生駒 忍

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ジョブズの自閉症的な傾向と選択による疲労

きょう、ライフハッカー日本版に、洋服を減らすと「選択による疲労」も減らすことができるという記事が出ました。

「スティーブ・ジョブズ氏やマーク・ザッカーバーグ氏のプレゼンテーションを見たことのある人ならば、なぜ成功者たちはお金があるはずなのに、いつも同じ服を着ているのだろうと疑問に思ったことがあるでしょう。」と書き出されます。zakzakの記事、あのネオヒルズ族「与沢翼」が破綻寸前 スーツとともに財力も擦り切れ…に、与沢翼が、「「3年以内に日本人全員が与沢翼を知っている状況を作る」「年商300億円を目指す」と景気のいい話を連発していたが、はっきりした年収を明かすことはなく、着ていたスーツは裾が擦り切れていた。」とあったことを思い出しましたが、少なくともあの両雄の前では、成功者とはとてもいえないでしょう。なお、ジョブズの服の選択には、スティーブ・ジョブズ Ⅰ(W. アイザックソン著、講談社)からもうかがえる、自閉スペクトラム的なところもかかわっていそうです。

「1日において、私たちは非常にたくさんの選択をします。そのほとんどが、考えるに値しないものです(「紙とプラスチック、どっちにする?」、「誰が気にする?」など)。」とあります。かっこ内に、ほかにわかりやすい例は思いつかなかったのかと、少々気になってしまいます。ですが、そこ自体が、「考えるに値しないもの」で、「誰が気にする?」と言われてしまいそうな気もします。それでも、私は気になって、原文であるReduce Your Wardrobe Choices to Avoid Decision Fatigueでここを確認したところ、直訳ではありませんでした。

「Decision Fatigue(選択による疲労)という概念」、疲労とは大げさかもしれませんが、納得のいくものです。すでに文庫になった、選択の科学(S. アイエンガー著、文藝春秋)で一般にも知られるようになった、ジャムの味見の実験の世界です。ネット通販サイトでも、あれもこれもと見ているうちに、認知的な感覚としては、疲労というよりは飽和に近いかたちで、結局は1円も消費せず、かわりに時間の浪費になっているのは、意外にあることではないでしょうか。ロングテールも理解できますが、相対的剥奪の記事の最後に紹介したように、シンプルのよさも、あなどれないものです。