生駒 忍

記事一覧

「離婚ほぼ確定カップル」と類似性の法則

きょう、WooRisに、すると思ってたよ!周囲は見抜いている「離婚ほぼ確定カップル」の特徴3つという記事が出ました。

「海外のライフスタイルサイト『millennial LIFESTYLE.』の記事を参考に」書かれたものです。millenial lifestylesに3か月半前に出た記事、9 Signs Your Marriage Was Doomed From The Startから、順に2、1、7番目のサインが取りあげられました。ほかにも、たとえば4番目は、Shiina_Fatというアカウントのきのうのツイート、店員に横柄な人って悪気もなく自然にこう考えてるから怖い。に近いなど、紹介してあればおもしろそうだったものがあります。

「専門家はすぐに見抜くという“離婚ほぼ確定”カップルのパターン」、何の専門家でしょうか。やはり、結婚生活を成功させる七つの原則(J.M. ゴットマン・N. シルバー著、第三文明社)のような世界だと考えたいところです。卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学(M. ハーンステイン著、文藝春秋)を思い出した人もいるかもしれませんが、予測力が異なります。

「自分と性格が逆だと、「あら、なんか新鮮かも!」と相手を好きになってしまうこともありますね。」「しかし、最初は2人の違いに惹かれ合っても、結婚して暮らしていくうちにそんな違いが口論の元になることも。」とあります。心理学の教科書や通俗書は、関係を深める上で、一般には類似性が先に効いて、相補性は後でとすることが多いようです。そういった中で、社会心理学がとってもよくわかる本(榊博文著、東京書店)には、「体重、体格、気質、性格など遺伝子レベルで決定する要素には相補性の原理が働き、後天的に形成される要素である趣味、思考、学歴、信条、ライフスタイルなどには類似性の法則が働きます。」とあります。すると、「“宗教やお金、子ども、生活スタイル”などコアな部分」には、類似性のほうが求められそうです。

「家族や友人が「そ、その人はやめて……」と止めるのも聞かず、「自分に一番よく合う相手は私だけが知っている」と無理矢理結婚する人もいます。」とあります。もちろん、「恋に夢中なあなたに見えない部分が、第3者にはしっかり見えている場合も多いもの。」なのです。海外旅行をすすめられていやがる心理の記事の最後の段落で取りあげた話題が、ここにもあてはまりそうです。

はだかの王様への取り入りとエルメスティー

きょう、LAURIERに、優秀な人はどんな子が好き? 周りから可愛がられるちょっとしたコツという記事が出ました。

「優秀な人が好むのは総じて素直な人間。」と断言されます。ですが、「自分の話を素直に聞き、それを行動に移している人間はある意味「自分の分身」である。」「人は自分自身が人の価値観、行動の規範になることを好む」、これでは優秀な人というよりは、イエスマンに固められた、はだかの王様のようでもあります。むしろ、こういう見えすいた取り入りでかわいがってしまうのでは、取りまきから優秀だと持ちあげられることはあっても、ほんとうに優秀だとは考えにくいでしょう。あるいは、ほんとうかどうかはどうでもよく、権威があることになっている人に気に入られればそれでよいという人もいそうですが、多眼思考(ちきりん著、大和書房)の259ページが、頭にうかんでしまいます。

実のところ、「筆者は社会的に成功を収めている人や他人から人望厚い人にはとてもよく可愛がられる。それは筆者がその人たちの前では素直でいられるし、尊敬しか持っていないから。」などとする最後の段落が、筆者が読ませたかったことのようです。こういうことをおさえずに出してしまうほどに、ピュアですなおな人なのでしょう。いったい誰だろうと思ったら、最後に「エルメス」とありました。そういえば、電車男でエルメスは、べノアのピュア・ダージリンを贈ったのでした。

手書きでのハロー効果の例とブーレーズ

きょう、しらべぇに、汚いと萎える人は〇%!書く「字」によって変わる異性の印象とは?という記事が出ました。

「手書きの文字には人の内面が反映」、ここは外からは、心理学のテーマに見えやすいのに、アカデミックな心理学者はなかなか研究していないところです。あすで応募〆切の第3回日本習字教育財団学術研究助成にも、そういう応募はされないでしょう。「さらに、人の印象を良くも悪くも大きく変えてしまうことも。」、こちらであれば、心理学者が心理学としてみとめやすいところです。「字が綺麗に書ける人はそれだけで魅力的に見えてしまう」、ハロー効果の典型例になります。不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100(S. サザーランド著、阪急コミュニケーションズ)でも、字がきれいかどうかが中身の評価に影響する実験が紹介されました。ですが、心理学者がより興味をひかれるのは、その後に複数紹介される、論文査読におけるハロー効果の実験かもしれません。

「全国10〜50代の男女446名に「文字と書き手の印象」について調査して」の報告のようですが、具体的な設問文として登場するのは、「気になる異性の字が汚くて萎えたことがある?」です。報告されていないだけで、このほかにも、いろいろな質問があったのでしょうか。

「東大合格者のトップクラスは、字が読めないほどに汚い。」という、林修の指摘が紹介されます。ばかばかしいと一蹴する人だけでなく、天才はこういう穴があってこそと思う人も、せっかくの才能がそれで低く見られては社会の損失だと考える人も、それぞれいることでしょう。マルクスがひどい悪筆で、そのせいで就職に失敗したり、エンゲルスが目をいためたりしたエピソードは有名です。また、筆跡性格学入門(槙田仁著、金子書房)によれば、楽譜の筆跡にも、作曲家のパーソナリティがあらわれるそうですが、クラシックプレミアム 35(小学館)には、ブーレーズの「フルートとピアノのためのソナチネ」について、初演を要望されたランパルが、楽譜が読みやすく書かれてはいなかったために見おくってしまったという、もったいないお話があります。

自分への挑戦と悪気なくうそをつく女性の増加

きょう、ライフハッカー日本版に、学習速度を速めるために知っておきたい3つのことという記事が出ました。

「若いときに学ぶのは簡単です。」、頭から真理です。純粋な記憶力だけでなく、「自分自身に挑戦してはワクワク」、「若い人の方が時間がある」、内外の要因がかかわります。さらに、失敗がゆるされやすいこともあるでしょう。「29歳の決断」の記事で取りあげた郷ひろみやレデスマのことば、宮崎あおいの朝ドラ再登場の記事で取りあげたマギーのことば、その他どこでもいわれることです。

「人の心身は働くのが好きではありません。」、新版 企業の人間的側面(D. マグレガー著、産能大学出版部)のX理論の世界ですが、だとすると、「複数の作業を、あっちをやったりこっちをやったりしていると、脳がものすごく働くことになってしまいます。」、これは苦しいことでしょう。福島県の甲状腺がん統計と地震予知の記事で取りあげた、マルチタスクの害を思い出します。

「だから、新しいスキルを学んでいるときは、最初は大変ですが、それでやる気を無くさないでください。大変なのは想定内です。」、そのとおりと思う人も、そうはいってもと思う人もいると思います。リラックマのことばのうち、ネットメディアの発達阻害の記事で取りあげたものと、レストランが使うトリックの記事で取りあげたものと、どちらがよりあてはまりそうでしょうか。

「明日まで先延ばしするのが1つの選択肢になり始め、集中するのは不可能な気がします。」、よくあることです。先のばし対策法の記事でも取りあげた話題です。ぐでたま哲学2(大和書房)でしたら、たったひと言、「後でしょ!」です。

「集中するために自分をだまさなければ」、「学んだことが楽しくなるまで自分をごまかしましょう。」とあります。だます、ごまかすというと聞こえが悪いですが、自分がしあわせになるために、自分の中で完結するのでしたら、それでよいでしょう。

それで思い出したのが、Googirlにきょう出た記事、現代女性に蔓延中? 悪気はないのにやってしまう、“ウソつきさん”の心理とはです。「今、悪気はないのについつい嘘をついてしまう……という女性が増えているのだそうです。」とあることにおどろき、そのエビデンスに興味があるので、知っている人がいましたら教えてほしいのですが、こちらはほかの人に向けてだます、ごまかすことの話題です。「自分が人より劣っていることに耐えきれず、真実を受け入れることができません。」、これにまわりを巻きこむのは、とても迷惑です。FRIDAY 5月8日号(講談社)で石川弘子が、「実務能力はゼロなのに、自意識が高くそれを認めない。」若者の問題を指摘したことともつながりそうです。

ひとり歩きした生体リズムとホラービデオ

きょう、セルフドクターニュースに、スムージーだけはNG! 「休みボケ」が治らないのは、朝食が原因!?という記事が出ました。タイトルから私は、いろいろな食べ物のうち、スムージーのみ注意が必要だと理解しそうになりましたが、スムージーのみ飲むだけの朝食はよくないという意味でした。

「陸上で生活する生物には、生まれたときから自然にリズムを刻む「体内時計」が備わっており、これには光(太陽の出と入り)が深く関与しています。」、基本的なことを書いただけのように見えますが、誤解をまねきそうなところもあります。個体発生どころか、系統発生でみても陸上生活が一度もない種にも、体内時計があると考えることは自然です。PLOS ONEに昨年出た論文、Eyeless Mexican Cavefish Save Energy by Eliminating the Circadian Rhythm in Metabolismのような世界のほうが、特殊な位置にあります。また、リズムの始点が「生まれたときから」かどうかは、考え方によります。母体と独立かどうかはともかくとしても、胎児にもそれらしいリズムはあるようですし、胎内を考えると、EurekAlert!に先月出た記事、Failed synchronization of the womb's clock with mother's body clock critical in miscarriagesのようなこともあります。一方で、新生児は多くの時間を眠ってすごしますので、1日に対応するようなリズムがととのうのは、もっと後です。

「脳のもっとも奥にあり、脳に体の刺激を伝える「網様体(もうようたい)」も、睡眠と覚醒を担う」、「朝は光や音の刺激を網様体が脳に伝えるために脳が活動を開始し、夜になると網様体の働きが鈍るために脳が休息状態に入り、自然に眠くなるのです。」、網様体が脳の一部なのか、それとも別なのかが、はっきりしません。「はてな村奇譚」最終回の記事で取りあげた、奥の深いはてな村の最奥部に見たのは、穴になったよそのサービスだったというお話を思い出しました。

「人の生体リズムは約25時間」、この数字の根拠は、「24時間より長いそうですが」というあいまいな表現があるのみで、不明確です。おそらく、素朴なフリーラン実験のお話がひとり歩きしたものからでしょう。25時間はさすがに長すぎると、学問の世界の外に正しく知られるまでには、長くかかりそうです。

「寝る前にはネットやテレビを見るのはストップ。」とよびかけます。いま、子どもたちがあぶない! 子ども・メディア・絵本(斎藤惇夫・田沢雄作・脇明子・中村柾子・山田真理子著、古今社)に、「寝る直前まで、テレビゲームをしたり、ホラーのビデオを見ていて、では十時ですから寝ましょうといっても、脳はおちおち寝てられるかどうかです。」「脳の疲労は解消されません。」とあるのを思い出しました。