生駒 忍

記事一覧

Rコマンダーを取りあげた最近の書籍

Rコマンダーが、着実に知名度を上げています。フリーの統計ソフトのRの、若い方にはしきいが高いCUI環境を、GUI状にするもので、こちらもフリーです。

そのRコマンダーを取りあげた書籍も、今年になっていくつも出てきました。まず、あまりに想定外だったのは、第11版 現代社会福祉用語の基礎知識(学文社)です。用語の取捨選択にくせがあって、そこがおもしろいところでもありますが、ここにRコマンダーが立項されました。これをきっかけに、福祉分野でも利用者が増えるでしょうか。また、改訂をきっかけに、読む統計学 使う統計学[第2版](広田すみれ著、慶應義塾大学出版会)がRコマンダーへ対応しました。

そして、Rコマンダーをタイトルに打ちだした、事例による認知科学の研究法入門 Rコマンダーの活用法と論文の書き方(東京大学出版会)です。論争をよぶ書ではまったくないはずですが、Amazon.co.jpでの評価は両極にわかれました。ですので、私からは、表紙についてふれておきます。近所の本屋でこれを見かけて、とても注意をひいた表紙デザインです。「感性」の2文字の入り方を頂点として、独特のセンスなのです。しろうとのデザインでないことは明らかでしょう。もちろん、最近ではVOLT 2013年10月号(徳間書店)でドロンジョーヌ恩田も書いている、おしゃれが過ぎるのも逆にかっこ悪いというパターンでもありません。林修の仕事がうまくいく「話し方」講座(宝島社)での言いかえ表現としての「独特のセンス」ではなく、文字どおりにそう感じたのです。

東京都保健福祉局非常勤公募

東京都保健福祉局が、専務的非常勤職員の公募を出しています。社会的信望を求められるお仕事です。

社会保険は「健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入」とありますが、年齢によってはもうひとつ、保険料を折半してもらえると思います。労災保険については、労働者災害補償保険法3条2項の適用でしょう。

日本語版ウィキペディアの日臨心の記事の加筆

日本臨床心理学会という団体があります。会員数では日本心理臨床学会の数パーセント程度の、小さな団体ですが、日心臨よりも歴史は古いです。日本語版ウィキペディアの、あの心理系の記事の充実度の低い環境の中で、単独記事がつくられている10あまりの心理系学会のひとつでもあります。

その日本臨床心理学会の記事が、きのうからきょうにかけて、大規模な加筆を受けました。更新にリアルタイムで出くわして、快哉をさけんだ方も、あきれてしまった方も、いるのではないかと思います。

更新内容を見れば、どういう立場からの加筆なのかは、ひと目でわかります。ひまな愉快犯でもない限りは、日臨心デコを思い浮かべざるをえません。わが国の心理系のブログの中で、特定の現実的問題に関する批判的な主張がくり返されているところとしては、基礎系ではまた別の個人ブログがありますが、臨床系ではここがトップだといえます。

一連のウィキペディア記事の更新はすべて、うぶすな まことという新規ユーザによるものです。このユーザは、10(火)にアカウントを作成し、12(木)の夜に最初の更新を行いました。その後、少しおいて、きのうの夜から、活発な活動をみせています。ウィキペディアのルールを知らないのか、知っていて無視しているのか、どちらなのかはわかりませんが、{{複数の問題}}の出番になるような書き方がされています。

重要なお知らせページの内容が差しかえに

きょう、日本心理学会第77回大会のサイトに、更新がありました。確認できている限りでは、今月4回目となります。

今回の更新は、What's newによると、「懇親会、無料シャトルバスのご案内」「お弁当事前お申込の方のお渡しについて」「最新版プログラムに更新しました」の3件です。そのうち、前の2件は、重要なお知らせページの内容を差しかえて公開されました。つい先ほどまで、このページには、「大会発表賞の新設について」と、「臨時会員として第77回大会に当日参加される方のチュートリアルワークショップ受講申し込みについて」との2件の情報がありました。後者はもういらないと思いますが、前者については、これから行われる審査の周知として、残してあってもよかったのではないかと思います。サーバ上には、タイトルに使われていたtaikai_syou_title.gifのみが残っているようです。あのページの前回の更新では、古い情報はコメントアウトして残していたのですが、今回はそれも含めて、すべて差しかえられました。

今回3件目の更新は、プログラムを最新版にしたというところだそうです。こうして、できるだけ新しいものが手に入るようにする配慮は、ありがたいと思います。ですが、最新版は前のものとどこがどのように変わったのかが、そう簡単にはわかりません。送付ずみのプログラム冊子よりも、一部のみが新しい情報になったのだと思いますので、更新ポイントを教えてもらえないと、どこが古いかがつかめません。そのどこかわからない一部が古いままの冊子を見て参加したら、まちがったり恥をかいたりする不安がありますので、冊子は捨てたほうが安心ということにもなりかねません。

そこにもう反映されているのかもしれませんが、今回はまだ、発表変更の情報が発表されていません。前回の76回大会では、08.pdfというかたちで、とてもシンプルな文書デザインですが、34本の変更情報がまとめられていました。それとも、今回はまだ、変更は生じていないのでしょうか。

氷見市立博物館による地域回想法と回想法

きょう、北日本新聞社のサイトであるwebunに、「回想法」で脳生き生き 氷見市立博物館、普及へ実行委という記事が出ました。なお、webunにまだ登録していない場合には、リンク先の記事を読むことができないようになっていますので、ご理解ください。

これは、氷見市立博物館が、地域回想法の事業を拡大するというニュースです。地域回想法は、心理学からの研究がなかなかなく、用語としては聞いたことのない心理学者も多いと思いますが、それほど斬新、特殊な技法というわけではありません。ですが、それがどんなものなのかは、定義があいまいだったり、まちまちだったりして、混乱しやすくなっています。もちろん、地域回想法ハンドブック 地域で実践する介護予防プログラム(NPOシルバー総合研究所編、河出書房新社)をあたれば確実なのですが、中部地方を中心に作られつつある地域回想法の拠点それぞれが、それぞれな表現をとっているようで、困ってしまいます。

特に気になるのが、地域回想法とふつうの回想法とはどのように違うのかが、なぜかぼかされやすく、言うまでもなく同じものであるようにもされてしまいがちなところです。今回の記事でも、冒頭で「昔の生活用具を見たり触れたりすることで高齢者の脳を活性化させる「地域回想法」」という定義がある一方で、「回想法は1960年代に米国で提唱された。お年寄りになじみ深い生活用具や民具などを用いて、記憶を呼び起こしたり過去の体験を語り合ったりしてもらうことで脳の活性化につなげるのが狙い。」とあって、区別が見えにくいです。また、東近江市能登川博物館の博物館だより平成25年9月号には、「東近江市では「地域回想法」に取り組んでいます。「回想法」とは、懐かしい民具や写真を見たり触ったりすることで、遠い記憶を呼び起こし、当時の思い出話をしたり、民具を使って手足を動かすことで、運動機能を高めたり、脳の働きを活発にし、認知症予防に効果があるといわれています。」とあって、地域回想法の話題に回想法の説明をつけるやり方をとっています。地域回想法の発信源であるNPOシルバー総合研究所のサイトでは、回想法研究研修普及事業という事業名を与え、地域回想法という用語は、最後に「地域回想法講師派遣をご希望の方はこちら」とあるところ以外では使っていません。氷見に戻ると、今回の記事の最後に紹介がある、氷見市地域回想法基礎研修のページも、回想法の説明のように見せて、結局は地域回想法になっているような書き方です。

北日本新聞社が2年近く前に出した記事に、これも未登録の場合は見られないのですが、昔の民具に触れ高齢者笑顔戻る 氷見市立博物館が「地域回想法」というものがあります。ここでの説明が、今回とはやや異なるもので、「昔の生活用具や農具などの民俗資料に見たり触れたりすることで記憶を呼び起こしてもらう「地域回想法」」と書いて、脳の活性化ではなく記憶想起になっていて、「回想法は1960年代に米国で提唱された高齢者の脳を活性化させる援助方法。北名古屋市歴史民俗資料館が2002年に介護、医療関係者との協働で、身近な地域の社会資源を活用し高齢者の介護予防を支援する「地域回想法」という概念を設定した。」ともあります。一方で、2年前のその記事に「普段しゃべらない利用者がアイロンを見てはっきり名前を答えた」「記憶を呼び起こすことで認知症の人の目がいきいきと輝き、脳の活性化を確信した」とある内容は、きょうの「普段は話をしない利用者が、アイロンを見てはっきり名前を答えた」「認知症の人の目が輝き、脳の活性化を確信した」とほぼ同じです。