生駒 忍

記事一覧

信じてはいけない広告コピーとあやしいバイト

きょう、マイナビウーマンに、女性に聞いた! 貯金するために信じてはいけない「広告の文言」3選という記事が出ました。

「人々の興味をそそるキャッチコピー、しかし、中には「これって絶対ウソでしょ!」と疑ってかかりたくなるものもあります。」、「そんな「このキャッチコピーは信じちゃダメ!」と思うもの」のアンケート結果の紹介です。あたりまえかもしれませんが、あたりまえな結果でした。業界内の人にだけ見わけがつくポイントや、いかにもな背景説明つきの都市伝説風のものもあるかと期待したのですが、わざわざうたがうまでもないものばかりでした。また、品質や企業イメージに関するうさんくさいコピーではなく、お金に直結するものばかりでした。そういえば、「リズムネタ」のつまらなさの分析の記事で触れた「あたりまえ体操」では、「お金が欲しい」と歌われました。

「1カ月で100万円!など怪しいバイトの広告。」、あやしい以前のようにも思います。数字にリアリティがあれば、あやしさがもう少し出るかもしれません。どう使うねん(鰻和弘作、竹書房)の、「時給1800円」のような感覚です。

「割引にだまされない!」、ここはSuica騒動と限定品商法の記事で取りあげた話題とも関連します。「安いからといって安易に飛びつくのは危険」、ちょうど「安」も「易」も「やす(い)」と読むことが、暗意のようでもあります。

「ケチ」とされる基準とホスト遊びの特殊な例

きょう、ハウコレに、アンタ、好きなんでしょ!?男子が彼女にケチな理由・5選という記事が出ました。

「年上の社会人男子ならいさ知らず、同年代男子と交際すると「私のカレって、どうしてこんなにケチ?」と不満を持つことが多いのではないでしょうか。」とあります。ここでいう「ケチ」の基準は、どんなものでしょうか。自分の金銭感覚とくらべての、相対的な上下でしょうか。それとも、「私のカレ」以外の「カレ」はみんな、という比較でしょうか。ぷりっつさんち 2(松本ぷりっつ作、主婦の友社)の「盛られた話」のようなことではないのだとしたら、そう思うのもしかたがないかと思います。出おくれた内容ですが、Business Journalに先日出た記事、道端アンジェリカ、勘違い発言に批判殺到「お金ない人は性格悪い」「結婚相手は年収5千万」にある、「今回の発言は、アンジェリカの『常識』と、姉たちを見てきた経験から出た悪気のないもので、彼女を知っている人からすれば、別段騒ぎ立てるようなものではありません」という指摘を思い出します。

「こんなことだから、彼女に「俺のMyお気に入り曲ミックスMD」を真顔であげるような男子が跡を絶たないのかもしれませんね。」、MDを真顔で例にあげるような書きぶりに、少々おどろきました。後に「後」に入れかわった慣用句をあえて「跡」と書くことで、もうなくなったものというイメージを出したり、MDの古さと対応させたりというところまで考えてのことでしょうか。「俺のMy」のところが、my graduation(SPEED)の歌詞を連想させるのも、なつかしさにつながります。

「とくに趣味の面において、ときおり彼女から見たらゴミか、せいぜい良くてもおもちゃ程度にしか見えないものにウン万をさっと出すのが男子。」、これが結論をみちびきます。「一番簡単な逃げ道は社会人男子」、「彼らの場合には、女遊びが趣味になっていることがよくあり趣味=女子になるため、それこそ躊躇なくお金をつぎ込むことができますからね。」と締めます。ここは、「3大口ぐせ」の記事で取りあげたものとは異なり、男女を逆にしてもなり立つかもしれません。

それで思い出したのが、成田少女生き埋め事件です。被害者は、お金を借りてはホスト遊びに使い、シャンパンタワーも積んだといわれます。どうして女性はあんなものに引っかかるのかという人もいると思いますが、引っかからない女性が多数派で、そこまでずれるのは特殊な例だという反論もありそうです。それでも、日テレNEWS24にきょう出た記事、ホストの男性とられると思った~逮捕の少女によれば、特殊な例が、被害者のすぐ近くにもあったようです。

「おまかせ消費」の2パターンと専門家の力量

きょう、NEWSポストセブンに、服や本を目利きが選ぶ「おまかせ消費」が拡大している背景はという記事が出ました。

「ファッション業界のみならず、自分で選べない、あるいは、より良いものを求める消費者による“おまかせ消費”が広がっている。」、興味深いです。これに近い従来のやり方は、百貨店の外商です。店舗に出むく場合とくらべて、実際にくらべて選べる選択肢はずっと少なく、担当者のセンス、ないしは担当者が顧客のニーズを見ぬくセンスが重要ですし、ほんとうにほしいものでなくても、つきあいや抱きあわせで買うのも一興です。新しい「おまかせ消費」は、それをずっと合理的に、クールでクリアなかたちにしたものという理解もできそうです。また、外商はワーカホリックで買い物へ出るひまがない人ではなく、ひまはある、お金はもっとある有閑階級が相手ですが、こちらはむしろ、日々いそがしい人向けのように思えます。

「スタイリストが同行する買い物ツアーに参加した30代女性はこう語る。」として示される「大きく分けて2つのパターン」になるのは、「お洒落に自信がないので、プロの方に服を選んでもらいと思って」と、「もっとファッションを学びたい、プロの方のセンスを吸収できるいいチャンス」とです。しろうとの1事例から、2類型からなるという示唆をみちびくことには、少々不安を感じましたが、これは後で、「船井総合研究所の上席コンサルタント」が示した、「消費者が選ぶのが難しくなって」「専門家に選んでもらえると安心」と、「より良いものを求めて、プロにおススメしてもらいたいと考える消費者もいるんですね」とに、それぞれ対応します。「選択による疲労」の低減の記事で取りあげたようなものは、どちらかといえば前者に近いと思いますが、本質的にはさらに別のものと理解したほうがよいでしょうか。

「KDDI株式会社は2013年より、スマートフォン利用者を対象に、各分野のキュレーターが選んだ商品を定額で毎月届ける「auおまかせショッピング」を開始した。」、これは「目利きが選ぶ」ことには違いないのですが、bemoolやいわた書店の、個々人に合わせているという売りがない点で、質が異なります。こちらは、食品の通販などで昔からある、頒布会商法の延長線上でしょう。なお、もう少し柔軟な手法のものとして、食品ではないので届いてからの「返品」が可能な、The CD Clubがありましたが、3年ほど前に消えたようです。

「もちろん、お客様のニーズを満たすためには、専門家(キュレーター)としての力量が問われるようになります。」、そのとおりだと思います。ここでポイントは、「専門家(キュレーター)」という書き方で、求められるのは、その分野内に圧倒的にくわしい専門家そのものよりも、多数のしろうとを含む、外の人に合うものをより分けることができる「キュレーター」になりそうです。そして、外の流行に合わせて、ないしは先回りして変わっていかないといけませんので、確固たる信念のある専門家では、かえってつとまりません。それでも、専門家は変わらないとはかぎらず、専門分野の中がうごけば、外からどう見られようと、変わるものです。「いつものパン」があなたを殺す(D. パールマター・K. ロバーグ著、三笠書房)は、専門家の助言が、そのうちに反転することがめずらしくないことを、批判的に指摘しています。

グルメ本にお金を出す心理と「愚民化装置」

きょう、Jタウンネットに、ネット時代になぜ「地方グルメ本」が売れる?という記事が出ました。

「出版不況といわれる中、好調な売れ行きをみせるのは、ランチやカフェなど、様々なテーマやジャンル別に地元の飲食店を紹介する地方版のグルメガイド本です。」とあります。テレビをつまならくする若手の記事で取りあげたように、民放テレビにもグルメ企画だのみが目だつようになりました。オールドメディアは、食で食べているのです。

このネット時代に、「有料で紙媒体のグルメガイドに関心を寄せる読者の心理を、編集スタッフは」「誰があげたのかわからなかったりだとか、どれを選んだらいいのか分からなかったりするなかで、一冊に編集することによって、読者が必要な情報がまとまっていることが一つのメリットなんじゃないかなって思います」と見ているそうです。自分でさがして、自分で判断すればよいものでも、その手間も減らして、オールドメディアの信用にたよりたい人には、ネットよりも楽でよいのでしょう。わかりやすい娯楽に、与えられるままにつかる、まるでゲッベルスに骨抜きにされたドイツ国民のようです。週刊アスキー 7月29日号(KADOKAWA)で、4スクリーン時代の「愚民化装置」の最強がテレビだとされたことにも近いでしょう。NEWSポストセブンにきょう出た記事、各局で超常現象特番が花盛り オカルトが再ブームの理由とはでの、「ただし、視聴者はいつでもYouTubeを見ることができるはず。敢えてテレビで見ることもない気がするが…。」という疑問への答えも、探さなくてよく、楽であることでした。

さて、ランチパスポートについて、「掲載によって、以前より売り上げがアップしたという例も多いそうです。」とあります。「多い」とあるので、載っても増えない例もあるのでしょう。大きく割りびいたメニューでお客が増えても、利益になるかどうかはわかりませんが、「売り上げがアップ」するのは、地域であれだけの数が出まわるのですから、当然のはずです。いつもきちんとお客が入っていたお店が、限られたランチの時間帯を、客単価の安い、もちろん利益にならないパスポート持ちに埋められてしまい、ひどい目にあっているのかもしれません。ガジェット通信に2年前に出た記事、クーポン共同購入サイトにてトラブル “キッチンとらじろう”がクーポン客に対してありえない接客を思い出しました。

賞味期限がわかるパッケージと値下げシール

きょう、マイナビウーマンに、箱の色で賞味期限が分かる食品パッケージが市場に出回らない訳という記事が出ました。

「デザイナーのコー・ヤンさんがデザインした牛乳カートンは、2008年にすでに発表されたものですが、今回再び話題になっています。」とあります。今回と言われてもと、困惑した人もいると思います。SPLOIDに8か月前に出た記事、Package concept changes its design as it approaches its expiration dateを読んで、そういうイメージでとってください。

「賞味期限がまだ分からない小さなこどもでも、色なら分かります。」、文字よりはずっとわかりやすいでしょう。ですが、「今回」のデザインは、色そのものというよりは、デザインがだんだんと浮きだしてくるものですので、誤解しないようにしてください。

「このパッケージが市場に出回らない大きな理由があるそう」、「それは、食品を製造販売する企業側にとって得がないということです。」とします。文藝春秋 2015年2月号(文藝春秋)で倉本聰が、「「需要」と「供給」のうち、「供給」が主導の社会」を批判したのを思い出しました。それでも、小売の立ち位置からは、そういうシステムを歓迎できる面もあります。「古い商品を消費者は手に取らなくなり、売れ残りも増える」、これ自体はそのとおりでしょう。ですが、現状でも日付は消費者が見られるようになっていますので、本質的には変わりません。それでも、そのぶんは値下げすることで調整されるので、現場で大きな問題にはなりません。そして、28円から25円へと下げるシールを貼るために、袋入りもやしの製造日を売り場でひとつひとつチェックさせるような人件費は、このデザインで圧縮できます。