出題解説

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問69 前向き研究とゲノムコホート研究

1、前向き研究は、RCTほどの厳密性はありませんが、長期的な因果関係の発見に関心をおき、通常は定量的手法で行われます。

2が正解です。ゲノム解析は疾患の原因探求を大きく発展させましたが、古典的な前向き研究とは性質が異なりますし、近年機運が高まっているゲノムコホート研究は、前向き研究の枠組みをとります。参考までに、日本学術会議の提言、100万人ゲノムコホート研究の実施に向けてを挙げておきます。ちなみに、英語のgenomeの発音は、「ゲノム」ではありませんので、気をつけてください。ユメタン 3 東大・京大レベル(アルク)でも、発音注意とされていました。

3、前向き研究は相当数の対象者を科学的、客観的な手法で追跡するもので、心理臨床学的な事例検討とはまったく異なります。

4、対義語は後ろ向き研究でよいのですが、アラメダ郡研究、フラミンガム研究、ロッテルダム研究はいずれも、前向き研究として世界的に有名なものです。

問70 健康心理学で用いられる質問紙

1、GHQはGoldberg, D.P.が開発した、心身の健康状態をとらえる質問紙です。原版は60項目で、目的に応じて30、28、12項目の短縮版もつくられています。

2、BDI-Ⅱは21項目からなる抑うつの評価尺度です。認知処理様式のかたよりや習得度を検討できる心理検査にはKABC-Ⅱがあり、こちらは個別式知能検査です。

3、EAT-26は摂食障害傾向をとらえる質問紙です。名前のとおり、26項目からなります。なお、一般に、心理検査のアクロニムの後ろに数字がつく場合、ローマ数字ならその検査のバージョンを、アラビア数字なら項目数を表します。

4が正解です。SF-36は、8種の下位尺度から、健康関連QOLを包括的に測定します。現在は改訂版であるSF-36v2が用いられているほか、短縮版もあります。

問71 オッズ比の計算方法

オッズ比(OR)は、心理実験や社会調査ではなかなか見かけませんが、医療統計ではよく用いられます。慣れないと読みにくい数値かもしれませんが、計算はとても単純です。今では出典を知らずに参照する人が多いようですが、かつての厚生省の報道発表、低用量経口避妊薬(ピル)の承認を「可」とする中央薬事審議会答申についてに付属して公表された用語集を示しておきます。

 有効性・安全性に関する統計用語集 - 厚生省(現・厚生労働省)

この順番で計算すると、 OR = 50 ÷ 20 × (100 - 20) ÷ (100 - 50) = 4 となります。したがって、4が正解です。

問72 メタ分析と公刊バイアス

メタ分析は、医学領域で早くから用いられてきましたが、近年では心理学においても、エビデンスの意義の理解とともにひろまっている手法です。

1、これは予備調査の一種でしょう。ただし、この予備調査という用語は、あちこちでふつうに使うものではあるのですが、ブリタニカ国際大百科事典〈6〉ホエ-ワン(TBSブリタニカ)は「言葉の意味が曖昧な慣用語」としましたし、気をつけたほうがよいところもあります。

2、これは近年ようやく問題性の認識が共有されるようになってきた、QRPの一種でしょう。こんなことをしてはいけません。

3が正解です。メタ分析は多くの研究を統合して知見をみちびくすぐれた手法ですが、その対象になる研究がかたよっていては、正確な知見は得られなくなります。同じような内容の研究でも、きれいな結果、歓迎される結果、わかりやすい結果が出たものほど、論文等として目だつところに公刊されやすく、そうでない結果はお蔵入りしやすいことによって、公刊バイアスが起こることに注意しないといけません。第21回MR認定試験でも出題されたポイントです。

4、じっくり吟味しつつすすめるのはかまいませんが、長い年月をかけることが必須ではありません。心理学の研究で、立案からそこまでかかるのは、問69解説で取りあげた前向き研究くらいでしょう。

問73 心身にかかわる指数

1が正解です。成人に用いる体格指数では、最もよく用いられるものです。計算式が単純であることも、使いやすさの一因となっていますが、身長をcmではなくmであつかうところに、注意してください。ちなみに、BMIをBMI指数と書くのは、RAS症候群です。

2、不快指数は気温と湿度とから算出され、蒸し暑さを感じる程度とよく対応するようにつくられています。求め方はいくつかあるのですが、だいたい75から80くらいで、不快な暑さと感じる人が多数派となっていきます。50ではあまりに寒いので、たいていの人が別の意味で不快になりますが、50が特に基準になるようなつくり方はされていません。

3、ブリンクマン指数は喫煙指数とも呼ばれ、1日あたりの喫煙本数と、喫煙年数とをかけたものです。肺がんだけでなく、咽頭がんや食道がんなどへの予測力もあります。禁煙外来での保険適用の基準にも取りいれられています。禁煙外来については、問17解説も参照してください。

4、知能指数は、心理学では最もよく知られた指数で、精神年齢を生活年齢で割って100をかけたものです。25を下回る知的障害者もいますし、125を上回る健常者などはめずらしくもありません。また、知的障害の判定にも活用されていますが、用いる検査が異なると値も多少変わるものですし、しゃくし定規にこの数値だけで、知的障害者と健常者とがぴったり切りわけられることはありません。アメリカ精神遅滞学会(AAMR)の考え方では、環境とのかかわりにおける適応の状態としてとらえようとしますし、DSM-5は精神遅滞から知的障害へと呼称を改めた上で、定義からIQの目安をはずしました。わが国の法律上では、問45解説で取りあげたように、知的障害の直接の定義はありません。教育行政では、「就学指導の手引き」「教育支援の手引き」といった文書に定義を見ることもできますが、IQだけで線引きをすることはありません。

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