出題解説

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問74 統制された情緒的関与の原則

Biestek, F.P.の著書、ケースワークの原則 援助関係を形成する技法(誠信書房)で提唱された7本の原則が、のちにバイステックの7原則と呼ばれるようになりました。批判もさまざまにありますが、ソーシャルワーク領域の古典として、広く親しまれています。

1、即時確認の原則は、プログラム学習の5原則のひとつです。

2、申請保護の原則は、生活保護の4原則のひとつです。生活保護法では、7条にあたります。ただし、ただし書がついています。

3、法の支配の尊重の原則は、ISO26000の7原則や、WHOの精神保健ケアの基本10原則などにみられます。

4が正解です。ことばから内容がイメージしにくい原則ですので、気をつけて覚えてください。

問75 エンパワメント概念のはじまり

エンパワメントは、エンパワーメントとも書かれ、いずれにしてもなじみにくいカタカナ語ですが、ソーシャルワーク領域では重要な概念です。なお、国立国語研究所の第2回「外来語」言い換え提案は、「能力開化」「権限付与」「権限委譲」といった言いかえを提案していますが、あまり定着していません。能力は「開花」と書きたくなりますし、付与や委譲では外部の権力から持たせられる語感があるため、エンパワメントの思想とはずれるようにも思われます。

1、このような始まり方をしたものとして、ノーマライゼーションがあります。英語のnormalizationは、統計の分野では標準化と訳されますが、福祉領域のものはたいてい、カタカナで書きます。そのため誤解されやすいのですが、始まりはデンマークで、わが国ではBank-Mikkelsen, N.E.が、提唱者として有名です。スウェーデンのNirje, B.が広め、Wolfensberger, W.がSRVの概念へと発展させました。なお、第2回「外来語」言い換え提案は、「等生化」「等しく生きる社会の実現」「福祉環境作り」といった言いかえを提案していますが、定着していません。

2が正解です。アメリカ公民権運動を受けて、Solomon, B.B.がBlack Empowerment(Columbia University Press)を著すなどしたことで、福祉領域の概念として広まりました。

3、このような内容のものとして、AAの12のステップがあります。AAについては、問18解説を参照してください。なお、AA-12とは無関係です。

4、ストレングスと同じ視点ではありませんが、相いれないわけではなく、双方を組みあわせてよりよい効果につなげるのは、すぐれた援助のあり方でしょう。

問76 間接援助技術と関連援助技術

直接援助技術、間接援助技術、関連援助技術という三分法では、特に後の二つで混同が起こりやすいので、気をつけて覚えましょう。

1、ケースワークは直接援助技術です。対象者に個別、直接にかかわっての支援です。

2、コミュニティワークは間接援助技術です。地域援助技術と訳されることもあります。

3、グループワークは直接援助技術です。小集団活動ですが、その成員それぞれへの援助を意図しています。

4が正解です。ネットワーキングと表現されることもあります。なお、Engeström, Y.のノットワーキングとは、似てはいますが異なります。

問77 パールマンの「四つのP」

Perlman, H.H.については、問題解決アプローチの視点や、「ケースワークは死んだ」などの主張と、「四つのP」として整理されたケースワークの要素論を、おさえておきましょう。

1、これはPerlman, H.H.ではなく、McCarthy. J.E.によるマーケティングミックスの4Pに含まれます。射程の広い枠組みで、音楽心理学入門(星野悦子編、誠信書房)でも援用させてもらいました。

2が正解です。問題解決へ向けての展開過程を指します。

3、これは含まれていません。もちろん、実践に価値があることは、言うまでもありません。

4、これは「四つのP」には含まれていません。後の「六つのP」への拡張で加わることになります。

問78 ケースワークと集団的守秘義務

1が正解です。個人心理臨床の感覚での守秘義務とはイメージが異なりますが、医療や福祉、あるいは学校カウンセリングなどでは、集団的守秘義務のかたちがとられます。

2、このような消え方はしません。なお、カルテの法定保存期間は最後の診療から5年間とされますが、医師法24条2項にどこから起算して5年間とするかは書かれていないのに、そういう解釈になることの根拠は、興味がある方は調べてみてください。

3、あります。精神保健福祉士法40条も、理学療法士及び作業療法士法16条もそうです。

4、フィニアス・ゲージは実名です。線路工事をしていてゲージとはでき過ぎにも見えますし、An Odd Kind of Fame: Stories of Phineas Gage(M. Macmillan著、MIT Press)によれば、あの事例にはうたがわしいエピソードがかなりあるようですが、名前までは否定されていません。これは古い例だから、もう亡くなっているからという面もありますが、「秘密」でないことには法律上の守秘義務の問題はありませんし、業界内のルールでも、氏名の一律禁止というよりは、氏名に限らず対象者の同意があれば可能ではあるということになります。それでも、たとえば日本心理学会倫理規程第3版の2.1.5.17には、「たとえ直接の研究対象者が実名の公表を許可ないし要請した場合でも,関係者全体に与える影響を慎重に考慮して表現を工夫する。」ともあります。

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