生駒 忍

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女性介護者に年齢不詳者がいます

シリーズ第19弾です。

ワークブック111ページに、「「国民生活基礎調査」(平成22年)によれば、要介護者と同居している主な介護者は配偶者が最も多く、次に、子、子の配偶者になり、その約7割は女性である。(図6参照)。」とあります。句点の使い方が、明らかに誤っています。また、「国民生活基礎調査」が指しているものについて、混乱をまねく書き方になっています。

国民生活基礎調査は、厚生労働省が行っている年1回の全国調査です。標準社会福祉用語事典[第2版](秀和システム)を見ると、"Comprehensive Survey of Living Condition of the People on Health and Welfare"という英名となっていますが、厚労省の英語サイトでは、Comprehensive Survey of Living Conditionsと書かれています。国民生活基礎調査規則4条2項にあるように、3年ごとの大規模調査と、その間の2年での簡易調査からなっていて、今年は大規模調査が予定されています。その前の大規模調査は、2010年に行われていて、結果は1年後の2011年に概況がウェブ上で公表され、2012年に刊行されました。調査の結果を刊行したものも「国民生活基礎調査」と題していて、大規模調査の年は全4巻からなります。ワークブックにあるデータは、平成22年 第2巻で扱われているものです。ですが、ワークブックの書き方では、平成22年に刊行された「国民生活基礎調査」、つまり平成20年 国民生活基礎調査を指しているようにも読めてしまいます。もちろん、この2010年に刊行されたものには介護に関する調査データがないことを知っている人でしたら、誤解のしようがないのですが、不親切な書き方であると思います。

ここで参照されている図には、「図6 要介護者等との続柄別にみた主な介護者の構成割合2010(平成22)年」というタイトルがついています。この書き方であれば、2010年の刊行ではなく、2010年時点の調査結果であることがわかりやすいですので、あとは年の前にスペースを入れてあると、なおよかったと思います。なお、図の右下に、「主な介護者の年齢不詳の者を含まない。」という注記があります。意味のとりにくい表現ですが、これは厚労省の発表からそのまま載せていることによります。平成22年国民生活基礎調査の概況 Ⅳ-3に、画像化されて字がつぶれぎみですが、まったく同じ表現があります。計算するとわかりますが、女性のほうに、調査票の年齢の欄を飛ばしたのでしょうか、ある程度の不詳者がいるようです。