生駒 忍

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『質的心理学ハンドブック』発売の情報

新曜社から、質的心理学ハンドブック(やまだようこ・麻生武・サトウタツヤ・能智正博・秋田喜代美・矢守克也編)が発売されます。メール版新刊案内132号では、来月発売予定となっていましたし、まだ新曜社通信に取りあげられていないように、ほんとうの発売日はもう少し先ですが、すでに学会先で手に入れた方もいると思います。あすまで開催されている日本心理臨床学会第32回秋季大会で、販売が始まっていますので、私は基本的に参加を認められることはありませんが、そうでない方でしたら、そこで手に入れることができます。

このハンドブックを取りあげたブログもあらわれています。きょうは、東京成徳大学の海保博之学長が、質的心理学ハンドブック」(新曜社)が発売という記事を書いて、画期的と評したほか、神奈川県立保健福祉大学の生田倫子講師による[家族心理.com]管理人ブログの、心理臨床学会2013という記事が、このハンドブックが販売されているところを公開しました。後者は、ブログ管理人が火種をつくった心理療法の交差点(岡昌之・生田倫子・妙木浩之編、新曜社)が売れているというお話ですが、その本のとなりの、角でとても目だつ位置に平積みにされたことがわかる写真が出ています。

私のところにはきょうでしたが、ちらしも届きました。Amazon.co.jpではペーパーバックとされていますが、ちらしでは上製となっていて、先ほどの生田ブログの写真を見ると、ちらしのほうが正しいはずです。なお、その生田ブログ記事が対象とした本も、Amazon.co.jpでは編著者の書き方がおかしなことになっています。

ちらしは、表面の右半分が、ほとんど目次で埋まっていて、その充実ぶりに圧倒されます。4節から5節が入った章が6本と、序章とからなっています。どの章のタイトルも、やや横長のゴシック体で書かれていますが、よく見ると、序章のタイトルだけは、そうでないようです。

臨時メルマガでの質心10回大会の注意喚起

きょう、日本質的心理学会が、メールマガジンNo.臨時30号を発行しました。会員でない方も、こちらから全文を読むことができます。内容は、第10回大会での飲食と会場アクセスに関する注意喚起です。

飲食については、大会プログラム冊子の3ページの中ほどにあることと、ほぼ同じ情報ですが、大学生協も使えないことを書きたしてあります。「昼食は各自で。」という表現は、まるでツアー旅行のようですが、条件をみたすとお弁当とお茶が出る2日目との混同をさけるためでしょうか。なお、京都でお茶のイメージで、一期一会、同じことは二度はない、という連想は、ふつうはされないでしょうし、そういうお茶は出るとしても李暁博副教授にだけだと思います。

会場については、「敬学館は南西の端にあり、正門からお越しいただく場合は5分以上歩くことになります。」とあります。私は、以前にこの建物で発表があったときに、そのときは布製ポスターにしましたので荷物の負担はほとんどありませんでしたが、東側から歩いていって遠く感じたおぼえがありますので、参加者に親切な情報発信だと思います。プログラム冊子の6ページの一番下に、同じような情報がありますが、タクシーで行く予定ではない方にも周知したかったことと、所要時間の表現を修正したかったこととがあって、くり返しのように見える案内をしているのだと思います。

東北福祉大サイトでの認定心理士資格の説明

先週末に、東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科のウェブサイトが更新されました。ほかの学部・学科に先がけて、新しいデザインになったようです。course01.htmlからcourse03.htmlまであった、各履修コースの案内のページが削除されて、学生便覧から切りだしたPDFファイルに差しかわったり、心理学との関連があまりなさそうな授業風景に見えるdwp03.jpgがはずされしたりもしましたが、基本的には情報量が増えて、充実しました。

ですが、先がけのために公開を急いだのかもしれませんが、あちこちに、まだ修正を要するところがあります。中でも、進路・就職のページにある、認定心理士資格の説明は、困ったことになっています。ほかの資格にはない、取得のための過程の説明がついていますが、「大学や大学院で所定の科目単位を充足し、日本心理学会へ入会、資格試験(試験・面接)に合格することで取得可能です。」というのは、原形をとどめないくらいに、事実と異なります。

『新世紀うつ病治療・支援論』の連名と読点

少し前に、うつ病と感情調整との関連の論者の主な著書という記事を書きました。そこで取りあげた、お茶の水女子大学の岩壁茂准教授の著書に関して、少し補足をしておきたいと思います。

単著は、そこで挙げたとおりだと思います。ですが、共著については、臨床心理学入門 多様なアプローチを越境する(岩壁茂・福島哲夫・伊藤絵美著、有斐閣)があるだけでなく、共著ということばの定義にもよりますが、新世紀うつ病治療・支援論 うつに対する統合的アプローチ(平木典子・岩壁茂・福島哲夫編、金剛出版)を含めることもできます。3名での編集で、Amazon.co.jpでは編集者の3番目のようになっていますが、実際には2番目です。分担執筆者として、連名での章も含めて、あの中で一番の分量を書いています。さらに、この本の「はじめに」は、3名の編集者の連名ではなく、2番目のこの方ひとりでの著作になっています。先ほど挙げた有斐閣のテキストでも、目次にはない「はじめに」をひとりで書いていますが、筆頭著者ですのでそれで不自然はありません。ですが、金剛出版のものは、「はじめに」はこの2番目の方の単著で、「結語にかえて」は3番目ひとりで、編集後記は編者の3名の連名です。

金剛出版のウェブサイトで、そのはじめに結語にかえて編集後記が公開されています。気づいている方もいるかと思いますが、読点が「,」で統一されているように見えて、例外があります。「はじめに」では、「第18章で全体のまとめを示し,編者の一人である福島による「結語にかえて」を配し、最後に編者の「編集後記」を加えた。」というところにあります。そして、そこで取りあげられた編集後記を見ると、一番最後の、「数多くの著者の専門用語と語彙の統一を図る細やかな作業,全体を読みやすいものにするためのご尽力、そして編者への暖かいお心遣いにより本書が完成したことを思い,心から感謝いたします。」に入っています。細かい統一作業への感謝のことばの中に、あえて不統一をしのばせているのです。なお、これらの読点は、IME「ぎれ」のような、ウェブ版だけにある、盗用発見のためのものかと思いましたが、そうではなさそうです。現物でも、どちらも「、」になっています。

公募シンポジウムの通し番号入り企画タイトル

日本心理学会77回大会は、開催まで1か月を切ったところで、ひととおりのプログラムが公開されるはこびとなりました。以前に、日心77回大会1号通信等が届きましたという記事で、当初発表よりも遅れて届いた1号通信のことを取りあげましたが、なんとか準備が進んでいることがわかって、安心しています。

今回は、変更点のとても多い大会となっていますが、中でも大きな改革は、毎年百数十件を受けいれていたワークショップを全廃して、公募シンポジウムと入れかえたことでしょう。その応募は、きびしく絞られるといううわさも立っていましたが、結果的には、79件が採択となったようです。昨年の76回大会のワークショップが137件、その前の75回は131件を認めていましたので、かなりの減少なのですが、私にはなぜか、半減どころではなくなるイメージがあったので、ほっとしつつがっかりするような、変な感じです。まだある 今でも遊べる“懐かしの昭和”カタログ 遊園地編(初見健一著、大空出版)でとしまえんの「裏の顔」と呼ばれているアトラクションの、どこでいきなりおどかされるのだろうという怖さだけが高まって終わるつくりに、少し似ているかもしれません。

その公募シンポジウムのプログラムをながめて、企画タイトルの雰囲気が変わったことに気づいた方も多いでしょう。シリーズの通し番号表記をふくむものが、激減したのです。前回のワークショップでは、137件中の45件が、シリーズ番号をつけていました。20や30もありましたし、はじめからシリーズ化を前提として、1とつけているものも11件ありました。では、今回はというと、わずか4件です。通し番号の順に挙げていくと、「エビデンスに基づく実践に役立つプログラム評価の視点(2): 介入プロセスの可視化から効果評価に向けて」(企画代表者・司会者: 安田節之)、「青年期の恋愛関係における否定的な関わり ―青年心理学の新展開(2)―」(企画代表者・司会者: 高坂康雅)、「ふと浮かぶ記憶へのアプローチ3: ふと浮かぶ記憶をいかにして測定するか」(企画代表者・司会者: 森田泰介)、「日本における数理心理学の展開XXI」(企画代表者: 吉野諒三、司会者: なし)です。激減の理由は、おそらく想像がつくかと思いますが、ゼロになってはいないのがまた、興味深いところです。ほかに、番号ではなく開催年の付記にかえたものと、前回とまったく同一の企画タイトルをあてたものとが、1件ずつあります。なお、前回に30回をむかえたあのシリーズは、見あたりませんでした。以前に書いた、一橋大の不採択ではないですが、低評価で不採択となったのでしょうか、それとも、不名誉をおそれて、不戦敗を選んだのでしょうか。あれほど長く続いてきたのに、私のまわりは一度も見に行ったことのない方ばかりなのですが、ご存じの方がいましたら、教えていただきたいと思います。