出題解説

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問45 知的障害の定義

知的障害に対しては、行政用語としては「精神薄弱」が用いられてきましたが、差別的なひびきや、誤解をさけるため、今日では使われません。また、DSM-5では、知的能力障害という和訳が当てられました。医学関係では精神遅滞と呼ぶものとほぼ同義ですが、心理学や教育、福祉関係では、この呼び方は好まれません。

1が正解です。身体障害者福祉法4条、精神保健福祉法5条のような定義は、知的障害者福祉法にはありません。前身となった精神薄弱者福祉法のころから、ずっとそうです。この点と、知的障害者を対象とした手帳制度が法律上の根拠をもたない自治事務である点とが、居住地によって手帳やそれに基づく優遇の可否が異なる不公平の背景にもなっています。

2、男性のほうがやや多いことが知られています。ちなみに、知的障害と重なりやすいてんかんや自閉スペクトラム症も、明らかに男性に多くみられます。

3、知的障害には、認知症のような、十分に獲得された知的能力の欠失は含めません。

4、これは学習障害、ないしはDSM-5でいう限局性学習症にあたります。知能指数で正常範囲であることを前提としますので、知的障害とは相互排反的な関係性をもちます。

問46 障害受容の価値転換理論

Wright, B.A.は、Dembo, T.らによる戦傷者の研究を発展させて、身体障害に関する障害受容に求められる4種類の価値転換を明らかにしました。この価値転換理論は、個々人の努力に重点を置きすぎるなどの批判もあびましたが、障害受容やリハビリテーションの研究や実践に、大きな影響をあたえました。

1、価値転換理論にあるのはこの逆、価値範囲の拡張です。

2が正解です。なお、これは客観的な能力自体の回復で悪影響を減らすことではなく、能力に関する自認についてのことですので、誤解しないようにしてください。

3、価値転換理論にあるのはこの逆、身体の外見を従属的なものとすることです。

4、価値転換理論にあるのはこの逆、比較価値から資産価値への転換です。

問47 聴覚障害と言語発達

1、伝音性は外耳や中耳、感音性は内耳や聴神経に原因がある場合の表現です。また、これらがいずれも正常でも、聴覚野の両側性損傷で聴覚が損なわれることがあり、皮質聾と呼ばれます。

2が正解です。喃語が一定程度までは発達して、健聴児であれば音声言語へとつながっていくところを、そうはならずに発声が消えていく経過をたどります。ここから、発達過程における喃語の意味についてどんなことが言えるか、考えてみてください。

3、人工内耳は、むしろ早く導入できたほうが、音声言語が効率的に獲得できるなど、よい効果が上がります。

4、ろう文化は、音声言語ではないコミュニケーションの世界で育った者による文化性ですので、中途障害者が形成するものではありません。むしろ、中途障害者は音声言語で生活してきましたので、そこに受けいれられることにも困難がともないがちです。

問48 国際障害分類の社会的不利

国際障害分類(ICIDH)は、Wood, P.の着想を発展させて、WHOが1980年に打ちだした考え方です。これを拡張し、障害者に限らず人間一般を包括するモデルとしたのが、2001年の国際生活機能分類(ICF)ですので、合わせておさえておきましょう。ICIDHとICFとの関係や発展のポイントの概説を挙げておきます。

 国際障害分類初版(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ ―改定の経過・趣旨・内容・特徴― - 障害保健福祉研究情報システム

1、これはその国や地域での一般的な経済的水準を基準とした場合の、相対的な低さです。ちなみに、わが国の相対的貧困率は、平成26年版 子ども・若者白書(日経印刷)の第1-3-39図ではっきりわかるように、OECD加盟国の中では相対的に高い位置にあります。

2、これは、不満が生じるほどに自己より他者が、内集団より外集団がより資源をもちめぐまれた関係を指します。Townsend, P.が提唱し、貧困の議論や政策に影響をあたえた考え方です。

3が正解です。なお、しばしば誤解されますが、ICIDHは図の左側の要素が生じたら、矢印どおりに社会的不利へ達することがさけられないという決定論的なモデルではありません。むしろ、途中のどこかで止めれば、より左側のものの改善が不可能であっても、社会的不利は起こらなくできるというように読みます。医学決定論ではなく、むしろ福祉用具やバリアフリー化の意義をみちびきます。

4、これは医学的には必要性が認めにくいのに、病院の外に退院をさまたげる理由があるために長く続いてしまう入院のことです。本来は医療ではなく介護が求められるべき高齢者や、偏見のある社会には居場所を得にくい精神障害者の問題がよく知られています。なお、精神障害者の入院期間については、問90解説も参照してください。

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