生駒 忍

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いじめの起こる撮影現場での出演女性の首つり

きょう、AFPBB Newsに、韓国リアリティー番組で女性出演者が自殺という記事が出ました。撮影現場で首つり自殺が起きて、テレビ局に非難が殺到しているそうです。

韓国起源説ではありませんが、日本にも多少似たところのあるテレビ番組があります。ちょうど、FLASH 3月18日号(光文社)が、その「テラスハウス」のやらせを告発して、話題になったところです。リアリティ番組のはずが、お金でつるやらせが横行する内情は、指示どおりのキスで10万円などと、かえってリアリティがあります。ですが、AFPBBの記事によれば、こちらは札束で、あるいはむちでたたいて意に反することをさせたのではなく、本人の行いからバイアスをかけて切りとる制作態度が、死をまねいたようです。「かわいそうな女の子」に見えるようえがき出そうとした意図は、誰が見てもかわいそうな結末となって反映されたのでした。

生前に母親に電話した内容、「番組が放送されたらもう韓国には暮らせなくなる」、これはとても重いと思います。リアリティ番組から戻ったら中途半端な有名人になっていて、いろいろやりにくくなることなら、日本でもありますが、放送されたために自殺したり、国外に移住、あるいは大半を海外で過ごさなければならなくなったりしたような例は、聞いたことがありません。少し前にKStyleに出た記事、人身攻撃、性的羞恥心を感じさせる書き込みから虚偽の動画まで…消えたスターたちの人権にある、女優ムン・ソリの声を思い出します。映画内のベッドシーンについてのようですが、「露出シーンは負担だ。撮ったその時だけでなく、10年経っても負担となる出来事が生じたりする。韓国社会が負担にさせる」というのです。

自殺はしなかった出演者も、「番組出演中にいじめられたり中傷されたり」と思った体験を明かします。朝鮮半島には「他人の牛が逃げ回るのは見ものだ」「他人の家の火事見物をしない君子はいない」などということわざがあると聞きますが、こういう場面も、プロデューサーのねらいによっては、好んで使われる番組なのでしょうか。もし、番組でいじめられたかわいそうな弱者として知られて、「おぼれる犬は棒でたたけ」になってしまうとしたら、「番組が放送されたらもう韓国には暮らせなくなる」と考えるのもしかたがないでしょうか。それとも、韓国は儒教社会だといわれ、儒教 ルサンチマンの宗教(浅野裕一著、平凡社)によれば儒教は弱い者の側の強い思いから形成されたものですので、弱者にとても理解があるはずで、自殺したこの出演者が異常だと考えられるのでしょうか。

出演者の首つりで、番組は放送中止のようです。これも朝鮮のことわざだという、「人が自分にそむくなら、むしろ自分が先にそむいてやる」を思い出しました。番組やテレビ局の関係者は、おわびの気持ちでいっぱいでしょうか。自分の首が心配でしょうか。あるいは、見られていないところでは、「ひとつ釜の飯を食べて訴訟を起こす」とうそぶいているのでしょうか。