出題解説

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問58 自律訓練法の考案者と手法

1が正解です。Vogt, O.の着想から、Schltz, J.H.が今日のやり方、名称のものとして体系化しました。

2、自律訓練法では、終了時の消去動作を除き、意図的な動作は行いません。また、自律と自立でとは、意味が異なります。障害者福祉における自立訓練については、WAM NETの自立訓練(生活訓練)を参照してください。

3、背景公式を含めて7公式からなりますが、重感公式が第1公式で、「手足が重たい」です。額部冷感公式が第6公式で、「額が気持ちよくすずしい」です。

4、自律訓練法の効果は、交感神経の活動はおさえ、副交感神経の活動を高め、心身がリラックスする方向へとはたらきます。

問59 従軍後のPTSDへのEMDR適用

1、PTは、戦傷者には身体的なリハビリテーションとして有効ですが、重度のPTSDへの介入技法としてはあまり適しません。

2、SGEは開発的な機能が中心ですので、PTSDへの介入には向きません。集団技法で有用なのは、自助グループなどでしょう。

3、MCMCは乱数シミュレーションから確率分布を得るアルゴリズムの一種で、心理臨床的な技法ではありません。心理学の分野にも広まりつつあるベイズ統計では、パラメータの推定によく用いられます。一部で「みどりぼん」として名高い、データ解析のための統計モデリング入門 一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC(久保拓弥著、岩波書店)を紹介しておきます。

4が正解です。EMDRは、Shapiro, F.によって開発され、特にPTSDへの著効性で知られています。正式には8段階から構成され、そのうち第4~6段階で、名前の由来である眼球運動を用いたアプローチがとられます。くわしくは、開発者自身による概説、EMDR 外傷記憶を処理する心理療法(二瓶社)を見てください。

問60 内観療法の考案者と手法

内観療法は、浄土真宗の僧侶であった吉本伊信によって、わが国で独自に開発された心理療法です。Naikanとして、海外でも知られるようになっています。

1、森田正馬は、森田療法の開発者で、内観療法とは別です。後に、Reynolds, D.K.はコンストラクティブ・リビング(CL)として、両者を組みあわせたアプローチを構成しましたが、森田が内観療法をつくったわけではありません。なお、精神保健福祉士国家試験受験ワークブック2015(中央法規出版)を読んで信じた人は、私がうそを書いているように誤解すると思いますが、あちらのほうが不適切だと断言させてもらいます。百歩ゆずって、内観療法に森田の影響があると論じる程度ならまだしも、森田のほうのみを赤字で強調してまでとは、常軌を逸しています。あの定評ある参考書で、毎年あの書き方ですので、たまたま編集ミスで混入したのではないわけで、私がここで書いたくらいで妥協する方ではなさそうですが、内観療法の開発者は吉本ひとりと覚えてください。

2、これは壺イメージ療法になります。田嶌誠一によって開発されました。

3、これは風景構成法になります。中井久夫によって開発されました。

4が正解です。内観の吉本原法としてイメージされるのは集中内観で、研修所に寝泊まりしながら、外界からはなれて数日をかけて行います。日常内観では、ふだんのくらしの中で機会をとり、内観三問などに向きあいます。

問61 音楽療法の分類と原理

音楽療法は、わが国では心理学の専門家よりも、音楽を専門とする側からの関心が高く、世間ではなじみがある技法名、少なくとも外形的にはイメージしやすいアプローチである一方で、臨床心理士指定大学院など、心理臨床家の養成に主眼をおいた課程で専門的に学ぶ機会はまずないなど、独特の位置をとる技法です。日本音楽療法学会九州臨床音楽療法学会といった専門学会に、臨床心理士や精神保健福祉士は少ないです。

対象者が表現することに重心をおくものは能動的音楽療法、聴取するほうに重心があるのは受容的音楽療法として区分されます。たとえば、発達障害児を含む子どもへの適用が多いノードフ-ロビンズ音楽療法は能動的療法、近年ではマインドフルネスと関連づけた展開もみられる調整的音楽療法は受容的療法となります。ほかにも、音楽療法にはさまざまな流派があり、技術や思想の中心のおき方が根本的に異なるものもたくさんありますので、気をつけてください。わざわざ音楽中心音楽療法(K. エイゲン著、春秋社)と名のるものがあるくらいです。

そのような中でも、古典的な原理として知られるものに、Altshuler, I.M.による同質の原理があります。なお、出題文にある個別性の原則は、バイステックの7原則のひとつです。この7原則については、問74解説も参照してください。

以上より、正解は2となります。こういった組みあわせ問題は、自信のないところがあっても、ほかがわかればしぼれますので、あわてず、あきらめずに解きましょう。この設問は、3か所のうち2か所がわかれば、それがどの2か所であっても、絶対に正解できるようにつくりました。

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