生駒 忍

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本明寛理事長の資格戦略についての証言

Yahoo!知恵袋に、臨床心理(学)と心理臨床(学)の違いはなんですか?という質問が立っていましたが、きのう、解決したと判断されました。2件ついた回答は、学問分野としての関心や性質の比較ではなく、どちらも資格問題に特化したものでしたが、その後のほうには、「心理職の資格制定には医療系団体と厚生省(当時)の抵抗が大きいため,文部省か科学技術庁(いずれも当時)を突破口にするという戦略を本明氏本人から聞いた」という証言があります。ただし、いつ、どこでお話ししたときのことなのかは、書かれていません。「社団法人日本心理学会認定心理士資格申請の手引き」という文書があり、これは公益社団法人になった今でも有効で、心理学者にはおなじみの書き方の文書の「手びき」とは異なり「手引き」なのですが、その第4.1 ダウンロード版を見ると、1980年代中ごろに「厚生省に理事長名(本明寛理事長)で最初に陳情書を提出した」とあります。

また、「本明寛率いる当時の日本心理学会」という表現では、誤解をまねくように思います。日本心理臨床学会の立ちあげより前から、日心のトップに立っているように読めてしまいます。もちろん、当時から影響力があったことは、だれも否定しないでしょう。国際ロータリー第2830地区のガバナー月信2005-06年6号には、「ロータリーの標語に関連し私の経験を語る(中)」という特別寄稿があり、これは目次では「(上)」になっていますが、その中に「本明博士は終戦後、日本心理学会の権威で多数の著作を発表している」とあります。

さらに言うと、質問者が「資格問題が協会の分裂の原因だったのですね」と書いたのも、適切ではありません。このやり取りの中には、日本臨床心理士資格認定協会と全国保健・医療・福祉心理職能協会とが登場しますが、どちらもまだ、分裂といえるほどの大きな事態を起こしてはいないと思います。

テンニースにはウムラウトがつきます

シリーズ第23弾です。

ワークブック106ページに、「テンニース(Tonnies, F.)によれば、ゲマインシャフトとは、本質意志に基づき、感情的な融合を特徴とする共同体的な社会のこと」とあります。ゲマインシャフトの定義は、これでかまわないと思いますし、「テンニエス」「トェンニース」「テーニス」といった、昔のカタカナ表記でないのも、これでよいでしょう。ですが、テンニースのつづりから、ウムラウトが落ちています。"Tönnies, F."と書くのが適切です。

それとも、このワークブックは、ウムラウトを使わない方針なのでしょうか。そんなことはありません。62ページには、「ケーラー(Köhler, W.)が強調した洞察学習」とあります。

ちなみに、ゲマインシャフトを特徴づけるWesenwilleは、このワークブックでは「本質意志」と訳されていますが、「本質意思」と訳したものも見かけます。福祉領域では東京帝国大学セツルメントで知られる末弘嚴太郎は、どちらも使っているようです。社会福祉士合格ワークブック2013 共通科目編(ミネルヴァ書房)には、「本質意志」と「本質的な意思」との両方があります。Kürwilleのほうも、「選択意志」と「選択的な意思」との両方があります。

資格を続けてとりました

ことしは資格をとってみようと思い、せっかくですので、対象分野はばらばらな4件を、いきおいをつけてまとめて受験してみました。1月26日・27日に精神保健福祉士、2月17日にビジネス・キャリア検定試験 労務管理3級、2月24日に日本やきもの検定3級、3月3日に銀行業務検定試験 年金アドバイザー4級、というぐあいです。カレンダーの上では3か月にまたがりましたが、4件で36日間ですので、期間は1か月強ということになります。ホブズボームをまねて、「長い2月」とでもいうところでしょうか。なお、この期間のすぐ後、3月5日には、これは試験はないのですが、衛生推進者養成講習を修了しました。

結果は、4件とも合格でした。精神保健福祉士は、厚労省の登録簿への登録もすませました。それぞれについて、私の正答数/問題数、正答率、合格最低ライン正答数・同正答率、合格率を示しておきます。

精神保健福祉士
 正答数/問題数 117/163
 (正答率) 72.8%
 合格最低ライン正答数 72
 (同正答率) 44.2%
 合格率 56.9%

労務管理3級
 正答数/問題数 72/80
 (正答率) 90.0%
 合格最低ライン正答数 44
 (同正答率) 55%
 合格率 62%

日本やきもの検定3級
 正答数/問題数 77/80
 (正答率) 96.3%
 合格最低ライン正答数 60
 (同正答率) 75%
 合格率 [未公表]

年金アドバイザー4級
 正答数/問題数 47/50
 (正答率) 94.0%
 合格最低ライン正答数 30
 (同正答率) 60%
 合格率 61.77%

後のもののほうが、高い得点が得られています。どれも大して勉強しなかったのですが、これではまるで、だんだん頭がなれていっているようで、ふだんまったく勉強していないのがばれているようにも見えます。ですが、受けた印象としては、難易度のちがいも大きいように思います。労務管理3級は、この得点でも偏差値が70以上となったそうで、優秀者表彰をいただきました。一方、年金アドバイザー4級は、これでも受験者2388名での89位ということで、正規分布だとしたら偏差値70に届かないことになります。なお、日本やきもの検定3級は、合格率が未公表で、公式サイトが昨年末から更新されていませんので、公表される見こみもうすいのですが、意外にむずかしかったのかもしれません。鈴木秀明という有名な資格マニアが、今回もまた受けて、また不合格だったそうです。

パーキンソン病の好発は40歳からでしょうか

シリーズ第22弾です。

ワークブック35ページに、「パーキンソン病は、振戦、固縮、無動(動作緩慢)を三大主徴とし、40~65歳など中年以降に発症しやすい。」とあります。四大症状ではなく、三大というどちらかというと古い考え方でとらえられています。

また、好発年齢が、単純に中年以降と書かれるのではなく、40~65歳などという、必然性のわからない範囲の例示をともなっています。京都府精神保健福祉総合センター心の健康のためのサービスガイドなどによれば、中年は64歳までですし、65歳は高齢者とされることが多いですので、40~65歳という範囲のとり方は、きりがいい数字には見えますが、はっきり数字を書くべき意味のあるくくり方とはいいにくいかもしれません。

好発年齢の下のほうも、印象的にはかなり低いように思われます。もちろん、財団をつくったマイケル・J・フォックスなど、若年性の症例はいろいろありますし、最近では、女性セブン 5月9日・16日合併号(小学館)の記事から火がついた、鷲尾いさ子パーキンソン病説もありました。それでも、40歳がもう、パーキンソン病の好発年齢とされるのは、違和感があります。

疫学の知見をあたってみましょう。BCMJ43巻のEpidemiology of Parkinson's diseaseには、50歳より前では一般的でなく、それから増えていくとあります。Am. J. Epidemiol.157巻のIncidence of Parkinson's disease: Variation by age, gender, and race/ethnicityからも、後ろのほうにあるFigure 1がわかりやすいと思いますが、40歳が好発年齢に入るとは考えにくそうです。Eur. Neuropsychopharm.15巻のPrevalence and incidence of Parkinson's disease in Europeも、同じような印象です。

書籍の中では、どのようにあつかわれているのでしょうか、資格関連のものからいくつかあたってみました。ケアマネジャー試験ワークブック2013(中央法規出版)では、50~60歳代に多いとあります。ケアマネジャー試験 過去問選択肢別パーフェクトガイド2013(中央法規出版)では、「50~60歳代に発症し」とあって、その前後ならならないような書き方です。介護福祉士受験暗記ブック2013(飯塚慶子著、中央法規出版)も、40~65歳を「発症年齢」としていて、以前に精神保健福祉士の暗記ブックに関して指摘した、著者のくせのあるところがうかがえます。MINERVA福祉資格テキスト 社会福祉士・精神保健福祉士 共通科目編(ミネルヴァ書房)は、若年例にも触れながら、数字は出さずに、比較的中高年者に多いとします。系統看護学講座 専門分野Ⅱ 老年看護 病態・疾患論 第3版(医学書院)は、主要症状の数を3とも4ともとれる書き方をしていますが、こちらも数字を出さずに、「中年以降の発症が多く」と書いています。病気がみえる vol.7 脳・神経(メディックメディア)は、試験専用ではありませんが、そういう目的にも適したヴィジュアル満載の本で、そこでは50~70歳代を好発年齢としています。おどろくほど低いのは、登録販売者標準テキスト 医薬品の販売者となるために 改訂版(小野寺憲治・松田佳和編、薬事日報社)で、「40~50歳頃が好発年齢である」と書いています。

さて、先に触れた、鷲尾いさ子パーキンソン病説の震源となった週刊誌記事は、「重病」「完治の難しい病気」「仲村家は深刻な事態」などの表現をならべながら、病名をいっさい出していません。ですが、何らかのかたちですでに病名を知っていると思われる菅原道仁医師の、「50~60才くらいのかたに多い病気」という取材回答がふくまれています。

『ヒトとの動物の関係学会誌』など特別販売

ヒトと動物の関係学会が、学会誌の特別販売を行っています。『ヒトとの動物の関係学会誌』は、通常は1冊2500円するのですが、一部を除き500円に下げるという、とても思いきった企画です。また、動物観研究会の会誌『動物観研究』も、同様の特別販売の対象になっています。特別販売は、まもなく終わりますので、興味のある方はお急ぎください。