出題解説

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問1 WHOによる健康の定義

世界保健機関(WHO)憲章は、冒頭にある前文の冒頭部で、「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.」という、健康の定義を示しました。主要な対訳を2件、挙げておきます。

 世界保健機関憲章 - 外務省

 世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳) - 日本WHO協会

1が正解です。mental、「精神的」が含まれています。

2、そのような定義内容はありません。また、mentalならまだしも、social well-beingは医学的な検査のみで測ることにはなじみません。

3、completeをきびしく解釈するとしても、存在しえないと結論することはむずかしいですし、定義内容ではありません。なお、このあたりに関連して、障害者は一生「健康」にはなれないのかという議論があります。

4、これは主観的に感じるものですので、主観的健康感と呼ばれます。主観的健康感については、問5解説も参照してください。

問2 健康増進の努力義務

健康増進法は、栄養改善法を改正するかたちでつくられ、一部を除き2003(平成15)年に施行されました。翌年の平成16年版 厚生労働白書(ぎょうせい)では、第1部で取りあげられ、図表2-2-2として、「健康増進法の骨格」を見ることができます。

 健康増進法 - 法令データ提供システム

2条が出題のとおりの条文で、4が正解であるとわかります。「努めなければならない」という、努力義務の規定です。

12は、「高齢者」ではなく「老人」とついていて、最近の法律ではないことがわかります。また、2は「保健」で、3は「保険」ですので、書きまちがわないようにしましょう。

問3 一次・二次・三次予防

本来、予防とは「予め防ぐ」ことですが、予防医学の用語では、一般的な意味での予防は、一次予防と呼ばれます。早期発見、早期対処が二次予防で、リハビリテーションや社会復帰、再発防止が三次予防となり、予防の概念を広くとります。

1は、医学的な予防というよりは、安全工学のお話に近いですが、この分類では一次予防でしょう。

2が正解です。スクリーニングは、典型的な早期発見の手法です。認知症のスクリーニングについては、問114解説も参照してください。

3は、三次予防です。2015(平成27)年1月現在で、障害者就業・生活支援センターは全国に325か所あります。地域障害者職業センターとの、機能や運営主体のちがいも確認しておきましょう。

4は、一次予防でしょう。すでに覚えてしまった中高生には、二次あるいは三次予防となりますが、少なくともわが国では、ごくわずかです。問19解説も参照してください。

問4 ヘルス・プロモーションの提唱

1は、1978年に第1回プライマリ・ヘルス・ケアに関する国際会議で採択され、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)やHealth For Allの考え方を打ちだしました。アルマ・アタは、当時ソ連領であった会議開催地の地名です。なお、ややこしいことに、そのソ連の解体に11か国が合意したのも同じ場所で、合意はアルマ・アタ宣言と呼ばれ、ここはカザフスタンの独立後に現地での呼称、アルマトイに統一され、しばらくは首都でしたが遷都され、いまはアルマトイ州の州都でもなくなりました。

2は、遺伝子組み換え生物の取りあつかい規制に関する国際協定です。調印は2000年、モントリオールで行われました。

3が正解です。正式名称は、「ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章」です。ヘルス・プロモーションは、JICAナレッジサイト訳では「健康促進」で、健康日本21 総論では「健康増進」と訳されています。なお、後者では「オタワ宣言」という表記がされましたが、環北極国際協力、対人地雷禁止、ヘルスケアに対する子どもの権利などのものとまぎらわしいですし、好ましくありません。

4は、医学研究の倫理に関するものです。名前の由来はニュルンベルク裁判で、1964年に世界医師会が採択したヘルシンキ宣言へとつながりました。せっかくですので、アメリカ軍捕虜生体解剖事件で教員3名が死刑判決を受けた九州大学医学部のサイトから、ニュルンベルク綱領を紹介しておきましょう。

問5 主観的健康感と生命予後

主観的健康感については、英語ではsubjective health、self-rated health、self-perceived healthなどさまざまに表現され、わが国では「健康感」と「健康観」との書きわけがはっきりしないなど、シンプルな考え方なのに、ややややこしい用語です。

1、定量的に測定するのであれば、主観量ですのでむしろ、質問紙以外でというほうがむずかしいでしょう。逆に、質問紙で容易に把握できますので、厚労省の国民生活基礎調査など、大規模調査でもよく測定されています。

2が正解です。健康だと思う人ほど、実際に健康でいられるのです。なお、アラメダ郡調査は、問57解説で取りあげた「七つの健康生活習慣」をみちびいたことでも有名です。

3、客観的な健康指標とある程度連動して変動します。また、首尾一貫感覚(SOC)は、自身の人生や生活世界に関する感じ方で、主観的健康感と相関はあっても、まったく別の概念です。

4、一般には逆で、主観的健康感を高める、ないしは低下をおさえることがより適応的ですので、健康教育で重視されるポイントとなります。

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