生駒 忍

記事一覧

第6回不安障害学会大会の演題募集の情報

きょう、第6回日本不安障害学会学術大会のウェブサイトで、演題募集の案内が公開されました。以前の記事から数日で、サイトらしいかたちにはなったのですが、それから間があいての新しいページで、学会の入会案内や、若手優秀演題賞の情報もあります。

若手賞について、「本学会では、若手研究者の育成をひとつの大きな主旨としております。」という誤字があることも含めて、前回とほとんど同じ文言のページになっています。応募方法の(1)の中ほどにある「•若手優秀演題賞にお申し込みの方は、抄録本文の最初に「若手優秀演題賞申込」とご記入ください。」を、行頭文字も含め、すべて赤い文字にする変更は加わっています。記入もれが多いのでしょうか。そういえば、異文化社会アメリカ 改訂版(示村陽一著、研究社)に、電車やバスで「お忘れものがないように」などとアナウンスしたら、アメリカでは一人前の大人ではなく幼児向けになるというお話がありました。

募集の締切は、「平成25年11月6日(水)正午」だそうです。時刻まで明示されていることに、気をつけてください。今年2月に札幌で開催された前回大会で、5回にわたって締切の延長がくり返されたことは、記憶に新しいと思いますが、今回はそこまでにはならないでしょう。私は、あって1回前後だろうと見こんでいます。

SNSへの不適切投稿をする人の心理と心理学

きょう、msn産経ニュースに、アルバイトの不適切投稿防止へ SNSに特化した教育機関オープンへという記事が出ました。タイトルを見て、SNS上で教育を行うのかと思ってしまいましたが、実際は、主催者のところへ出向かせての講習というかたちのようです。

記事の中ほどに、「法律やITの専門家ら複数の講師が担当し、これまでのSNSへの不適切な投稿例を紹介し、気の緩みなどから非常識な画像を投稿する心理を解説。」とあります。「3時間程度の1回完結型」に、講師を複数用意するのは、力が入っているとも、非効率ともいえそうですが、そこに心理の専門家は挙げられていません。「心理を解説」する内容なのにと、少し引っかかってしまう方もいるでしょう。ですが、少なくともアカデミックな心理学者には、こういう切りとり方は、あまり得意ではないことが多いと思います。こういうというのは、「~する(人の)心理」というものです。どうみても心理のお話なのですが、心理学はこういう切りとり方を、あまりしませんし、一方で、外では相当な需要があります。たとえば、教えて!gooの無理やり酒を飲ませる人の心理を見ると、この問い自体だけではなく、画面右にある「このQ&Aを見た人がよく見るQ&A」にも、このタイプのものがびっしりとならびます。発言小町にも、毎日ランチ画像を送ってくる新人など、いくらでもあるパターンです。

逆に、心理学がきちんと取りあげてきたものが、ほかの学問の人に横どりされているようなことも、よく見かけます。れっきとした認知心理学の知見が、行動経済学や「脳科学」のもののようにされていることは、めずらしくありません。また、ホリデーオート 2013年10月号(モーターマガジン社)には、いわゆる「若者のクルマ離れ」を、認知的不協和で解釈する記事がありましたが、これが社会学の概念ということにされていました。もちろん、心理学ではもう古い考えなのは、前にも取りあげたRessurectionというブログの、To doという記事にもうかがえますし、あなたへの社会構成主義(ナカニシヤ出版)などの著作で知られるK.J. ガーゲンが、40年も前に認知的不協和理論を突き、そして社会心理学全体を突いたことも有名でしょう。

楽器練習の認知コントロールへの影響の報道

セント・アンドルーズ大学の研究グループによる、楽器練習が認知コントロールに影響する可能性を示す研究が、報道に乗りつつあります。その論文は、ScienceDirectで全文公開がはじまっています。

 Jentzsch, I., Mkrtchian, A., & N. Kansal (in press).
Improved effectiveness of performance monitoring in amateur instrumental musicians. Neuropsychologia.

時差の関係もありますが、きのうあたりから、各地の報道機関が次々に取りあげています。主なものを挙げてみましょう。

 BBC News: Playing musical instrument 'sharpens mind' says St Andrews study

 Mail Online (Daily Mail): Forget brain training: Playing a musical instrument can sharpen your thoughts - and help ward off depression and dementia

 University Herald: Playing musical instruments helps avoid mental illness, study

マスコミ関係で、もっと早くから取りあげていたのは、Pacific Standardです。隔月刊の紙媒体ではなく、トム・ジェイコブスという記者によるブログ記事で、研究がていねいに紹介されました。アメリカン・ジョークもついています。

 Want quick, accurate thinking? Ask a musician

一方、わが国ではまだ、取りあげたところが見あたりません。これからでしょうか。以前に書いた、「情けは人のためならず」調査の報道のぶれでの読売のようなこともありますので、まだ可能性はあります。

大紀元には、きょう掲載されました。BBCからというかたちをとっています。

 研究:音乐家的大脑“更敏锐”

「延奇」とあるのはもちろん、清朝王族ではなく、Jentzschの音写です。カタカナがなければ、何ごとも漢字なのです。そういえば、PHP 2013年8月号(PHP研究所)で金田一秀穂が、カメレオンを漢字で書くのがわからないと書いていました。

「心理学から探る人間の心のルーツ」全3回

来月9日から、宇品カレッジⅠ期「心理学から探る人間の心のルーツ」がはじまります。県立広島大学と宇品公民館とが連携して開催します。先月、ちょうどこの担当講師の方とお話ししたときにも出た話題でしたが、県立広島大学だと伝えても広島大学だと思われがちで、再度強調するのだそうで、こちらは会場から連想するとわかりやすいように、県立のほうです。

全3回の講座で、タイトルからみると、進化心理学のお話のように見えますが、それは最終回、3回目に取りあげる予定になっています。2回目が個体発生、3回目が系統発生で、1回目はというと、心理学の発生、心理学史や心理学論になるようです。心理学の「主要な3つの立場の考え」、何と何と何なのか、わかりますでしょうか。また、ちらしのつかみの文章に、心について、「私たち人間を助けてくれると同時に苦しめることもあります。」とあって、人間と心とを別ものと位置づける立場がうかがえて、特徴的であるように思います。臨床心理学 13巻4号(金剛出版)の臨床ゼミのコーナーで、「私」と「脳」とを別ものとしてとらえることの是非が論じられていたのを思い出します。

教育心理学フォーラム・レポート廃止の告知

きょう、日本教育心理学会が、教育心理学フォーラム・レポート廃止のお知らせを、学会ウェブサイトに掲載しました。廃止決定は、すでに機関誌で公表ずみですし、それ以前に、もともと存在を知らなかった方もいるのではないかと思います。知っていても、実物を見たことのない方、ひとつも持っていない方が、会員でも相当数いるかもしれません。開始された1989年7月とは、学術資料の発表の機会やあり方はずいぶんと変わりましたので、「審議の結果,教育心理学フォーラム・レポートはその役割を十分に果たし終えたと判断」したのは、「果たし終えた」という重言のような表現はともかくとしても、もっともなところだと思います。欲を言えば、フォーラム・レポートについてのページで「準備中」のままになっている、フォーラム・レポートの一覧を、四半世紀の総括として、公表して恒久的に残してほしいところです。

関連分野で、似たような制度でなお続いているものとして、日本認知科学会テクニカルレポートがあります。こちらは、10年近く前に、学会サイトでのPDF配布に切りかえて、入手がとてもかんたんになり、発行状況もすぐわかるのが、大きなちがいだと思います。現在、最新のものは、半年前に出た百羅漢です。今月に出た最新の機関誌の、ブルーページの「テクニカルレポートについて」には掲載されていないのですが、このようにもう公表ずみです。