生駒 忍

記事一覧

裸の画像が「暴露」されたといううわさ話

きょう、西日本新聞の朝刊に、LINEトラブル深刻 いじめや暴力の契機にという記事が出ました。きのう書いた記事に続いて、「トラブル」続きになってしまいますが、こちらは死者も出ているという問題です。

死者というのは、3月に奈良県であった中学生の自殺事件がLINEがらみだと書かれているものです。ですが、もっと大きなニュースとなった「広島LINE殺人事件」のほうが、時間的にも、地理的にもここの読者に近いのですが、いろいろ取りあげにくかったのでしょうか。そういえば、近畿地方の事件なら、東大阪市ラブホ女子高生死亡事件が、もう2年以上も前の事件ですが、LINEつながりでの生徒死亡のはしりかもしれません。女性自身に掲載の、ネット犯罪 監視の目を避けるために横行する“隠語”にある、「部屋に入ったとたん覚せい剤を打たれて命を落とした女子高生」が、その被害者であると思われます。

記事の最後に出てくるうわさの話も、気になるところがありました。事実性に自信がなくて、それでもどうしても載せたい「事件」なので、あのような、逃げ道を固めた書き方になったのでしょうか。「別れた後に暴露された」とあるのは、その前にある「影響も広範囲だ」と組みあわせてイメージさせるところと考えられますが、暴露という表現は、情報内容に関して使うものですから、画像の電子情報を配信されたことを「暴露」というなら、新しい用法のようにも思います。また、証拠も証人も得ていないのに、いかにもありそうだというところを、しかも記者からではなく取材対象に言わせる出し方は、小ずるい印象も受けます。もちろん、いかにもありそうなありがちな都市伝説は、社会心理の議論としては興味深いところで、スクールカーストの闇 なぜ若者は便所飯をするのか(和田秀樹著、祥伝社)でも、「便所飯」は直接は一度も見ていなくても、若者にとってとても真実性が高く感じられるというお話がありました。みんなで手をつないで横並びでゴールする運動会も、誰も見ていないがいかにもありそうなので信じられているという位置づけにしつつ、和田は手つなぎゴールを実際に目撃した人を知っていると書いています。女子生徒の「裸の画像」が不慮の事故ではないかたちで流出した例はすでに実在し、自称「立命館大学の学生」によるストーカー殺人事件で、xvideosで広く開かれたものがありましたし、子どもへの性暴力 その理解と支援(藤森和美・野坂祐子編、誠信書房)の事例11-4もあります。 男子生徒では、「学校裏サイト」に掲載された滝川高校いじめ事件で、自殺例があります。

東京オリンピックに乗じた「詐欺的トラブル」

きょう、YOMIURI ONLINEに、東京五輪詐欺に注意という記事が出ました。オリンピックに乗じた不審な勧誘への注意をよびかけています。

気になったのは、まず、2件の事例まで含めて、国民生活センターが流した見守り新鮮情報第177号の内容をほぼそのまま流用した、リライト記事のようなものなのに、8日の発信からこの記事までに日数がかかっていることです。末尾にある、東京都と国民生活センターの取材回答の確保に、かなりかかったのでしょうか。

また、「詐欺的トラブル」という表現も、ふだん見かけないもののように思います。詐欺とは断定せずにぼかして、トラブルを避けたかったのでしょうか。謎だらけの日本語(日本経済新聞出版社)にも、「トラブル」は使い勝手のよい日本的表現だとあります。それでも、記事タイトルには「詐欺」とはっきり書いているので、謎が残ります。

ルール違反に見える健康心理学会の継続助成額

きょう、日本健康心理学会研究推進委員会のブログに、約2か月ぶりに新しい記事が投稿されました。今年度の研究部会への助成決定のお知らせです。選ばれた研究部会の皆さん、おめでとうございます。

今回は、「研究部会」を名のる2グループ、「研究集会」を名のる2グループ、「研究会」を名のる1グループの計5グループが助成を受けることになり、いずれも10万円ずつを受けとります。日心の研究会制度が、上限は10万円ということになっていますがその何分の一かにしかならないようになり、今年は募集回数を半減させましたし、それもすでに採否が決まり通知されているのに、ウェブサイトにある助成対象のリストは更新されないままという、右肩下がりの感があるのに対して、こちらの学会のほうは意欲的で何よりです。4グループは昨年度からの継続で、子どもと大人の発達支援研究集会のみ、新規の助成となります。

その継続のあつかいですが、学会のルールに反してはいませんでしょうか。この記事のひとつ前の記事を見ると、1(4)には助成金額について、「前年度に助成を受けたグループが引き続き助成を受ける場合は5万円以内」とあり、金額のところは下線で強調されています。ところが、継続の4グループに、どこにも10万円ずつわたすというのです。もちろん、非公開の内部規定があって、この1(4)を無効化できるようになっているのかもしれませんが、とても奇妙に思えます。この4グループはすべて、申請書の要求経費の欄に、1(4)を読まずに「100千円」と書いていたのでしょうか。それとも、5万円かそれに満たない適正な請求に、学会側が非公開の規定か何かを使って、「倍返し」したのでしょうか。もし後者でしたら、公表されたルールに反するお金は受けとれないと、超過分を返納してすじを通すグループは出るでしょうか。それとも、想定外のお金までよろこんで使いきって、健康心理学の発展につくすでしょうか。林修の仕事がうまくいく「話し方」講座(宝島社)が取りあげたまちがいの例に、「望外の幸せ」を「法外の幸せ」とするものがあったのを思い出しました。

障害者虐待で半年に3人が死亡したのでしょうか

きょう、厚生労働省が、平成24年度 都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)を発表しました。「平成24年度」とついていますが、6月に発表された「使用者による障害者虐待の状況等」についてと同様に、障害者虐待防止法の施行からの半年分の調査結果となっています。

わが国の主要な報道機関すべてが、これをニュースにしました。ですが、数値の出し方に相違があり、混乱をまねきかねない状況になっています。

こういったものでは、把握された数が基本情報として重要ですので、どこの記事もタイトルに入れていますが、ここが各社でまちまちです。読売朝日毎日日経時事通信は件数を、産経NHKは人数を入れました。読売の「1500件」とNHKの「1700人」は概数で、ほかは正確な数です。朝日、毎日は1524件で、日経、時事通信は1391件とへだたりがありますが、これは6月発表の障害者虐待防止法4章に関するものと合算するか、きょうの発表の数値にするかの違いです。人数でも、NHKと産経との違いはそこです。

今回の発表のうち、どの数値を記事中で取りあげるかにも、各社で判断が分かれています。NHKのみ、上位の都道府県を挙げていて、大阪の突出ぶりを明らかにしています。

また、死亡者数に触れたのは読売、朝日、日経、産経ですが、前2者は3人、後2者は2人としています。使用者による虐待での死亡報告はないので、これは合算の有無とは関係ありません。そこで、厚労省の発表を確認すると、きょうの発表の参考資料1では、「死亡事例: 3人」に注がつき、「うち1件は、心中事件により発覚した事例のため、1,311件には含まれていない。」とあります。一方で、参考資料3には、「養護者からの虐待等により被虐待者が死亡した事例」として「3件の事例(被害者3人)が報告された」とあり、報道で人数が分かれた理由が見えてきましたが、つまりは厚労省の発表に矛盾があったのだと思った人もいるかもしれません。ですが、おそらくここは、参考資料3では虐待「等」による死亡事例を扱ったために、心中も数に含めたということだと思います。

そこで、各社の表現を確認してみましょう。朝日は、「1311件(被害者は1329人)」に続けて「うち3人は死亡に至った。」と書いていて、1311件にこの3人が含まれるという誤った記事になっています。読売では「家族や親族らによる虐待が8割を超え、3人が死亡していた。」となっていて、これならうそではありません。日経は、「1329人が虐待を受け、被害者が死亡したケースも2件あった。」と書いていて、心中を除いています。産経はていねいで、「死亡例はいずれも家庭内であり、殺人と致死事件が1件ずつ。心中事件で発覚したため1311件に含まれない死亡も1件あった。」とまで説明されれば安心です。そういえば、THE21 2013年12月号(PHP研究所)には、「さとり世代」にはこと細かに説明したほうが不安に思われないというお話がありました。

ミネルヴァ書房が児童書への取りくみにも力

きょう、京都新聞のウェブサイトに、京の学術版元、児童書に力 図鑑や絵本78点刊行という記事が出ました。心理学書販売研究会のメンバーでもあるミネルヴァ書房の、児童書への取りくみを紹介しています。

児童書には「2011年2月から本格的に取り組むようになった」とあって、こういうことに月まではっきり書かれることはあまりないように思い、ユニークであると感じました。ですが、実際の刊行状況をさかのぼってみると、この月を境に出るようになったというわけではなく、この月に社内でのターニングポイントがあったという内部事情を記事にしたものと思われます。

「これまでの2年8カ月で78点を刊行。」とありますが、ミネルヴァ書房のウェブサイトで児童書カテゴリに入っているのは、錯視と科学(新井仁之著)など近刊のものまで含めても74件です。しかも、2011年2月より前に出たものもかなりあります。記事中に明記されたシリーズのうち、地獄・極楽なんでも図鑑はこの夏から秋にかけて出ましたが、日本の妖怪大図鑑は2010年3月に一挙刊行、日本歴史人物伝は2010年9月から順次刊行されています。「発達と障害を考える」シリーズは、記事に「全12巻」とある当初のシリーズは2006年から2008年にかけてで、ことしになって新シリーズ4巻が加わっています。