生駒 忍

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うつ病と感情調整との関連の論者の主な著書

きょう、WEDGE Infinityに、うつ発症者にみられる感情調整力の弱さという記事が出ました。1月にはじまった、うつ病蔓延時代への処方箋というインタビュー記事シリーズの、14本目です。

冒頭では、うつ病につながる人生上のできごとのタイプとして、loss、humiliation、そしてentrapmentの3種類があるとしています。ひとつ目だけなら有名ですが、一般にはまだ、あまり知られていないとらえ方で、もちろんエビデンスに基づいています。少なくとも、シリーズ8本目の、「不安」「悲しみ」「恐れ」を「人間の3大感情」だという考えよりは、一般の方々の知識に入ってほしい内容です。British Medical Bulletin 57巻の手短なレビュー、Recent developments in understanding the psychosocial aspects of depressionのように、humiliationとentrapmentとをくっつける立場もありますが、わかりやすい例示ができていることもあり、かまわないと思います。

だんだんと、感情調整の重要性へと、お話が進んでいきます。後のほうでは、これに関して、「理性の力で調整するのではなく声の調子や、優しいまなざし、顔の表情、体を触ってくれるなど右脳の働きです。」「1日中携帯の画面を見ている現象は、感情表現力を弱めてしまう。」と唱えられていて、エビデンス不足をとがめる方も出そうですが、一般向けのお話のまとめとして読むところでしょうか。

ところで、私が気になったのは、戻りますが、冒頭のインタビュイー紹介です。「共著に『臨床心理学入門 —多様なアプローチを越境する』(有斐閣)。主な著書に『はじめて学ぶ臨床心理学の質的研究』(岩崎学術出版社)など多数。」とあるのですが、まず、共著が先に、「主な著書」が後にという順序に、ふしぎな印象をうけます。そして、その「主な著書」として、はじめて学ぶ臨床心理学の質的研究 方法とプロセス(岩崎学術出版社)を出して、「など多数」としているのも、あまり見かけない書き方です。「著書に~など多数」ではなく、「主な」著書ということですので、著書の中から主なものを選んでも、多数あるのだということなのでしょうか。ですが、共著が先に分けてありますので、この方の単著の本をさがすと、岩崎学術出版社のもののほかには、プロセス研究の方法(新曜社)と、心理療法・失敗例の臨床研究 その予防と治療関係の立て直し方(金剛出版)くらいしか、私には見つけることができませんでした。