生駒 忍

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特例民法法人は11月いっぱいまでです

シリーズ第21弾です。

ワークブック421ページに、法人について説明されています。そこでは、「公益法人は、一般社団法人と一般財団法人とに区分される。」と書かれています。ですが、すぐ後に、「2001(平成13)年制定の中間法人法が廃止され、新たに公益社団法人および公益財団法人の認定制度が設けられた」とあります。この書き方ですと、公益法人は新旧2種類ずつ、合計4種類に分けられるようにも、あるいは、大きな区分は2種類であって、公益社団法人は一般社団法人のうち認定を受けたもの、公益財団法人も同様、というようにも読めてしまいます。

実際のところは、現時点でも、ワークブック公刊の時点でも、6種類に区分されるとみるのが適切です。一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人の4種のほかに、新公益法人制度の前からあるものが特例民法法人となっている、特例社団法人および特例財団法人があります。ただし、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律44条や46条にあるように、特例民法法人は、どちらもことしの11月いっぱいまでしか存続できません。

コンテンツツーリズムの学術団体

ここ数年で、コンテンツツーリズムの知名度が高まりました。学術団体も、いくつかつくられています。

コンテンツツーリズム学会は、2年半ほど前に立ちあがりました。それとは別に、コンテンツツーリズム研究会というところも、前後して現れていたのですが、団体のウェブサイトが見あたらなくなりました。3年くらい前から、http://www.contents-tourism.com/ にあったと思うのですが、ドメインごと消えてしまいました。学会のほうの http://www.contentstourism.com/ とまぎらわしいですが、goo.co.jp事件のようになったのでしょうか。関西コンテンツツーリズム研究会というものもあるようですが、ここもウェブサイトは見あたりません。そして、名前にコンテンツツーリズムとついてはいませんが、ものがたり観光行動学会もあり、この秋には、「若者はナゼ旅をしなくなったのか」をテーマとする第3回大会を予定しています。ここは、西日本に重心があるようです。

ソシオメトリーは集団心の計測ではありません

シリーズ第20弾です。

ワークブック66ページに、「集団の心理的な特徴を数学的に研究することを、ソシオメトリーという。」とあります。これは、誤解をまねく表現であると思います。

ソシオメトリーは、特定個人の回答だけでは成立せず、集団が調査対象であることが求められます。ですが、マクドゥーガルの集団心のような、集団自体が持っていると想定されたものを見るわけではありません。もちろん、ごく広義にとって、たとえばThe SAGE encyclopedia of social science research methods vol. 1(SAGE Publications)にある、"forms of measurement in the social sciences that are concerned with measurement through SCALES"という定義もあるにはあるのですが、この場合は特に心理的なものに限ることもないでしょう。また、計算処理はたしかに行われるとしても、数学的に研究するというイメージでとらえるのは、やや不自然に思えます。なお、Research methods for criminology and criminal justice 3rd ed.(M.L. Dantzker & R. Hunter著、Jones & Bartlett Learning)では、定量的研究法ではなく、定性的研究法として、エスノグラフィーやフィールド観察と同じカテゴリに分類されます。

家族研究・家族療法学会大会の交流会会場

きょう、日本家族研究・家族療法学会第30回東京大会のサイトの更新があり、自主シンポジウムの時間割と部屋割が発表されました。これを見て、さっそくスケジュールを固めた方も、いろいろと迷っている方も、それぞれいるのではないかと思います。

初日夜の交流会も、メニュー例の画像がとても注意をひいて、つい予約を急ぎたくなるようになっています。交流会のためのページがつくられ、そこが634.phpであるというところにも、センスが感じられます。もう忘れている方もいるかもしれませんが、交流会会場はホテルイースト21東京だと決めてあったところを、2月ごろでしたでしょうか、スペース634へと変更したのでした。スカイツリーのすぐ下になる前は、スカイツリーが見えることを売りにしているところだったのです。大会ポスターにスカイツリーがデザインされているのは、大会会場のタワーとは別のタワーだという点では奇妙なのですが、理由はそのあたりにあったのだと思います。ポスターは前からあのデザインで公表されていて、交流会会場の変更の後であのようにしたわけではありません。それは、今ではトップページからはずされてしまったindex_title1.jpgを見ればわかります。

女性介護者に年齢不詳者がいます

シリーズ第19弾です。

ワークブック111ページに、「「国民生活基礎調査」(平成22年)によれば、要介護者と同居している主な介護者は配偶者が最も多く、次に、子、子の配偶者になり、その約7割は女性である。(図6参照)。」とあります。句点の使い方が、明らかに誤っています。また、「国民生活基礎調査」が指しているものについて、混乱をまねく書き方になっています。

国民生活基礎調査は、厚生労働省が行っている年1回の全国調査です。標準社会福祉用語事典[第2版](秀和システム)を見ると、"Comprehensive Survey of Living Condition of the People on Health and Welfare"という英名となっていますが、厚労省の英語サイトでは、Comprehensive Survey of Living Conditionsと書かれています。国民生活基礎調査規則4条2項にあるように、3年ごとの大規模調査と、その間の2年での簡易調査からなっていて、今年は大規模調査が予定されています。その前の大規模調査は、2010年に行われていて、結果は1年後の2011年に概況がウェブ上で公表され、2012年に刊行されました。調査の結果を刊行したものも「国民生活基礎調査」と題していて、大規模調査の年は全4巻からなります。ワークブックにあるデータは、平成22年 第2巻で扱われているものです。ですが、ワークブックの書き方では、平成22年に刊行された「国民生活基礎調査」、つまり平成20年 国民生活基礎調査を指しているようにも読めてしまいます。もちろん、この2010年に刊行されたものには介護に関する調査データがないことを知っている人でしたら、誤解のしようがないのですが、不親切な書き方であると思います。

ここで参照されている図には、「図6 要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合2010(平成22)年」というタイトルがついています。この書き方であれば、2010年の刊行ではなく、2010年時点の調査結果であることがわかりやすいですので、あとは年の前にスペースを入れてあると、なおよかったと思います。なお、図の右下に、「主な介護者の年齢不詳の者を含まない。」という注記があります。意味のとりにくい表現ですが、これは厚労省の発表からそのまま載せていることによります。平成22年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ-3に、画像化されて字がつぶれぎみですが、まったく同じ表現があります。計算するとわかりますが、女性のほうに、調査票の年齢の欄を飛ばしたのでしょうか、ある程度の不詳者がいるようです。