にというともっともらしいですが、そこの合理性をとると、結局は気が向いたらする、向かなければしかたないという考えにかたむいて、スケジュール固定のよさを失いそうです。よいときに仕事をのばして、そうでないときに先のばしするのでは、ひらめき待ち戦略に戻る方向です。
のばすで思い出したのが、銀河パトロール ジャコ(鳥山明作、集英社)の「スペシャル おまけストーリー」です。むしろ、ジャコ本編よりも話題になっているようにも思える「おまけ」ですが、「ドラゴンボールー」というように、後ろを長音記号でのばす人もいるようです。ですが、あのタイトルにあるのは、マイナスです。ネット上で文字になったものだけ見て、誤読したのかもしれません。あの字だけ白抜きにして区別してありますし、カタカナで「マイナス」と添えてあるので、ひと目みればもうまちがわないはずなのです。紙にお金をはらうのは情弱、などという考えもあるのかもしれませんが、若者はまんがしか買わないと悪く言われたのが、今はまんがも買わないになってきたのでしょうか。フリーですが紙媒体であるR25の、4月3日号の36ページ、石田衣良が書いた「なんでも無料症候群」を思い出しました。