生駒 忍

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待ち時間は外来の最大の不満要素でしょうか

きょう、財経新聞に、日本最大級の病院検索サイト「QLife病院検索」で【混まない時間帯】【混み具合】情報を掲載開始という記事が出ました。内容は、QLifeによるプレスリリースです。

「「待ち時間」は、厚生労働省「平成23年度受療行動調査」によると、病院受診者の最大の不満要素となっている。」とありますが、これは誤りです。平成23年受療行動調査(確定数)の概況をご覧ください。待ち時間のデータは、診察時間との対応でみると、個々の診察時間が長いために待ち時間が長くなるというよりも、むしろ混みにくいところほど個々の診察に時間をかける、あまり悪くない医師誘発需要のようなものが示唆されて興味深いのですが、「最大の不満要素」と判断できる情報はありません。また、その病院を選んだ理由、選ぶにあたり重視したもの、どちらのデータを見ても、「待ち時間が短い」を選んだ人は少ないことがわかります。医療機関に対する不満感のデータには、不満の理由はありませんし、不満を主治医に相談した場合の内容のデータはありますが、そこに待ち時間は見あたらず、あったとしたら「その他」に含まれるはずです。

もちろん、最大でなければ、エビデンスが適切でなければ対応してはいけないということもありません。QLifeのこの新サービスは、私は有用だと思います。患者側はもちろん、医療機関としても来院の平準化は助かることです。「“口コミ&個別調査回答”というあくまで「主観情報の複合体」として表示することで」責任から距離をとるアイデアも、興味深いと思います。ぐるナビなどの「主観情報の複合体」も、社会に定着したといえますし、ぐるナビと異なり、すいているという患者側に好ましい情報は、実際には混むのに病院側が事実に反する方向へ操作して掲載させるインセンティブが弱いので、より運用しやすいかもしれません。

気になるのは、これを見て時間帯を調整する患者が、どういうタイプなのかです。急ぎの人、いそがしい人には、そもそも使えません。余裕のある人が利用して、うまく分散されると、急ぎの人が大混雑にあたって迷惑することも、結果的に減るでしょう。ですが、ほんとうに余裕があって、自分が待つことが気にならない人は、わざわざ混雑情報を調べずに来そうです。ひまがたっぷりあるのに、調べるのはめんどうだと言いそうです。ほんとうは、そういう人にこそ、平準化に協力してほしいところなのです。また、予想とのずれがどのくらい許容されるかも、興味があります。もちろん、ここは個人差がかなりあるでしょう。学校の先生が、外ではクレーマーになるようなお話も聞きますが、ずれると不寛容で、ぴったりなら気にいるかもしれません。キリスト教学校教育同盟の機関紙、キリスト教学校教育のきょう付の号に、「学校で働く者は、時間の感覚が研ぎ澄まされているように感じます。」とあったことを思い出しました。