生駒 忍

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ガン・サリュート・エフェクトと小声の効果

きょう、ananニュースに、大切なことは小声がいい!? 心のプロが教える伝え方とは?という記事が出ました。「ビジネスの悩みには、相手の心理を突く言動が突破口の一つになるかも」として、「メンタルケアサロン『pureral』の代表。」による戦術の提案を紹介するものです。

まず、「1度目で意見が通らなくても、1~2 週間後に再アタックすると上手くいく確率UP。」です。「1~2 週間後」と、書き方でも間を少し空けてみせます。この「確率UP」ですが、重回帰分析で説明変数を増やすと説明率が上がるような、1回より2回のほうが成功率が高いはず、というだけではありません。「情報の信憑性は、時間が経つにつれて増します。」として、通俗的なピグマリオン効果の記事で触れたスリーパー効果の名前が頭にうかぶところを、「仮眠効果といいます」と書きます。仮眠の心身への効果とまぎらわしいので、私は使いませんが、心理学がイッキにわかる本(渋谷昌三監修、西東社)には、「仮眠効果(スリーパー効果)」、「説得のためのコミュニケーションに関する研究で注目される現象」とあります。そこでは「押しの一手」と関連づけて、女性をほめることの効果へとつなげるのですが、恋愛jpの記事、“仮眠効果”で気になる彼の気を引く方法は、喫茶店オーナーに、「“仮眠効果”というものが心理学にありまして、簡単に言うと、“押してもだめなら引いてみろ”を学術的に正しいとしたものです」「“仮眠効果”は、押されたときにその気にならなかったのに、相手が引くことによってその気になる、というものなんです」と言わせます。いずれにしても、一度とどかなかったからと、アプローチを絶ってしまわないようにということにはなりそうです。そういえば、新幹線車内にきのう流れた朝日新聞ニュースには、「野田聖子氏は推薦人確保のめど絶たず。」とありました。

次は、「会議がだれてきた時間帯こそチャンス。何か音を立てるだけで、自分に流れが。」として、「音が心理に与える効果、ガン・サリュート・エフェクト」が登場します。聞いたことのない人が多いと思いますが、なぜ、あの人の話に人はうなずくのか 仕事に役立つ武器としての心理学(渋谷昌三著、アーク出版)に登場します。これから、あつかっている本が増えるとは思いますが、福島の甲状腺がんの子どもとつんくの記事で取りあげたのべ人数のようなことにすぎないと言いたい人も出そうです。

最後は、「重要性を強調したいときこそ、小さい声を心がける。」です。京の底力(市田ひろみ著、ネスコ)での、「「鮎入りましたえ」のひと言」のようなものとは異なり、ここでは物理的に小さいことが重要なようです。リーダーに必要なことはすべて「オーケストラ」で学んだ プロ指揮者の“最強チームマネジメント"(桜井優徳著、日本実業出版社)にある、リハーサル室での「話がよく通じる」やり方や、文藝春秋 2014年4月号(文藝春秋)で養老孟司が明かした、みごとなだまらせ方に近いでしょう。

実は、最後はもうひとつあって、3番目の後半は、「それでも強く反論されたら、相手のリズムに合わせて首を振り、拍子を合わせてみる。」という、別の戦術です。直観的にはわかりますが、ぴったり合わせるのは、意外にむずかしいものです。

それで思い出したのが、けさの京都新聞朝刊に出た記事、「創作ダンス人数 ギネス新」です。伏見での「京都学生祭典」初のプレイベントを取りあげたもので、めでたいニュースなのですが、写真のキャプションに「息の合った創作ダンスでギネス記録を樹立した大学生たち」とあるのに、写真がそこまで合った印象をもたらすものではないのが、少々気になりました。朝日新聞DIGITALにきょう出た記事、京都)大学生616人、創作ダンスでギネス世界記録は、合っていたとはひと言も書かず、「踊りについていけなくなるなどして失格した」一部にも触れましたが、こちらの画像のほうが、むしろ「息の合った創作ダンス」という印象を、より強くもたせるように思います。それとも、京都新聞のものは、「樹立した」と過去形なので、創作ダンスが終わってからの何かのようすなのでしょうか。

「女特有の嫉妬心」と視野を狭める情報の害

きょう、Glittyに、大切なのは自分の人生を豊かにすること。誰にも嫉妬しない考えかたという記事が出ました。

「仕事で成功した女友だちや、自分よりも先に結婚した女友だちに、嫉妬してしまう女性。自分と他人の幸せを比べ張り合ってしまうのは、ある意味、女の性なのかもしれません。」と書き出されます。「女特有の嫉妬心」ともありますが、ぶりっこをきらう心理の記事で触れた飯田香織の主張もありますし、特有とは言いすぎのように思います。もちろん、属性によって、そういう感情の高低がある程度異なる傾向はあって、それは性別にかぎりません。韓国人の「他人と張り合う心理」の記事もご覧ください。

「スマホやパソコンを使い、いつどこにいてもネットで情報が見られる現代。」ですが、「それらの情報は、自分の心に負をもたらすだけ。」「ネットに書かれていることがすべてだと思い込み、視野が狭くなる可能性も」とします。負だけとは言いすぎかもしれませんが、若年ホリエモン支持者批判の記事で取りあげた、しりあがり寿、樺沢紫苑、井ノ原快彦といった人々の指摘を思い出します。

「ネット環境を遮断するなどして定期的なデジタルデトックスの機会を」と呼びかけます。テレビをつまらなくする若手の記事で触れた「IT断食」のようなものですので、依存症レベルの人は、気をつけてください。

うまくいかない方向で予想外のときも、「「こういうこともあるから、人生っておもしろい!」と自分に言い聞かせ、気持ちを無理矢理にでもポジティブに」、よい心がけです。Amazon.co.jpでとても評価の高い考えない台所(高木ゑみ著、サンクチュアリ出版)に、「自分がポジティブになるのを待っていても、それは一生やってきません。」とあるのを思い出しました。

「嫉妬心を持たない女性たち」を目標のようにしますが、「でも、自分の人生に満足さえしていれば、そのような感情に支配されることはありません。」、これでよいと思います。嫉妬の世界史(山内昌之著、新潮社)が、「嫉妬は寒暖と同じかもしれない。」とたとえたように、嫉妬の感情がまったくないことまでは不必要で、嫉妬に不毛、不本意な行動を強いられてしまうことさえなくせれば、十分に楽になれるはずです。

遺伝子から相性を知る方法とミニマリスト内乱

きょう、Forbes JAPANに、遺伝子でカップルの相性が分かるサービス 149ドルで始動という記事が出ました。「トロントに本社を置くスタートアップ企業「インスタント・ケミストリー(Instant Chemistry)」がつくった」サービスを取りあげたものです。

「カップルとしての相性は73.5%という喜ばしい結果」、相性が率で示されるのはユニークです。5年生存率のような読み方をすればよいのでしょうか。

「人は免疫系が異なる相手により惹かれること、また、人はこの違いを無意識に体臭から判別すること」を活用していて、「パートナーと自分の免疫系が違えば違うほど、お互いがより魅力的に映る」と考えるようです。「離婚ほぼ確定カップル」の記事で取りあげた、「相補性の原理」と対応します。

ですが、創業者のゴンザレスは、「最適な違いというのがあります。この最適な違いの範囲を出てしまうと、相性の良い相手とは言えません」とも言います。ふと、色の心理学(佐々木仁美監修、枻出版社)の「色と恋愛」というコラムで、DNAではぴったり一致しないのがうまく合うようになっているメカニズムの説明があったのを思い出しました。

「別の例としては、ドーパミンD4受容体が挙げられる。」とします。これとパーソナリティや人生選択とのからみについては、D4受容体と「脅威の小宇宙・人体Ⅲ」の記事でも取りあげました。

「ゴンザレスは最終的にはインスタント・ケミストリーを恋人紹介のサービスに進化させてようと計画している。」そうです。SINGLDOUTと「方向性の違いからパートナーシップを解消するに至った」後に、「ゴンザレスは事業の方向性を転換。」したのですが、あきらめきれなかったのか、似た方向にまた近づきたいようです。つい、「聞き分けのないゴンザレス」を思い出してしまいました。

「ミスマッチな相手との無駄な時間を省き、お互いを早く見つける手助けをするツールとしても」とも提案します。とても効率的、合理的だといえます。ですが、こういうことに効率第一なんてと、感情的な反発もあるでしょう。お年寄りが言いそうなだけでなく、若くして人生における後悔の価値を説く、6月23日付読売新聞朝刊の岩尾百花という人のような考え方もあります。あるいは、直感を裏切る数学 「思い込み」にだまされない数学的思考法(神永正博著、講談社)にある、四色定理の証明に「「コンピュータを使った」という点が数学者の嫌悪感を増幅させたのだと思います。」という感覚も近いでしょうか。

それで思い出したのが、はてな匿名ダイアリーにきょう出た記事、ミニマリスト内乱、勃発です。むだのない、クールですっきりした生き方を説いていた世界が、すっきりしないどろどろに熱くなっていることを整理しました。固有名詞がいちいち呼びかえてあって、少々読みにくいですが、どうしてもわからない人には、そもそも読む意味のない話題ですので、問題ありません。東スポWebにきょう出た記事、田中みな実 フジ「ニュースな晩餐会」打ち切り!低視聴率とBPO問題が致命傷に2回登場する「芸能界の実力者」のように、誰もがわかっていて、出すわけにはいかないと誰もがわかっている、まるで神聖四文字のような名前とは異なり、はるかにせまい世界のことにすぎません。

女性の意識を変える方法と無差別平等の権利

きょう、恋愛jpに、モテるのにナゼ? なかなか彼氏ができない女性の意識の変え方3つという記事が出ました。

「第一印象で男性として見られない人に会う意味なんて」という相談者に、「少しでも可能性を感じる相手ならお付き合いしてみては」と提案します。コピペでの就職活動の記事で取りあげたもののような物量作戦を、熱意がないのに行うと考えてしまうと、苦しそうです。「しかし、たまに現れるんです。」が信じられれば、追求心が出てくるかもしれません。そういえば、TOWER RECORDS ONLINEにきょう出た記事、宮本笑里、朴葵姫も参加!話題の「爽健美茶」の音楽を完全収録~image beautiful days emotional & relaxingには、「音楽心理学の権威である金沢工業大学・山田真司教授監修の下、楽曲の選定からアレンジ、音色の開発にいたるまで、科学的な健康美価値を追及した、究極のリラクシング・ミュージックです。」とあって、あの監修者から追及を受けるようすを想像してしまいました。

「自分の見る目に頼り過ぎず、たまにはその目を疑ってみると新しい発見があります。」「視野を広げて、交際相手候補の分母を増やしましょう。」、無難ですがよいアドバイスだと思います。ふと、みんなの山田うどん(北尾トロ・えのきどいちろう著、河出書房新社)に、「見上げてごらん夜の星を。そこに見えている星だけがすべての星ではないのだよ。」とあるのを思い出しました。

「『ザイアンス効果(単純接触効果)』というもの」が登場します。お笑いの単純接触効果の記事も書きましたし、ポップ心理学でもよく知られた効果のひとつです。「単純に会う回数が増えると人は相手に好意を抱くという」と、対人心理学の文脈での解釈で書かれているのも、ポップ心理学的です。ですが、「参考文献」が、単純接触効果研究の最前線(宮本聡介・太田信夫編、北大路書房)です。そういう本ではないのですが、役だててもらえたのでしたら、とてもありがたいことです。何だか、世界がせまく感じられます。

世界で思い出したのが、ウートピにきのう出た記事、貧困を押し付けられる子どもたち 「自己責任論」で見放された、困窮家庭の実態です。このまんが家の問題意識であれば、民法877条の解体を主張したくなりそうなのに、主題にしない理由も知りたいところですが、最後に「人は無差別平等に、健康で文化的な生活を送る権利を持っているのですから。」と締めたのも気になります。明らかに、生活保護法2条や3条など、国内法の表現を意識してありますが、その2条も、日本国憲法25条も、「すべて国民は」と書き出していて、「人は」ではありません。世界人権宣言25条や27条が、すでに国際慣習法となったとみなしてのことなら、それにそった表現にするはずです。アゴラに4か月前に出た記事、憲法改正デマ(4)「天賦人権説」という言葉の誤用が招いた批判でいう「「神の下の平等」という観念を下敷きにした人権論」でしたら、神が日本の国内法のことばに合わせるのかは、何ともわかりません。それでも、ふと不安になるのは、平時忠ではありませんが、日本人以外は人と考えないという、若年ホリエモン支持者批判の記事では「国家」主義、「民族」主義と表現したような感覚が、自然に出たようにも感じられるためです。「人は」と考えたら、日本の相対的貧困などとは比べものにならない、はるかに悲惨な絶対的貧困が世界中にあるわけで、「貧困を知る大人が減っていくこと」を問題視するこの人が知らないとも、知らんふりをしているとも思いたくないところです。それとも、みんながまずしい絶対的貧困なら、ALWAYS 三丁目の夕日(山崎貴監督)のようにこころはゆたかで、「貧困のなかで精神的に追い詰められた状態」になる相対的貧困のほうが大問題だと考えているのでしょうか。あるいは、近くを優先するのが人間の性で、足もとのゲットーのフードスタンプ生活ではなく、遠いアフリカの支援に回るアメリカのセレブは異常だというような考えなのでしょうか。それとも、きびしい絶対的貧困では死亡率も高いので、先進国の相対的貧困の支援のほうがむだを出さないという、トリアージ的な発想なのでしょうか。

日本的なジューシィメイクと専業主婦願望

きょう、サイゾーウーマンに、「ジューシィメイク」「ロースキンメイク」トレンドの“顔”が映し出す、女の願望と社会という記事が出ました。「では、2015年現在のトレンドメイクからは、どのような社会背景が読み取れるだろうか。メイクに隠された女性の願望、心理はどのようなものだろうか。」といった点に関するインタビューです。

ジューシィメイクについて、「中央にチークが入ると赤ちゃんの顔のように平面的になり、幼く」、「いわゆる欧米ふうのセクシーさではなく」、「その裏には「そう見えた方が得だ」という現代女性の意識があるのだと私は思っています。」とあります。「社会が求めている役割を表現していたら、こうした甘いメイクにはなりません。」「完全に日本オリジナルのカワイイカルチャーです。若く見られた方がチヤホヤされるというのは、いかにも日本的。」ともされます。このような、社会の中で子ども、若者のすがたであり続けようとすることには、世間からは心理学の出番が求められますが、よく目だってきたのはむしろ、精神医学に足場をおく人による解読です。モラトリアム人間の時代(小此木啓吾著、中央公論新社)も、「甘え」の構造(土井健郎著、弘文堂)も、今なお読みつがれています。新しいところでは、まもなく流通する、子どものまま中年化する若者たち 根拠なき万能感とあきらめの心理(鍋田恭孝著、幻冬舎)が興味深そうです。

「今は「女性活用」が叫ばれています」、「そんな時代の流れに30代後半~40代の女性が疲弊しているのを見て、20~30代は逆に専業主婦願望を強めているという話も聞きます。」とあります。ソニー生命保険が4か月前に公表した、女性の活躍に関する調査 2015の図5で、「専業主婦願望を強めているという話」のとおりの世代差は確認できます。専業主婦になりたい女たち(白河桃子著、ポプラ社)とも対応します。

「ロースキン派は、ファンデーションを塗らないことをよしとしているんですが、実際のところは、その手前の肌色補正効果のある日焼け止めなどを塗っていることが多いですね。」「その裏には「素肌がきれい=ていねいな生活をしている」と見られたいという心理があると分析できます。」とあります。ふと、見て見ぬふりをする社会(M. ヘファーナン著、河出書房新社)にある、イギリスの日焼けサロンの、裕福なくらしに見せるために焼くお話を思い出しました。

「いろんな提案や情報があふれ、受け手の情報整理の成熟度も上がっています。その中で、自分の価値観に合ったものを見つけたら飛びつく、という状況になっています。」とあります。おととい書いた記事で取りあげた、「「二極化」の現象」とも関連しそうです。

「「みんなと同じメイクじゃないと変」と感じる人は少なくなりました。」、自分の頭で考えたくない大学生の記事で取りあげたような、出るくいの不利が少なくなってきているのなら、よいことです。一方で、ハナクロにきょう出た記事、自信がないナルシストに騙されないで!ファッションでわかる男の心理には、「それなのに、情報に流されて、シーズンごとに洋服の系統が変わるような男性は、「周りと同じでいたい」「取り残されたくない」という気持ちが強いタイプ。」とありました。