生駒 忍

記事一覧

ヒステリックになりやすい女性とかめの裏の絵

きょう、恋愛jpに、会話がストレスに! ヒステリックになりやすい女性の特徴4つと対処法という記事が出ました。

「以前はヒステリーは女性特有の病気として扱われ、その語源も古代ギリシア語で「子宮」を意味する「hystera」から」、ここだけ読めばまちがいではないのですが、「現在は、病気としての「ヒステリー」という言葉は使われず、『解離性障害』と言われています。」、これは適切ではないように思います。単に「解離性障害」と書くのでしたら、ICD-10のF44とは異なります。ヒステリーのヒストリーはややややこしいのですが、DSMでは解離のグループだけでなく、DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引(医学書院)でいう変換症も、そのヒステリーを引きついでいます。また、DSM-5は、「解離性障害」に対して、解離症群という訳語を示しました。そして、「愚痴が増え、私がアドバイスをしてもなぜかキレてヒステリックになることが多い」という話題なので、そういう意味でのヒステリーとは別だと思います。DIDのために別の人格状態への交替が起こって、「キレてヒステリックになる」のでしょうか。もちろん、このDIDは、書き順を音にする研究の記事で取りあげたものとは無関係で、解離性同一症のことです。別のアイデンティティがわかれてしまうというイメージとは逆に、同一になってしまう病気のように見える新訳語は、議論がわかれるところだと思います。

「ヒステリックになりやすい女性の特徴4つ」は、そのDSMでいうと、B群のパーソナリティ障害に近いように見えます。その視点からは、たとえば「こんな女性はヒステリックになりやすい」というような書き方のほうが、イメージされる因果関係の向きにははっきり合いそうです。

「「悩みを聞いてほしい」と言われても、女性は解決を求めているわけではなく、同調し共感して欲しいだけだ」、これは男性が、わかってはいても苦手とするものです。ダブルバインドではありませんが、表の意味で対応されて、「求めていないアドバイスを受けること」となり「ヒステリックになって」しまえば、おたがいに困るのですが、裏の意味を表にして、これから言う内容に共感するように、と告げてからというわけにもいきません。

表と裏で思い出したのが、けさの常陽新聞の記事、「イタリアから「かめ」寄贈 牛久市 友好都市提携を記念」です。本文には、「高さ65㌢のかめの表側には牛久市の市章が描かれ、牛久ゆかりの日本画家、小川芋銭のカッパの絵が入っている。」とありますが、写真のキャプションには、「かめの裏側には小川芋銭の描いたカッパの絵が入っている」とあります。写真で見ると、これは裏のはずです。もったいなく感じる人もいると思いますが、市章とならべるとバランスが悪いですし、カッパはやはり、陰にかくれて、ふつうは見せないところにいたほうが、すわりがよいのでしょう。

ふつうは見せないところで思い出したのが、週刊文春 1月29日号(文藝春秋)です。どちらも男性器のことになってしまいますが、生活保護費での別居の記事で取りあげた「ようじ男」が、いきなり見せる奇行をしていたという証言や、尾野真千子と交際した男は家族全員に見られ、チェックされることになるという、テレビ番組での指摘を問われた尾野の父が、否定して「押さえこんだり、ふざけ合うくらい」とした発言がありました。

コーヒーが合わない人と多数派の「両向型」

きょう、バズプラスニュースに、内向的な人がコーヒーには向いていない理由という記事が出ました。性格とコーヒーの選択の記事で取りあげたものとは別の次元の観点で、コーヒーが合わない性格について取りあげたものです。

タイトルの書き方が、向きが奇妙にも感じられます。私でしたら、「内向的な人にはコーヒーが向いていない理由」と書きたいところです。

本文は、「最新のパーソナリティ心理学書『Me, Myself, and Us』によれば、内向的な人間にはコーヒーは向いていないかもしんないらしい。」と書き出されます。こちらは、書き方の向きは問題ないのですが、方言や、「パーソナリティ心理学書」という表現が気になりました。Me, Myself, and Us: The Science of Personality and the Art of Well-Being(B.R. Little著、PublicAffairs)がパーソナリティ心理学に関する本ではないというわけではありませんし、パーソナリティ心理学、パーソナリティ心理学者という表現はありますが、「パーソナリティ心理学書」には違和感があります。もちろん、10月に出たAuiobook版のほうであれば、「書」ではありません。

その「心理学書」からの引用が2か所ありますが、第2章からの、直訳ではなく意訳、抄訳と見るべき内容ですし、イタリックで強調した場合もあるquantitativeは、誤訳されたようです。「激しい会議」とあるのは、「a rapid-fire discussion」のイメージを出した表現だと思います。

「この説のネタ元は1987年の研究(1)でして、なんでも外向型と内向型は大脳新皮質の構造が違っており、そのせいで外からの刺激に対するん反応も変わってしまうらしい。」、いろいろなレベルで落ちつかない一文です。2章ではこのコーヒーのお話のすぐ後に、MBTI的に外向-内向が分かれるのではなく、実際には中間の人が多いことが書かれますが、中間の人の「大脳新皮質の構造」は、どのようでしょうか。经济观察网にきょう出た記事、“飞机”上的环境心理学に取りあげられた「扶手神器」のようですが、つながっている現実を、人為的にぴったり切りわけることには、よしあしがあります。なお、多数派である中間は、ambivertと呼ばれ、「両向型」と訳されることが多いのですが、ESSRのように、向きが別々の異なるものの両方がある意味あいとは異なりますので、誤解をまねくようにも思います。同じ軸の中ほどを取る意味では、中間型と理解するのが無難ですが、原語の語感は落ちます。造語で、たとえば「中向型」のようにするのも一案ですが、「内」向型とまぎらわしいのが難点です。そもそも、中ほどが多い分布を3群に切りわけるのは、回帰効果の点で好ましくないという見方もあるでしょう。Amazon.co.jpでとても評価の高い、リスク 下 神々への反逆(P. バーンスタイン著、日本経済新聞社)でいう、「ゴールトンの平均への回帰が意味をなさない、ごつごつした世界である。」という理解は、できますでしょうか。

さて、「同書によれば、コーヒーのほかにも、騒音やストレスの多い環境も、内向型の人間には悪影響とのこと。」、騒音もストレスも、一般にはよいものではありませんし、そもそも騒音とは、デジタル大辞泉を引くと、「騒がしく、不快感を起こさせる音。また、ある目的に対して障害になる音。」です。内向型のほうが、悪影響が大きいということでしょう。ストレス社会といわれる現代は、内向型には不利な環境だと考えられます。一方で、内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力(S. ケイン著、講談社)は、外向型が志向される今日のアメリカでさえ、内向型にもきちんと価値があると論じます。内向型の皆さん、前を向いていきましょう。

東京駅Suica騒動でのルールと限定品商法

きょう、女子SPA!に、「東京駅記念Suica」で考える…買い物で失敗する「3つの要注意ワード」という記事が出ました。

「東京駅が開業100周年を迎えたということでJR東日本が限定の記念Suicaを販売」したときの騒動のお話から書き出されます。「ルールを守らず徹夜した人が購入できたなどの問題点もあったため、悔しい思いをされた方もいらっしゃるかもしれません。」としますが、徹夜禁止などというルールは、鉄道ファンの間の自主ルールにはあったのかもしれませんが、JR側からは、ポスター上での「前日からお並びいただくことは出来ません。」という小さな記載くらいしか告知されなかったはずです。管理上、前の日に駅構内や公道に列をつくることを公式に容認するかどうかというレベルで、そこに入った人には買わせないとも、始発からカウントするとも書いていないのに、正しく読まずにJR側を非難する人が、一部ですが出たのは、残念でした。それとも、日本語が読めない人があばれている、あるいはあばれていると思わせたい人がいると読むべきだったのでしょうか。

「「限定(焼きたて)、今だけ、格安」などの言葉で、特に気に留めていなかったはずの商品を購入してしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。」、タイトルにある「3つの要注意ワード」とは、これのようです。3本は、団塊ジュニア世代の定義と特徴の記事で触れた鼎立どころか、別個の3本柱でもなく、本質的にはつながっています。ですが、人は「そとづら」が9割(三枝理枝子著、アスコム)の、「人間の三大渇望」ほどのかぶり方ではなく、「今だけ」が左右の両側につながるかたちです。今だけ何なのかが書かれていないので、今しか手に入らない限定品とも、今しかこの値段では買えない格安価格とも読めます。

「買わずに後悔するくらいなら買って後悔する方が良い。」、これは心理学的には、正しいところがあります。捨てないことのデメリットの記事で触れたようなことが、実証研究で確認されています。

「しかし、何かを購入しようとしたそのきっかけが「限定、今だけ、格安」というフレーズだった場合は、いつも以上に慎重に判断することがおススメです。」、そのとおりだと思います。「空気」でお客様を動かす(横山信弘著、フォレスト出版)でいう、認知バイアスにかからない「不燃客」になって、あわてず急がず、お財布を守りましょう。

それで思い出したのが、日経電子版にきょう出た記事、「生活の党と山本太郎となかまたち」に党名変更 山本氏が合流 生活、政党要件満たすです。年末までに急いで、政党助成金をとると言われていましたが、まにあったようです。人心も妻もはなれ、お財布も苦しくなったといわれ、週刊新潮 1月1・8日号(新潮社)では「自分の生活が第一」といじられましたが、助成金4億円はのがしませんでした。かわりに党の名前を売って、協力者の名前を売るネーミングライツのような荒技に、豪腕のなごりを感じます。読みやすい名前を入れて、党名としては読みにくくなってしまいましたが、減税日本・反TPP・脱原発を実現する党のように、再編をしかけて結果的にすぐ消える読みなのでしょうか。

読みにくいで思い出しましたが、orangestarの雑記にきょう出た記事、C87参加、はてな村奇譚持っていきますによると、コミックマーケット87で頒布される「はてな村奇譚」は、写植を使ったものになるそうです。自身で、「写植って読みやすいね!!」とよろこんでいます。3か月前に出たはてな村奇譚31で唯一、活字をうって強力な効果を出した場面がうすれてしまいそうですが、全体が読みやすくなるのなら、よいことだと思います。ほしい人は、始発で行きましょう。

すっぴん写真公開の心理と「こじらせ女子」

きょう、恋愛.jpに、ネット上にすっぴん写真を公開する「芸能人」と「一般人」の女性心理という記事が出ました。

前半では、筆者の「知り合いの女性芸能記者」の言う、「芸能人が“すっぴん”を公開する戦略的な理由」がならびます。その3番目には、「ナチュラルメイクや、オーガニックメイクが人気になってきてから、“ありのままでも美しい”というのは、大人女性の重要な美的ステータス。」とあります。ですが、「そして、それが可能になったのが、スマホの『写真加工アプリ』のおかげ」なのです。美しいこと自体になぜ価値があるかはともかくとしても、結果的に美しければよいのではなく、「ありのままでも美しい」と思わせることに価値がおかれる意味は、考えてみる意味がありそうです。Kの新婚生活発言の記事で触れたような、美容整形へのねじれた興味とも関連するでしょう。美を、能力におきかえれば、男性社会の、特に団塊ジュニアから下での感覚にも対応します。女に惚れさす名言集の、惚れさせ967 「天才」に突かれた態度です。極貧から必死にはたらきとおしていまは経団連、のような苦労話ではなく、努力なしにさらりと成功すること、そう見てもらえることがあこがれなのです。一方で、男性の視線からは自由な、女性の間での美のあらそいでは、いまでも努力が基準になります。格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態(白河桃子著、ポプラ社)は、外見カーストについて、「もともとの美しさだけでなく、どれだけ「自分に手をかけているか」というほうが重要な要素です。天然で美しく、でもお化粧っけのない女性、ファッションがおしゃれではない女性は、このカーストでは「ノーコンテスト」というか、競いあう対象外となります。」「これは「美魔女」が男性にはあまり受けず、女性からは絶大な支持があるという例を見ても分かります。」と指摘します。

後半は、「すっぴん写真が多く投稿されている、出会い系サイトの利用者に話を聞いてみました。」というものです。「注目されたい」「コメントで褒めてもらいたい」「アプリでの加工は必ずする」、そして「仕事では化粧をしているけれど、そのときとは違う自分もいるのだと男性に見てもらって、褒めてもらいたい」」ともあります。ですが、見る側の男性の声は、「実に“冷たい”」もので、たとえば「『ほめてほしいんですよね? ほめるようにしていますけど……』(20代男性)」とあります。こんなかたちでほめられて、うれしいでしょうか。そう気づかなければ、しあわせでいられるのでしょう。あるいは、店員の「お似あいですよ」や、ひさびさに会っての「ちょっとやせた?」のように、わかっていてもなお、いい気分になれるのかもしれません。それでも、発言小町などで、実際より若く見られます、ほんとうの年齢を言うとおどろかれます、などと真顔で書いているように見える人を見ると、ときどき心配になることがあります。ユニ・チャーム 共振の経営(高原豪久著、日本経済新聞出版社)には、「褒め言葉は、時として「バカになれ、バカになれ」と言われているのに等しいことに気がつかないといけません。」とあります。

それで思い出したのが、日刊SPA!にきょう出た記事、“嘘”は社会人の必須スキル。バカ正直な人々に起こる悲劇です。女に惚れさす名言集の、惚れさせ1543 「…だろ?」のような人はめずらしくありませんが、SPA!ですので、少しくせのある事例もあります。「同僚の『うまく言っといてよ』が理解できず、サボりや仮病もありのままを伝えたら、職場で『応用がきかないヤツ』と厄介者扱いされて無視されるようになった。」、何でも「ありのまま」ではさすがに、「少しも寒くないわ」とは逆に、お寒い展開です。「手料理を出されて『お世辞じゃなく正直な感想を聞かせて』と言われたので、『味が濃すぎて高血圧になる』と伝えたらなぜか別れを切り出された」、返答にジョークをこめたこと以前に、この問われ方の時点で、お笑い芸人がねたにするほどのフラグです。女はみんな同じ教科書を読んでいる。(マシンガンズ著、幻冬舎)の、「例えば、付き合っている女が、『怒らないから本当のことを言ってみて』と言う。怒らないならばと、つい本当のことを言う。」の世界です。高血圧にされそうなほうが、身を守るために別れを決めるのではなく、逆の向きであるところには、番組撮影現場での出演女性自殺事件の記事で触れた、朝鮮のことわざとされる文言を思い出しました。ですので、別れを切りだすための誘導に使うなら別ですが、このパターンの問いは、交流分析的な意味で、「さあゲームの始まりです」になりかねない、危険なものです。あるときうまくいったとしても、いつもほしい答えを誘導できるとはかぎりません。うそをつかない魔法の鏡に、いつも小おどりできていたのが、白雪姫だと言われてから、嫉妬をこじらせて、結局は死ぬまでおどり続けることになる童話から学びましょう。

それで思い出したのが、マイナビウーマンにきのう出た記事、あなたの周りにいるリアル「こじらせ女子」!「こじらせ女子」の特徴3つ「自分に自信がない」です。「もし自分にそういう部分があるかも? と感じたら、とりあえず信頼できる友人に「わたしってこじらせてる?」と勇気をもって聞いてみることをおすすめします!」とすすめていますが、私はすすめません。なお、紹介された調査結果は、「有効回答数 438件(ウェブログイン式)」とあり、1名が行方不明になっていますので、注意してください。

ジョブズの自閉症的な傾向と選択による疲労

きょう、ライフハッカー日本版に、洋服を減らすと「選択による疲労」も減らすことができるという記事が出ました。

「スティーブ・ジョブズ氏やマーク・ザッカーバーグ氏のプレゼンテーションを見たことのある人ならば、なぜ成功者たちはお金があるはずなのに、いつも同じ服を着ているのだろうと疑問に思ったことがあるでしょう。」と書き出されます。zakzakの記事、あのネオヒルズ族「与沢翼」が破綻寸前 スーツとともに財力も擦り切れ…に、与沢翼が、「「3年以内に日本人全員が与沢翼を知っている状況を作る」「年商300億円を目指す」と景気のいい話を連発していたが、はっきりした年収を明かすことはなく、着ていたスーツは裾が擦り切れていた。」とあったことを思い出しましたが、少なくともあの両雄の前では、成功者とはとてもいえないでしょう。なお、ジョブズの服の選択には、スティーブ・ジョブズ Ⅰ(W. アイザックソン著、講談社)からもうかがえる、自閉スペクトラム的なところもかかわっていそうです。

「1日において、私たちは非常にたくさんの選択をします。そのほとんどが、考えるに値しないものです(「紙とプラスチック、どっちにする?」、「誰が気にする?」など)。」とあります。かっこ内に、ほかにわかりやすい例は思いつかなかったのかと、少々気になってしまいます。ですが、そこ自体が、「考えるに値しないもの」で、「誰が気にする?」と言われてしまいそうな気もします。それでも、私は気になって、原文であるReduce Your Wardrobe Choices to Avoid Decision Fatigueでここを確認したところ、直訳ではありませんでした。

「Decision Fatigue(選択による疲労)という概念」、疲労とは大げさかもしれませんが、納得のいくものです。すでに文庫になった、選択の科学(S. アイエンガー著、文藝春秋)で一般にも知られるようになった、ジャムの味見の実験の世界です。ネット通販サイトでも、あれもこれもと見ているうちに、認知的な感覚としては、疲労というよりは飽和に近いかたちで、結局は1円も消費せず、かわりに時間の浪費になっているのは、意外にあることではないでしょうか。ロングテールも理解できますが、相対的剥奪の記事の最後に紹介したように、シンプルのよさも、あなどれないものです。