生駒 忍

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『新世紀うつ病治療・支援論』の連名と読点

少し前に、うつ病と感情調整との関連の論者の主な著書という記事を書きました。そこで取りあげた、お茶の水女子大学の岩壁茂准教授の著書に関して、少し補足をしておきたいと思います。

単著は、そこで挙げたとおりだと思います。ですが、共著については、臨床心理学入門 多様なアプローチを越境する(岩壁茂・福島哲夫・伊藤絵美著、有斐閣)があるだけでなく、共著ということばの定義にもよりますが、新世紀うつ病治療・支援論 うつに対する統合的アプローチ(平木典子・岩壁茂・福島哲夫編、金剛出版)を含めることもできます。3名での編集で、Amazon.co.jpでは編集者の3番目のようになっていますが、実際には2番目です。分担執筆者として、連名での章も含めて、あの中で一番の分量を書いています。さらに、この本の「はじめに」は、3名の編集者の連名ではなく、2番目のこの方ひとりでの著作になっています。先ほど挙げた有斐閣のテキストでも、目次にはない「はじめに」をひとりで書いていますが、筆頭著者ですのでそれで不自然はありません。ですが、金剛出版のものは、「はじめに」はこの2番目の方の単著で、「結語にかえて」は3番目ひとりで、編集後記は編者の3名の連名です。

金剛出版のウェブサイトで、そのはじめに結語にかえて編集後記が公開されています。気づいている方もいるかと思いますが、読点が「,」で統一されているように見えて、例外があります。「はじめに」では、「第18章で全体のまとめを示し,編者の一人である福島による「結語にかえて」を配し、最後に編者の「編集後記」を加えた。」というところにあります。そして、そこで取りあげられた編集後記を見ると、一番最後の、「数多くの著者の専門用語と語彙の統一を図る細やかな作業,全体を読みやすいものにするためのご尽力、そして編者への暖かいお心遣いにより本書が完成したことを思い,心から感謝いたします。」に入っています。細かい統一作業への感謝のことばの中に、あえて不統一をしのばせているのです。なお、これらの読点は、IME「ぎれ」のような、ウェブ版だけにある、盗用発見のためのものかと思いましたが、そうではなさそうです。現物でも、どちらも「、」になっています。