出題解説

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問99 身体的虐待と性的虐待

1が正解です。身体的虐待というと、なぐる、けるのイメージが強いと思いますが、このようなものもあてはまります。代理ミュンヒハウゼン症候群でみられやすい、命の危険がある虐待です。

2、痛覚は心理現象ですが、身体的苦痛を起こすのは身体的虐待と考えられます。

3、こんな異常なことを強いるのは心理的虐待です。ネグレクトは、通常されるべき養育や援助が欠けることで、通常はされるはずのない心身の暴力が加えられるというほかの3類型とは対照的ですが、しばしばほかのものと併存します。

4、通常、性的虐待でいう「性的」の範囲は、単に性別、ジェンダーに関係すれば何でもというものではなく、より狭義にとらえられます。なお、この例では苦痛を生じているかどうかが不明であることを理由に、虐待とは判断しにくいと考えた人もいるかもしれませんが、行為の意味を理解していない子どもをだまして性交類似行為をさせることが明らかに性的虐待であるように、苦痛の併存は虐待の必要条件ではありません。

問100 虐待の認識と親子関係

1、むしろ暴力にうったえてまで、取りかえしに押しかけるトラブルもめずらしくありません。あるいは、長く引きとりはしぶりながらも手ばなしはしないために、里親委託や養子縁組がさまたげられる問題も知られています。NHK総合テレビ「クローズアップ現代」で放送された、“親子”になりたいのに・・・ ~里親・養子縁組の壁~も話題になりました。

2、破壊的権利付与は、虐待の世代間連鎖をよく説明できる、多世代派家族療法の概念です。

3が正解です。虐待であるという認識は、虐待の必要条件ではありません。いつもこうしているからというかたちで続いていても、虐待は虐待です。

4、反応性アタッチメント障害は、幼少期のネグレクトのために起こる子どもの問題です。

問101 DVの周期性と共依存

DVは、英語のdomestic violenceの略ですので、直訳すれば「家庭内暴力」かもしれませんが、わが国で家庭内暴力というと、思春期以降の子どもから親へふるわれる暴力をイメージしますし、親から子への虐待はDVとは区別されますので、配偶者間暴力と表現されます。

1、DV事例には、劣等感との関連がうかがえるものが、しばしばあります。配偶者がすぐれた特性をもつことに劣等感をあおられて攻撃に走る、被害者側が劣等感や罪悪感にとらわれて援助を求めず継続するなどのパターンがあります。

2、DV防止法は、正式名称を配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といい、いわゆる「でっちあげDV」を横行させるほどに強力なのですが、デートDVへの発動は困難です。改正時に加わった1条3項によって、内縁関係も対象に加えたところまでが、保護命令の射程です。

3、周期性のDV加害のパターンでは、良好な関係であるハネムーン期から、少しずつ険悪な状態が生じてくる準備期ないしは緊張期、大きな暴力行動にいたる爆発期へという展開がみられます。爆発期の後は、加害者は深く反省する態度を示し、それを被害者が許容することでハネムーン期へと戻ります。

4が正解です。このため、DV被害者が、周囲の説得にもかかわらず逃げない、いったん保護されても自分から戻っていくなどして、関係者に徒労感を生みます。ハネムーン期が得られることでの部分強化、たびたび耐えてきたことでのコンコルド効果や認知的不協和、各種の防衛機制などの関与が考えられるでしょう。

問102 いじめの定義とネットいじめ

いじめ防止対策推進法は、なお「加害者」側が認めないなど係争中の大津中2いじめ自殺事件を受けて、議員立法でつくられました。長く、旧文部省や文科省の調査においてのものが、いじめの公的な定義とされてきましたが、2条1項は、いじめに法的な定義を行いました。

 いじめ防止対策推進法 - 法令データ提供システム

1、いじめの4層構造は、いじめ 教室の病い(森田洋司・清永賢二著、金子書房)によって広く知られますが、これは定義ではありません。この法律にも、旧文部省や文科省の定義にも、直接には反映されていません。

2が正解です。2条1項のかっこ内に「インターネットを通じて行われるものを含む。」とあります。文科省の調査にも「パソコン・携帯電話での中傷」が加えられましたし、いじめの構造(森口朗著、新潮社)でいう「犯罪型コミュニケーション系いじめ」を取りこんだといえます。

3、かつての文部省時代からの調査での定義には、弱者への一方向性、攻撃の継続性、苦痛の深刻性がありましたが、これらははずされました。文部科学省のサイトから、いじめの定義を参照してください。もちろん、法的定義にもありません。

4、そのような内容はありません。なお、23条6項は、犯罪性のあるものには警察との連携を定めています。

問103 デートレイプと性被害の原因

1、そんなことはありません。成人女性による男子の性被害や、女子どうしでのものを考えればわかるでしょう。それでも、すべて原因は男性がつくった社会のゆがみだと言いだす人もいるかもしれませんが、学術的な場の支持はないでしょう。

2、実証されています。Bandura, A.による子どもの観察学習の実験は有名です。

3が正解です。夜道で何者かにおそわれてというパターンもありますが、デートレイプと呼ばれる、知っている相手との関係性の中での被害は、暗数になりやすく、相当数があるとされます。

4、結果的に攻撃的な行動は減りますが、術後の死亡を含め、有害で非人道的な手法です。また、非医療的な要因が結びついて行われた例も少なくなく、悪いイメージを増幅しました。日本精神神経学会は、1973年に臺実験の非難、1975年に精神外科否定決議を出しました。なお、いわゆるロボトミー殺人事件を持ちだして、攻撃性はなくならないと解釈したがる人を見かけますが、あれは前頭葉ロボトミーではなく、帯状回のロベクトミーです。

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