生駒 忍

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第2回日本やきもの検定の不適切出題

きょう実施された、第2回日本やきもの検定を受けてきました。午後は別の検定の仕事があって、その前にまにあう3級だけの受験です。

岐阜では盛りあがっているのかもしれませんが、東京会場は、ひと教室のはしの数列の席を使うだけの、とても小規模な開催でした。くばられた問題冊子の表紙をみて、検定のロゴの画質や、14項目からなる試験の説明に、つくりの粗さを感じました。アマチュア感のある手づくりならけっこうですが、日販も新聞社も噛んでいるのにという残念さがあります。

内容は、実施概要にある3級の説明から受けるイメージよりは、かなりむずかしくつくられている印象でした。鈴木秀明という有名な資格マニアが、この3級を落として取りそこねているというのも、納得できます。はずかしながら、私も2、3問ほど不正解を出してしまったようです。もちろん、そのむずかしさのおかげで、よい緊張感をもって楽しく受験できたという面もあります。

80問を50分間で解くので、設問はとてもシンプルなものばかりでした。設問文には、選択肢との対応がやや不自然なものがかなりありましたが、慣れていないとこうなってしまうことはよくわかりますので、出題者の意図を読みながら読めばすむことです。ですが、問題028「唐物茶で使用された唐物道具とは何か。。」、047「つぎの中世の窯業地うち、唯一の施釉陶器を産出したのはどれか。」、054「オランダ東インド会社が扱った日本のやきものどれか。」といったものをみると、単にチェックが甘かっただけのようにも思えます。会場でも、2か所の訂正が伝えられました。ひとつは、「フラデルフィア万国博」を「フィラデルフィア万国博」へというものでしたが、もうひとつが「セセッション」を「セッション」へという、かえって不自然なもので、修正の指示が信じられませんでした。工芸にかかわる検定の実施者が、セセッションを知らないはずはないと考えたいところなのですが、どうでしょうか。

不適切出題の可能性がある設問として、3問を指摘しておきたいと思います。まず、問題015です。志野焼の種類でないものを選ばせるという設問で、正解は「黄志野」になるはずで、他の3種類は志野の主な種類に含まれるのですが、探してみると黄志野も実在してはいるようです。たとえば、食器百貨という通販サイトでは、カタログに黄志野サラダ鉢の名を見つけることができます。また、岐阜県の白山熊谷陶料は、黄志野釉を販売しています。もちろん、見る目のある方から見れば、これらは志野とついていても志野焼としては認められないものなのかもしれませんし、それならしかたがないでしょう。その場合は、わかる方の目からみた、志野焼かどうかの見わけ方を知りたいところです。

041は、出題者の意図を読んで訳すと、縄文土器の製造、ないしはそれを使う文化が続いた年数を、「約何年以上」かで答えさせるというもので、「一万年」を選ぶのが正解でしょう。しかし、他の選択肢に「八千年」がありますので、へりくつのようですが、これも「以上」ということでは、誤りではないことになります。なお、「一万年五千年」という、ふしぎな選択肢もありました。五十歩百歩にやや似ています。

069は、唐三彩がどのような種類のやきものなのかを選ぶもので、正解は「陶器」のようです。ですが、日本側の考え方では陶器であると考えるのが当然なのですが、現地の考え方での分類をとるのでしたら、「磁器」になるともいえるのです。大陸では、無釉のものが陶器、施釉のものが磁器というとらえ方があるようで、唐三彩は名前の由来からもわかるように施釉です。中国国際放送局による中国百科の第二十章では、唐三彩は早くても十世紀の発生だととれる、誤った記述もあるのですが、磁器の話題としてあつかわれています。

福岡市読書相談員公募

福岡市が、読書相談員の公募を出しています。原則として来年度いっぱいの雇用で、年間を通じて職務に従事できる健康な人でないといけないそうです。

暗記ブックの3年間での改善ポイント

少し前に、精神保健福祉士受験暗記ブック2013について取りあげました。その中で、この本はくせが強いと書きました。ですが、少なくとも、私が持っている2013年版と2010年版とを比べると、改善されたところがいろいろあることがわかります。

表紙のデザインが変わったのは、この本にかぎったことではなく、中央法規出版の福祉士受験関連本に共通することですが、前の株式会社ジオによるものよりも、今のタクトデザインによるもののほうが、しろうとらしさのないデザインになっていて、ずっとよいと思います。暗記ブックのページ数は、3年の間に約25%も増えていて、将来が心配なほどのハイペースですが、それでもくせの強かった内容は削られています。2010年版にあった「精神科ソーシャルワーカーの教育課程の形成」という節は、ロンドン大学の関連コースを開設年順に並べたり、ヤンセンによるリッチモンドフェローシップの創設を取りあげたりする、なかなかほかが手を出さないところを攻める内容だったのですが、まるごと消えました。国立高度医療専門センターの一覧なども、なくなりました。

細かいところでも、いろいろと改善がされています。その中から抜粋して、2013年版の掲載ページ順に挙げてみましょう。

・脳血栓と脳塞栓とを比較する表で、脳血栓の進行は「徐々に」であるのに対して、脳塞栓は「超急激」とありましたが、2013年版では1文字はずして、「急激」となりました。

・マズローの欲求階層説の上から2番目が、「自尊と尊敬」から「承認」に改められました。

・フロイトの発達理論における男根期の時期のめやすが、6歳までだったのが5歳までになりました。

・年金制度の改正の動向をまとめた表で、「賃金スライド→物価スライド」をまるごと赤い太字にしてあったものを、間の矢印はふつうの黒字にして、二つが別々の用語であることがわかりやすくされました。

・個別援助アプローチのモデルを並べた表で、一人だけ名字のみではなかった「ヴィヴィアン・バー」が、単に「バー」になりました。

・精神保健福祉援助技術に関するカタカナ語を五十音順に列記したコーナーで、2010年版には漢字2文字であらわした「使われる場面」がそえられていましたが、すべてなくなりました。

・就労継続支援のA型とB型とを比較する表で、労働法規の遵守はA型で「○」、B型は「△」とだけあったのですが、2013年版ではそれぞれ「適用」と「-」となり、B型のほうには表の下の注で説明が加わりました。

・障害者の職業リハビリテーションにかかわる各種センターの設置数が、いつの時点でのものなのかがわかるようになりました。

会津大学短期大学部非常勤公募

会津大学短期大学部が、非常勤講師の公募を出しています。授業形態が隔週かクォーターかのどちらかになることと、選考の面接がある場合には電話でされることとに、気をつけてください。

諾成・双務契約の国試出題を当てた暗記ブック

精神保健福祉士受験暗記ブック2013は、中央法規出版が毎年出している精神保健福祉士国家試験対策本のひとつで、その中ではおそらく、最もくせのあるものだと思います。小さな判型で、情報量よりも見やすさを優先したつくりですので、これで学べる量はわずかです。しかも、同時発売の社会福祉士受験暗記ブック2013とは、共通科目の部分などを使い回しています。それでも、このシリーズは、毎年ある程度売れているようですし、試験会場に持ちこんで、ぎりぎりまでこれにかじりつく人さえいます。

私も、くせの強さが気になってしまうこともあって、以前は失礼ながら、あなどっていました。ですが、いわゆる「新カリキュラム」最初の試験となった今年の出題を見なおすと、この小さな一冊に厳選されていたポイントをつかんでおくだけでも、多少の力になることがわかってきました。印象的な例を挙げると、共通の問題78は、諾成・双務契約を選択させるシンプルな設問で、民法をかじったことのある人には、サービス問題のようなものです。ですが、これはたとえば、あのワークブック共通科目編をすみずみまで探しても、423ページに「諾成主義」が理解できる一文があるだけですので、福祉ひと筋でしか学んでこなかった人には苦しそうです。いっぽう、暗記ブックをみると、典型契約についてまとめた表が、140ページに出てきています。表には12種類の契約が並んでいて、民法をふつうに学んだ人は、13にはなっていないことに困惑しそうですが、これは組合、終身定期金、和解を表の外に出してしまい、委任と寄託とは片務契約の場合と双務契約の場合とをそれぞれ分けたことによります。この配慮の上に、表の上には赤で囲みが二つ並んで、双務のおさえ方と、要物・諾成の分け方とを提案しています。みごとな的中です。

そうは言っても、さらに調べてみると、新カリキュラムに伴う変化などを推測して、今年の出題を当てる勝負をしかけていたわけでもなさそうだということが見えてきます。私の手もとには、この暗記ブックのシリーズは、今年のものと、2010年版との2種類があります。2010年は、共通科目が重なる社会福祉士のほうの「新カリキュラム」の最初の年で、そのためカバーと表紙との両方に「新試験対応」と書いてあります。そこで、この2冊を比べてみると、内容はかなりの部分が重なっています。たとえば、先ほど触れた典型契約の表は、2010年版ですと122ページに、まったく同じものが載っています。表の上についた囲みのデザインに変化があるだけで、あとはそっくりなのです。他の内容についても、法律や制度が変わったところは当然変わっていますが、そうでもない限りはかなり安定しています。このようすですと、今回あらたにねらいをつけたのではなく、おそらくは毎年同じものを載せ続けていて、その中に今回の出題に当たったものがあったということなのではないかと思います。ルーレットやドボンで見かける、いつまでも同じ数をねらい続けるやり方のようなものですね。もちろん、間の2011年版や2012年版は、持っていないので確認できていません。ひょっとすると、毎年同じなのではなく、3年周期で回していて、そのために2010年版と2013年版とならば合致するという可能性も、一応は考えられますが、どうでしょうか。