生駒 忍

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手書きでのハロー効果の例とブーレーズ

きょう、しらべぇに、汚いと萎える人は〇%!書く「字」によって変わる異性の印象とは?という記事が出ました。

「手書きの文字には人の内面が反映」、ここは外からは、心理学のテーマに見えやすいのに、アカデミックな心理学者はなかなか研究していないところです。あすで応募〆切の第3回日本習字教育財団学術研究助成にも、そういう応募はされないでしょう。「さらに、人の印象を良くも悪くも大きく変えてしまうことも。」、こちらであれば、心理学者が心理学としてみとめやすいところです。「字が綺麗に書ける人はそれだけで魅力的に見えてしまう」、ハロー効果の典型例になります。不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100(S. サザーランド著、阪急コミュニケーションズ)でも、字がきれいかどうかが中身の評価に影響する実験が紹介されました。ですが、心理学者がより興味をひかれるのは、その後に複数紹介される、論文査読におけるハロー効果の実験かもしれません。

「全国10〜50代の男女446名に「文字と書き手の印象」について調査して」の報告のようですが、具体的な設問文として登場するのは、「気になる異性の字が汚くて萎えたことがある?」です。報告されていないだけで、このほかにも、いろいろな質問があったのでしょうか。

「東大合格者のトップクラスは、字が読めないほどに汚い。」という、林修の指摘が紹介されます。ばかばかしいと一蹴する人だけでなく、天才はこういう穴があってこそと思う人も、せっかくの才能がそれで低く見られては社会の損失だと考える人も、それぞれいることでしょう。マルクスがひどい悪筆で、そのせいで就職に失敗したり、エンゲルスが目をいためたりしたエピソードは有名です。また、筆跡性格学入門(槙田仁著、金子書房)によれば、楽譜の筆跡にも、作曲家のパーソナリティがあらわれるそうですが、クラシックプレミアム 35(小学館)には、ブーレーズの「フルートとピアノのためのソナチネ」について、初演を要望されたランパルが、楽譜が読みやすく書かれてはいなかったために見おくってしまったという、もったいないお話があります。