生駒 忍

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都道府県社会福祉審議会への諮問者

シリーズ第6弾です。

ワークブック228ページに、都道府県に関する福祉行政についての説明があります。その一番下に、「都道府県には、社会福祉法に基づく地方社会福祉審議会の設置が義務づけられており、都道府県知事や政令指定都市、中核市の長の諮問に答え、関係行政庁に意見具申を行うことができる。」とあります。「諮問」には、ふりがながふられていて、親切だと思います。ですが、内容は、適切ではありません。

地方社会福祉審議会は、社会福祉法の2章に基づいています。7条は、都道府県、政令指定都市、および中核市に、この審議会が置かれると定めています。そして、7条2項には、「地方社会福祉審議会は、都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し、その諮問に答え、又は関係行政庁に意見を具申するものとする。」とあります。このワークブックでは、196ページから197ページにかけて、社会福祉法のこの部分を取りあげています。こちらは、条文をそのまま示しているだけですので、適切でないというようなことはまったくありません。

228ページのほうが適切ではないのは、まず、意見具申の主体です。「諮問に答え」「意見具申を行うことができる」のは、この文のつくりですと、「都道府県」であるようにも読めます。ですが、都道府県社会福祉審議会は、都道府県知事に任命された委員からなり、知事の監督の下に置かれるとはいっても、都道府県の組織ではなく、附属機関です。ですので、この審議会の活動は、都道府県の活動ということにはなりません。

また、主体が都道府県ではなく、その地方社会福祉審議会であると読んだとしても、やはりまちがいがあります。都道府県に地方社会福祉審議会が置かれることはたしかですが、その審議会は、都道府県知事の諮問に答えます。政令指定都市や中核市の長の諮問は、それぞれの市の地方社会福祉審議会が受けるのですから、都道府県社会福祉審議会の出番ではありません。

ちなみに、これらの審議会の呼び方ですが、社会福祉法7条には「社会福祉に関する審議会その他の合議制の機関(以下「地方社会福祉審議会」という。)」とあります。以前の社会福祉事業法では、6条2項にこれに対応する条文がありますが、単に地方社会福祉審議会とだけあります。地方分権推進委員会第2次勧告が反映されたのだと思われます。もちろん、テキスト等で取りあげる際には、一般的に使われる呼び方として、地方社会福祉審議会で通してかまわないでしょう。ですが、かつて「中央社会福祉審議会」は実在しましたが、「地方社会福祉審議会」という名前の審議会はどこにもなく、それぞれは自治体名+社会福祉審議会と命名されるのが一般的で、それらをまとめて呼ぶ場合の呼び方だということも、どこかで触れておけると、なおよいと思います。

名古屋工学院専門学校非常勤公募

名古屋工学院専門学校が、PC非常勤講師の公募を出しているようです。Excel2010の授業の補助のお仕事で、1コマ45分あたり1500円とのことです。

グループ適用制度には特例子会社が必要です

シリーズ第5弾です。

ワークブック516ページに、障害者雇用率制度に関する諸制度の説明があります。そこの側注に、「2009(平成21)年4月から、特例子会社がない場合であっても、企業グループ全体で雇用率を算定するグループ適用制度が創設された。」とあります。これは、適切ではありません。

実雇用率を複数の事業主で通算できる制度のうち、最初につくられたのは、障害者雇用促進法44条に基づく特例子会社制度です。その後、2002年には45条によるグループ適用制度が、2009年には45条の2による企業グループ算定特例と、45条の3による事業協同組合等算定特例とが始まり、現在のかたちになりました。グループ適用制度については、厚労省のウェブサイトの、「特例子会社」制度の概要にある図が、わかりやすいと思います。いっぽう、企業グループ算定特例については、「企業グループ算定特例」(関係子会社特例)の概要に説明があります。そして、見ればすぐわかるように、ワークブックの記述で説明されていたのは、グループ適用制度ではなく、企業グループ算定特例のほうです。特例子会社がなければ、グループ適用制度を適用することはできません。

呼び方が似ているために、混同しやすいのでしょう。労働実務事例研究 平成22年版(労働新聞社)にも、当時まだ始まって間もない企業グループ算定特例について、「グループ会社のグループ適用制度」という、とてもまぎわらしい表現で問うところがありました。精神保健福祉士受験暗記ブック2013(飯塚慶子著、中央法規出版)には、「雇用率算定の特例」という表があり、このまぎらわしい2制度に対して、「違いに注意!」と付記して注意をうながしています。なお、この表では、45条の3に基づくと思われる制度には、「事業協同組合等算定特例等」という呼び方がされています。

製品評価技術基盤機構非常勤公募

製品評価技術基盤機構が、技術専門職員の公募を出しています。来年度いっぱいまでに最大95日の、不定期勤務になります。

選考は2段階で、1段階目の審査結果は、ほぼ即日で出るようです。また、次の面接の日程は明示されていませんが、審査結果が出て数日の間になることは明らかですので、気をつけてください。

育児休業法の育児休業は1年6か月までです

シリーズ第4弾です。

ワークブック293ページに、厚生年金保険の保険料に関する説明があります。そこに、「育児休業法による育児休業を取得期間中の者は、育児休業中の被用者年金の保険料が免除される(事業主負担も免除)。同様に、健康保険など被用者医療保険も保険料が免除される。」とあります。ここまでは、まちがいではないでしょう。育児・介護休業法という、より一般的な略称を使っていないことが、やや気になるくらいです。ですが、続いて「免除期間は3年である。」とあって、たしかに最大3年までの免除が可能になっているとはいっても、このように並べてしまうと、誤解をまねくように思います。

育児休業がどれだけ認められるかは、常勤の公務員なら子どもが3歳になるまでですし、民間企業であれば、法定外で自由に長く定めることもできます。ですが、文中には、育児休業法による育児休業とあります。育児休業法2条1号の定義からは、9条の3を除くこの法律でいう育児休業は、原則1歳まで、5条3項の適用で1歳6か月までが、この法律で認められる育児休業です。これを超す、3歳までの範囲は、引きつづき保険料の免除ができても、24条にある努力義務のほうにあたり、育児休業の制度に準ずる措置という位置づけがされます。厚労省が4年前の改正に応じてつくった、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要の5ページの図では、「育児休業」と「育児休業に準ずる措置」と呼びわけています。健康保険法43条の2は、「育児休業等」という用語で、両者をくくっています。

ちなみに、産前・産後休業は、労働実務事例研究 平成24年版(労働新聞社)にも出た話題ですが、「育児休業等」には含まれません。ですが、近いうちに保険料免除の対象になることは決まっていますので、気をつけてください。