出題解説

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問10 味覚の分類と特性

1、味覚と嗅覚とは、化学物質の検出に特化した感覚として、化学的感覚に分類されます。触覚や痛覚などの皮膚感覚は、それとは別です。

2が正解で、舌の上に色で塗りわけたり、点線を引いて区切ったりした味覚地図説は、すでに科学的には否定されています。位置によって多少の閾値のちがいはあっても、あの「地図」のように分かれて分布してはいません。ただし、一次味覚野内での味ごとの神経反応の分布を示したものを「味覚地図」と呼ぶことがあり、こちらは実在します。基礎歯科生理学 第6版(医歯薬出版)の図14-12で、2種類を見ることができます。

3、基本5原味に渋味はなく、そのかわりにうまみが入ります。4原味説でも、渋味は入りません。なお、最近、第6の味として、油脂に対応するオレオグストゥスが提案されています。Chemical Sensesの論文、Oleogustus: The Unique Taste of Fatですが、いかがでしょうか。

4、味覚は発達早期から機能しはじめ、新生児でもある程度の味覚の弁別ができます。もちろん、経験をとおして発達する側面もあります。

問11 ガルシアの味覚嫌悪条件づけ

味覚嫌悪条件づけ研究の発端となった、Garcia, J.らによる論文を示しておきます。

 Conditioned Aversion to Saccharin Resulting from Exposure to Gamma Radiation - Science

1、ガルシア効果という呼び方もされますが、Garcia, J.は、García Márquez, G.とは別人です。García Márquez, G.は、1982年にノーベル文学賞を得た、世界的な作家です。代表作の百年の孤独(新潮社)は、20世紀文学の最高傑作のひとつとされますし、そうされる作品の中でも、分量を考えなければ、失われた時を求めて(M. プルースト作、集英社)の次に読みやすい作品でしょう。重力の虹 上(T. ピンチョン作、新潮社)、ユリシーズ(J. ジョイス作、集英社)そしてフィネガンズ・ウェイク 123・4(J. ジョイス、河出書房新社)にくらべれば、明らかにハードルが低いと思います。

2、サッカリン溶液を用いた実験ではあるのですが、その新奇な味覚を条件刺激とする古典的条件づけとして解釈されました。

3が正解です。古典的条件づけの図式に乗せることができますが、間が数時間も空いてなお成立することは、Thorndike, E.L.以来の接近の法則の考え方とはなじみにくく、議論をよびました。しかも、直後の対提示にすると、この学習はむしろ成立しにくいようです。

4、最初の実験報告はSDラットで行われたものです。ヒトでは、同じように急性障害が出るほどガンマ線を当てる実験はできませんが、日常経験の質問紙調査や、抗がん剤の使用時などで、同様の現象が知られています。

問12 視床下部と摂食中枢

脳の構造は、親しみにくいと言われやすいところです。心理学としては、各部位の位置関係よりも、まずは名称と機能との対応を優先して学んでよいと思います。構造は後からで、塗って覚えて理解する! 脳の神経・血管解剖(佐々木真理著、メディカ出版)などで見ていったほうが、あのはたらきはここなのかというたのしみ方ができて、頭に残りやすいかもしれません。

1は、ここの選択肢の中では唯一、大脳皮質に位置します。感情や記憶の制御にかかわるとされます。

2は、脳神経の主要な12対の9番目です。さまざまな機能に使われていて、味覚では舌の後部、つまり奥側の3分の1程度が舌咽神経を経由します。舌のあと3分の2は7番目の顔面神経、のどのほうは10番目の迷走神経が、味覚を担当します。12番目の舌下神経は運動神経ですので、味覚にはかかわりません。舌咽神経を含め、脳神経はどれも末梢神経ですので、中枢機能を持つことはできません。

3は、視床下部の下部にぶら下がるようにあります。視床下部の支配を受けてさまざまなホルモンを分泌し、結果的に摂食や飲水とも関連しますが、中枢ではありません。

4が正解です。動物実験で、視床下部の外側野を破壊すると摂食行動が起こされなくなることから、ここが摂食中枢だと考えられています。ただし、同じ視床下部でも、腹内側核は摂食をおさえる満腹中枢とされ、また近年では、血中レプチンに反応する弓状核の重要性も指摘されています。

問13 リヒターのカフェテリア実験

カフェテリア実験は、さまざまな食物を自由に選んでとれる実験設定が、食堂のカフェテリア方式に似ることから、こう呼ばれます。Richiter, C.P.は、一連のカフェテリア実験を主導したほか、食や生体リズムの生理心理学的研究を数多く行いました。伝記として、Curt Richter: A Life In The Laboratory(J. Schulkin著、Johns Hopkins University Press)があります。

1、カフェインには覚醒作用があり、食欲の抑制にもつながりますが、カフェテリア実験とは無関係です。

2、これは逆です。カフェテリア実験は、食行動にもホメオスタシス性を認めることができることを示しました。4の解説で説明します。

3、カフェテリア実験は、基本的にラットを被験体として進められましたので、会話は考えにくいところです。なお、食事時間と食べる量との関係については、音楽心理学入門(星野悦子編、誠信書房)でも紹介しましたが、レストランで背景音楽のテンポを落とすと、食事時間が延びて、注文量が増えるという知見があります。もちろん、こちらはヒトでの研究です。

4が正解です。自由にとれる状態で、動物実験ですので栄養バランスの知識などないにもかかわらず、必要な栄養素各種が適切に足りるように選択される傾向がみられます。また、特定の栄養素のみを意図的に欠乏させた、特殊飢餓という状態においた後では、その不足をおぎなう方向へと、食物選択がかたよります。必要なバランスを充足する方向へ食行動が起こり、適切に調整されることには、食行動におけるホメオスタシス性が示されたと考えることができます。

問14 摂食障害の診断基準

摂食障害の定義は、DSM-5で訳語も含めて変更がありましたし、また、わが国では厚労省調査研究班による診断基準もありますので、気をつけて整理しましょう。後者の基準も出ている、難病情報センターのページを示しておきます。

 中枢性摂食異常症 - 難病情報センター

1、女性のほうが多いことは明らかですが、こんな甘いかたよりでないことも明らかで、男女で1:10とも1:20ともいわれます。

2、「神経性」とついていても、神経系の器質的な原因によるという意味ではありません。むしろ、研究班の神経性食欲不振症の定義では、原因と考えられる器質性疾患があると除外されます。なお、DSM-5での訳語は神経性やせ症に変更され、この表現のほうはICD-10で用いられているものです。

3が正解です。いわゆる拒食症に対しては、ICD-10は期待される体重の15%、研究班は標準体重の20%以上の減少を境目にし、思春期やせ症 小児診療に関わる人のためのガイドライン(文光堂)の学校検診用ガイドラインも標準体重の15%減にラインを引きますが、DSM-5は、重症度の特定にBMIを用いるようにしたものの、体重自体を直接の診断には使わないようになりました。また、過食症、大食症のほうも摂食障害ですが、こちらには数値基準はないですし、DSM-5で新設された過食性障害であれば、従来の非排出型に相当しますので、標準体重を超すことに違和感はないでしょう。

4、オルトレキシアは、近年注目されつつある障害ですが、DSM-5は摂食障害に示しませんでした。回避・制限性食物摂取症が近いかもしれませんが、オルトレキシアは明らかな信念に基づくことから区別されます。そもそも、DSM-5で、カタカナのみの名称はまずありません。例外はナルコレプシーで、ほかに、神経認知症候群の「その他の重要用語」に入ったアパシーと、かっこ内のみ日本語の「コロ(生殖器退縮恐怖)」があります。

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