出題解説

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問79 添い寝の害の議論と多重役割

1、Spitz, R.A.がホスピタリズムと呼んだのは、養護施設で栄養や衛生に不足がないのに現れ、高い死亡率にもつながっていた心身の諸問題です。養育者との適切な愛着が形成されにくいことが原因だとされました。

2、これは世界中で大変な数が出まわり、わが国でも第6版が、最新版 スポック博士の育児書(暮しの手帖社)として今も市販されています。当時のアメリカ文化を反映し、子どもは子ども、自分は自分でわけて過ごすよう求め、添い寝や抱きぐせの害を説くところが、多産少死のベビーブームの時代には好都合だった一方で、議論をよびました。ちなみに、読書家としても知られる成毛眞は、このムダな努力をやめなさい(三笠書房)で、「人類史上最悪の書だともいわれている」などとこき下ろしています。

3が正解です。かつて、多重役割をめぐっては、役割間で葛藤が起こる、エネルギーが不足するなどの否定的な見方が強調されてきましたが、近年は役割が多いほうが社会資源への結びつきが増やせたり、一方の場や経験がもう一方の支えになるポジティブ・スピルオーバーが起こったりすることも明らかにされています。

4、母子健康手帳には、どこの自治体のものであっても、めやすとしてわかりやすい発育曲線が載っています。厚生労働省による省令様式では、後ろのほうにならんでいます。

問80 田中ビネー知能検査Ⅴの適用

1、いわゆる1歳6か月児検診の期間は、母子保健法12条1号に定めがあります。2号は、いわゆる3歳児検診です。

2が正解です。田中ビネー知能検査Ⅴの適用は2歳からで、5歳でことばの遅れが可能性として指摘される程度でしたら、発達チェックの出番もなく、適切に適用できるでしょう。14歳未満ですので、偏差IQではなく、ふつうのIQを得ることになります。

3、就学時健康診断は、就学してからではなく、就学する前に受けます。

4、アプガー指数は、アプガールスコアとも呼ばれ、新生児仮死の評価に用いられます。

問81 里親委託の意義

1、社会的養護における施設養護と里親委託との比は、わが国では約9:1と、施設にかたよっています。地域差も大きく、新潟県の約3分の1という高い里親比率の高さが知られていますが、これは裏がえせば、1割にも満たない地域があることも意味します。欧米の同様の制度をみると、施設と里親とは半々くらいになるようです。

2、虐待被害のない例にくらべて注意を要することはありますが、里親委託は可能です。専門里親制度は、後に拡張されましたが、被虐待児の養育のためにつくられたものです。ちなみに、施設養護では、情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設で、被虐待児支援の比重が高まっています。

3が正解です。問79解説で取りあげたホスピタリズムは、今日ではおさえられるようになりましたが、実際の親子関係により近いかたちでの養育が望まれています。

4、注意を要する面はあっても、里親登録が認められないわけではありません。

問82 児童福祉施設の利用児童数と年齢

児童福祉法7条は、児童福祉施設として、11種類を挙げています。このうち、利用児童数で圧倒的なのは、保育所です。保育園という表記や、近年は認定こども園制度もあってややややこしいのですが、いわゆる一条校、れっきとした学校である幼稚園と異なり、保育所は福祉施設です。保育所利用児童数は、少子化の中でも増えつづけ、すでに就学前児童の3分の1を超しています。厚生労働省の発表、保育所関連状況取りまとめ(平成26年4月1日)を参照してください。

1、乳児院は、退院後の援助活動もありますが、原則として1歳未満が入院対象です。

2が正解です。絶対数からも、ほかの選択肢はありえないとわかります。

3、児童養護施設の入所は、原則として1歳からです。

4、児童自立支援施設の入所は、児童とつくことからわかるように原則として18歳未満で、年齢の下限は定められていませんが、かつての教護院ですので、幼児の養育を想定した施設運営はされていません。

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